ダイエットで最もつらい瞬間、それが停滞期である。
今回は、論文から『停滞期の原因と脱出法』に関する話。
停滞期はなぜ起こるのか?どうすれば脱出できるのか?について紹介しよう。
ダイエットに停滞期は存在する
ダイエットをすると、絶対に停滞期にぶち当たるが、そもそもなぜ停滞期なんてものが起こるのだろうか?
これは”体重減少”と”省エネ”のダブルパンチにより、体の消費カロリーが劇的に減ることが原因。
体が省エネモードになる
『体が省エネモードになるってよく聞くけど、これは本当なのか?』
そう思うかもしれませんが、これは紛れもない事実。
というのも、意外にも私たちの体は普段エネルギーを無駄使いしまくっている。
これは”適応熱生産”と呼ばれるもので、具体的にいうと”エネルギーを熱として捨てている”のである。
普段は熱として無駄にエネルギーを使いまくっている体だが、カロリー不足が続くと体はエネルギーを熱として捨てることを控えるようになる。
このことは実際に多くの研究で確かめられている。
- 2001年の研究:ダイエット開始から8週間後、体は男女それぞれ1日あたり229kcal,146kcalも無駄遣いを減らしていた(R)
- 1995年の研究:体重を10%減らした被験者の体は、1日あたり137kcalも無駄遣いを減らしていた(R)
- 2012年の研究:肥満者が大幅に体重を減らしたところ、30週間後には体は1日あたり504kcalも無駄遣いを減らしていた(R)
ちなみに、これらのカロリー低下はダイエットによって体の組織が減ったことによる代謝減少などは含まれていない。
純粋に適応熱生産だけによる消費カロリーの値である。
体が熱として捨てているエネルギーを減らすだけで、基礎代謝がこんなにも減ってしまうのである。
体重が減ったことにより、実際の代謝はさらに落ちる
ということはもちろん、適応熱生産に体重減少が加わると、さらなる代謝低下をもたらすということである。
ダイエットにより減るものが脂肪だろうと筋肉だろうと、それを維持するためにコストがかかるのはで、そのために使っていたエネルギーは当然減るのである。
これと適応熱生産が組み合わさると、1日に使われる消費カロリーは大幅に減ってしまうことが報告されている。
- 1951年の研究:維持カロリーの50%で半年間過ごしたところ、代謝が40%減少した。そのうち25%が体重減少、15%が省エネによるものだった。(R)
- 2013年の研究:ダイエット終了後に代謝が160kcal減少していた(R)
- 2012年の研究:肥満者が大幅に体重を減らしたところ、代謝が789kcalも減少していた(R)
このように、ダイエットをすると最低でも150-200kcal、多い場合はラーメン1杯分にも相当する700kcal近くも1日の消費カロリーが減る
しかし、多くの人は消費カロリーがこんなにも減っているのに摂取カロリーを変えない。
なので今まで通りの食事では当然『体重が減らない』と言う事態になるのである。
停滞期は、対処しない限り一生抜け出せない
このようにして停滞期が完成すると、何もしなければ当然体重は減らない。
それではどうすればいいのか?
簡単に思いつくのは”消費カロリーを増やす”か”摂取カロリー減らす”の2択だが、実はこの戦略はどちらもあまり賢いとは言えないのである。
”摂取カロリーをさらに減らす”は悪循環にハマる
まず”摂取カロリーをさらに減らす”という戦略だが、この戦略と取るとどうなるのだろうか?
おそらく再び体重は落ち始めるだろうが、体では適応熱生産が進みさらに代謝が下がるだろう。
そして、また停滞期にぶつかりカロリーを減らす...という無限ループに陥る。
これは摂取カロリーがどんどん少なくなりきついダイエットになっていく。
さらには、摂取カロリーを減らすと筋肉の分解も加速するので、ダイエットが進めば進むほど脂肪ではなく筋肉がどんどん分解されるようになるだろう。
せっかくダイエットをしても脂肪が燃えていなかったら、何のためにダイエットしているかわからない。
『停滞期に突入するたびにカロリーを減らしていく』と言う戦略はダイエットを辛いものにし、筋肉分解のリスクを高めるだけ。
戦略としては現実的じゃないのである。
”運動量を増やす”は愚策
次に消費カロリーを増やすという選択肢もあるが、これもあまり賢い選択肢ではない。
まず、停滞期のたびに運動量を増やすのは、最終的には毎日何十キロも走るはめになりかねず非現実的である。
それにそもそも有酸素運動はやりすぎると基礎代謝が下がることが知られている。
有酸素運動で増やせる消費カロリーというのはせいぜい300kcalが限界。
運動量を増やしても消費カロリーは増えず、ただただ疲労感が高まるだけである。
停滞期を抜け出す方法は”2週間休むこと”
停滞期を脱出するには、結局”代謝低下を回復させる”しかない。
これにより消費カロリーが増え、再び体重が減り始めるのである。
ここで「はいはい、チートデイをすればいいんでしょ?」と思う人もいるかもしれないが、チートデイをオススメする気は全くない。
なぜかというと、1日爆食いしたくらいでは代謝は戻らないからである。
それではどうすればいいのか?解決策は『2週間ダイエットを休み、普段通りの食事をすること』である。
というのも、代謝を戻すには食べる”量”だけでなく維持カロリー(以上)に戻す”期間”も重要になるのである。
「そんなに長期間ダイエットを休んでいいの?」
と思うかもしれないが、むしろカロリー制限をずっと続けるより遥かに痩せることがわかっている。
このことを示したのが2017年のタスマニア大学による研究。(R)
この研究では、ダイエットを2週間ごとに2週間休むと、カロリー制限をずっと続けるよりも体重が多く減少したことが報告されている。(休みあり:-14.1kg vs ぶっ続け:9.1kg)
さらにこの研究では6ヶ月後にリバウンドしたかどうかも調べられており、リバウンドも含めた最終的な体重の減少量は”休みあり”のほうが、ぶっ続けでダイエットするより8.1kgも多く体重が減少していたことが報告されている。
以前の記事でも紹介したように、ダイエット中では定期的に維持カロリーにして代謝を保つほうがダイエット終了後も代謝低下によるリバウンドが起こらないことが知られている。
他の研究でも、1週間休んだほうがダイエット効果が遥かに高いことが証明されていたりいなど、ダイエットを数週間休むことのメリットを報告した研究は多い。
「どうしても長期間ダイエットを休むのが不安!」と言う人は、2日連続で維持カロリーに戻すことがおすすめ。
たった2日の維持カロリーでも、1日の爆食いよりは効果的なことがわかっている。
しかし、たった2日しかないので、このときの食事は代謝を刺激する作用が強い糖質を多く摂るようにすべきだろう。
このように数日から数週間にわたって維持カロリーに戻すことで、代謝が回復しダイエットの停滞期から脱出できるのである。
まとめ
余談だが、私も何の知識もなかった頃は、停滞期になるとカロリーを減らして運動量を増やすことで対処していたが、最終的に行き着いたのは以下のメニューだった。
- 摂取カロリー1400kcal
- HIIT4分×2回
- 筋トレ1時間
- ウォーキング15km以上(3時間以上)
- 1日中立ちっぱなし。1分たりとも座らない
これだけ運動しても体重はほとんど減らなかった上に、オーバートレーニングで太ももからふくらはぎまで足中の筋肉が自分の意思とは無関係に収縮し始めると言う異常事態になった。
今では笑い話だが、ダイエットの停滞期で摂取カロリーを減らしたり消費カロリーを増やすのは愚策でしかないことを痛感した。
停滞期に悩んでいる人は、おとなしく数日間から数週間は維持カロリーに戻すことをお勧めする。
最後に、この分野に関しては以下の記事に詳しくまとめたので、興味のある人はぜひ読んでほしい。参考までにどうぞ!
