ダイエットのリバウンド防止にはカロリーシフティングが有効

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せっかくダイエットを成功しても、リバウンドしてしまっては意味がない。

もちろん夏の時期は特に痩せていたいと思う人が多いかもしれないが、叶うことなら年中痩せた体型を維持したいはず。

今回は論文から、リバウンド防止法として『カロリーシフティング』をご紹介。

11日間のダイエットと3日間の維持カロリーを繰り返すカロリーシフティングが、リバウンド防止に役立つことが判明したのである。

目次

ダイエットに成功しても80%以上の人がリバウンドする

ダイエットをしたことがある人なら共感できると思うが、実は体重を落とす以上に体重をキープするというのは難しい。

要するにリバウンドしてしまうのである。

実際に2001年のメタ分析では、ダイエット成功者の体重は年々戻ってしまう傾向があり、5年も経つとダイエット成功者の実に80%以上もの人がリバウンドすることが報告されている。(RR

ダイエット終了後の経過年数と減量体重
ダイエット終了後の経過年数と減量体重

ダイエット終了1年後にはおよそ30%、2年後には50%、5年後には80%以上もの人々がリバウンドしている。

体重を一時的に落とすことも確かに簡単ではないが、リバウンドしないことはそれ以上に難しい。

リバウンドの一般的な原因

それでは、なぜこんなにも体重を保つことは難しいのだろうか?

それには様々な理由がある。今回はその代表的な原因を紹介しよう。

代謝の減少

まず第一にリバウンドの原因となるのが、代謝の減少である。

というのも、私たちの体には体重を一定に保とうとするホメオスタシスというものがある。

食事量が減っても体重が減らないように、体の消費エネルギーを下げるのである。

例えば男女91人を対象にした2013年の研究では、ダイエットによって代謝が160kcal減少したことが報告されている。(R

この代謝減少は適応熱生産と呼ばれるが、いくつもの研究で確認されている現象。

適応熱生産で代謝が下がっている状態でダイエット開始前と同じ量の食事に戻ってしまえば、当然リバウンドしてしまうのである。

食欲の増加

意外と知られていないリバウンドの原因に、食欲の増加がある。

ダイエットで脂肪が減ると、脂肪から分泌されているホルモンである”レプチン”が減少する。

実は、このレプチンは食欲を制御している。

レプチンが減ると脳は脂肪が減ったことを感知する。

すると、食欲を増やすことによって私たちが餓死するのを避けようとする。

実際に2019年の研究では、体重が1kg減少するごとに1日あたり100kcalも食欲が増加すると推定されている。(R

ちなみに、体重1kgあたりで起きる代謝の減少量は20~30kcal。(R

リバウンドの原因として代謝の減少を真っ先に思い浮かべる人も多いかもしれないが、実はリバウンドする要因としては食欲の増加のほうが圧倒的に強い。

ダイエット終了後に気づけば食事が元に戻りリバウンドしてしまっていた、という人は多いだろう。

そんなとき「自分はなんて意思が弱いんだ!」などと自分を責めてしまいそうになるが、決してそういうわけではない。

これは体のホルモン変化によって無意識下で起こる現象。

むしろリバウンドしてしまうほうが普通なのである。

モチベーションの低下

消費カロリーの減少と摂取カロリーの増加を合わせると、体重が1kg減るごとにダイエットは130kcal分辛くなることになる。

つまるところ、ダイエット終了時にはダイエット開始前より強い意志力が必要になる。

しかし、反対にモチベーションを保つのは難しくなる。

ダイエット開始時には体重が減少し、見た目も改善するので、ダイエットすればするほど達成感を感じることができる。

しかし、ひとたび体重を維持する期間になると、体重が減るわけでもないし、見た目に変化が現れるわけでもない。

要するに、明確な”報酬”がなくなってしまい、モチベーションが低下してしまうのである。

実際にリバウンドについて調べた2019年の研究でも、リバウンド時のモチベーション維持が難しいことが言及されている。(R

身体は全力で私たちをリバウンドさせるが、私たちの脳はすっかりやる気を失う。

心も身体もリバウンドする方向に向かってしまうことで、ほとんどの人がダイエット後にリバウンドしてしまうのである。

基礎代謝が1度低下すると、2ヶ月以上戻らない

そもそもリバウンドしないためにはどんなことが重要なのだろうか?

まずは、ダイエット中でも極力基礎代謝を下げないことである。

というのも、基礎代謝は1度低下してしまうと2ヶ月以上は戻らない。なので、ダイエット中に基礎代謝が低下するのは極力避けなければいけないのである。

  • 1989年の研究:7人の肥満女性に2ヶ月間のダイエットをしてもらったところ、基礎代謝が22%も減少したがダイエット終了後8週間経っても基礎代謝は元に戻らなかった(R
  • 2016年の研究:フィットネス競技者の女性50人を調べたところ、大会後3,4ヶ月経っても代謝に関係する甲状腺ホルモンやテストステロンが低下したままだった(R

ダイエット後も代謝の低下を引きずっていると、ダイエット終了後に普段と同じ量を食べているはずなのにリバウンドした、という事態になりかねない。

リバウンドを防ぎたければ、ダイエット中も極力基礎代謝が下がらないようにする必要があるのである。

リバウンドを防ぐ方法は『11日ごとに3日間休むこと』

そして、ダイエット中に基礎代謝を下げないために効果的なのが”カロリーシフティング”である。

カロリーシフティングとは、ダイエット中でも一定期間ごとに維持カロリーに戻すというもの。

こうすることで、体に慢性的な飢餓状態になることを防ぎ、ダイエットによるホルモンや代謝の乱れを防ぐことができるのである。

このカロリーシフティングのダイエット効果を示した研究に2014年のものがある。(R)

研究者たちは74人の女性被験者は2つのグループに分け、6週間のダイエットを行わせました。

  1. ”11日間のダイエット⇄3日間適度に食べる”を3回繰り返す
  2. 6週間ぶっ続けでダイエット

片方のグループにはずっと毎日カロリー制限をしてもらった一方で、もう片方のグループには約2週間ごとに3日のリフィードをしてもらった。

その後ダイエット終了1ヶ月後までをフォローアップ調査したところ、結果は以下のようになった。

  • 6週間後にはどちらも同じくらい脂肪が減った( -12.99% vs - 10.63%)
  • しかし、1ヶ月後のフォローアップ調査では、カロリーシフティングのほうがリバウンドしていなかった( -12.69% vs -5.18%)

まず、カロリーシフティングかどうかに関わらず、どちらのグループも同じくらい脂肪が減っている。

しかし、6週間ぶっ続けでダイエットしたグループは、約1ヶ月後にはせっかく減らした脂肪の半分近くが戻ってしまったのだ。

なぜダイエット終了後、ぶっ続けでカロリー制限をしたグループのほうがリバウンドしてしたのか?それはおそらく代謝の低下が原因だろう。

というのも、この研究では実際に代謝の変化が測定されており、その結果は以下のようになっている。

代謝の変化
青:従来のカロリー制限 赤:カロリーシフティング
代謝の変化
青:従来のカロリー制限 赤:カロリーシフティング

カロリー制限をぶっ続けで行ったグループは6週間にわたってどんどん代謝が下がっている。その一方で、カロリーシフティングは代謝は若干さがっているものの、その値は概ねベースラインをキープしている。

さらには、カロリー制限をぶっ続けで行ったグループはダイエット終了後4週間にわたって代謝が低下したまま。

ちなみに、この研究ではダイエット中もダイエット終了後もカロリーシフティングのほうが多くカロリーを摂取している。

適度に休んだグループぶっ続けグループ
ダイエット期1365kcal (リフィード日:1971kcal)1186kcal
メンテナンス期1611kcal1562kcal
カロリーシフティングと従来のカロリー制限における摂取カロリー

つまるところ、カロリーシフティングのほうが食べているのに痩せたのである。

ずっとカロリー制限してもただ辛いだけで対して痩せないのである。実際に、ぶっ続けでダイエットしたほうが研究が辛かったらしくで、リタイア率はカロリーシフティングの2倍に及んでいる。(36.8% vs 15.7%)

カロリーシフティングで定期的に維持カロリーまで食べることは、ダイエットを継続しやすくする上にリバウンドも防止する優秀な戦略なのである。

食事に関する考え方も重要

食事の方法も大事だが、実はもう一つ大事なことがある。

それは食事に対する考え方である。

ダイエットをする人がやってしまいがちな思考法なのに、リバウンドにつながるものがある。

それが”オールオアナッシング”の考え方である。

例えば「炭水化物を一切取らない」「摂取量を極端に制限する」などの方法だが、これらの方法は短期的には痩せることはできても、長期的な体重管理には失敗のもとであることがわかっている。(R

実際に2021年の研究では、厳格な食事制限をするグループがダイエット後に1.1kgのリバウンドを経験したが、カロリーは気にするが食品は好きなものを食べたグループはリバウンドしなかったことが報告されている。

糖質やジャンクフードを一生避け続けるのは実質的に不可能に近く、人間心理的にも禁止しようとすればするほど欲求は強くなることが知られている。

特定の食品を排除することは、短期的には痩せることはできても、ダイエット終了後に結局食べてしまってはリバウンドしてしまう。

実際に食べ物を”良い/悪い”で判断する白黒思考は過食のリスクが高く、反対の考え方である”柔軟思考”は長期的なダイエットの成功に欠かせないことがわかっている。

このことに対しては下記の記事に詳しく書いたので、いつも厳格なダイエットをしてはリバウンドを繰り返しているという人はぜひ読んでほしい。

高すぎる目標もリバウンドのもと

最後に、リバウンド防止にもう一つ重要なことがある。

それは適切な減量の目標を立てることである。

というのも、ダイエットを始める人の多くは体重の20-40%の減量という過度な目標を立てる傾向にあるのだが、それによって必要以上に挫折感を味わってしまう場合が多い。(R

この20%~の体重減少というのは、脂肪吸引などの外科手術をしないと達成が難しいレベル。

一般的な食事制限では、多くても現在の10%の体重減少を目標にするのがいいだろう。

そして、具体的な体重の減少率としては、1週間で体重の0.5%~1%ほどの減量がいいだろう。

ちなみに、カロリー制限をゆるくすればするほどリバウンドしづらいと言われているが、実際はそんなことはない

もちろん、カロリー制限がキツくなりすぎると”ドカ食い”の危険性が高まるし、筋肉が分解されやすくなるのでカロリー制限をキツくしすぎるのはお勧めしない。

しかし、かといってカロリー制限がゆるすぎても変化が乏しすぎてモチベーションの維持が難しい。

カロリー制限はゆるすぎずキツすぎずがいい。

その目安としては週あたり体重の0.5%~1%が妥当だろう。

ストイックすぎるダイエットは辛いだけ

ダイエットはただ闇雲に頑張っても、精神的な負担が大きいうえに、大して痩せるわけでもない。

むしろ厳しすぎないダイエットのほうが長期的なダイエットは成功しやすい

ダイエットをしている人は、定期的に維持カロリーにしたり、変に厳しすぎる制限をしないように心がけるほうがいい。ぜひお試しあれ!

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