「有酸素運動はどれくらいやればいいの?」
ダイエットを少しでも効率化しようと有酸素運動を取り入れるとき、誰もがこの問題にぶち当たるだろう。
今回は、論文から『有酸素運動はどれくらいやればいいの?』という話。
実は、有酸素運動は30分以上行っても”無駄”になる場合が多いのである。
”有酸素運動をやるほど痩せる”はウソ
有酸素運動はカロリー消費量が高い。
ならば、やればやるほど1日の消費カロリーが増えて痩せるはずである。しかし、現実はそんなに甘くないようだ。
例えば、「運動と消費カロリー」の関係を調べたニューヨーク州立大学の研究がある。(R)
この研究は332人を対象にしたもので、実際の身体活動量と1日の消費カロリーを調査したもの。
その結果は、ある一定のレベルまでは1日の身体活動量が高いほど消費カロリーが高かったが、次第に消費カロリーの増加は先細りになる、というものだった。
つまるところ、身体活動量を増やしてもある程度は消費カロリーは増えるが、その効果には限界があったのだ。
それではなぜこんなことになるのか?研究者はわかりやすいグラフで表してくれている。

まず、私たちがイメージする身体活動量と消費カロリーの関係が左側になる。
まずは基礎代謝などの”運動以外の消費カロリー(other)”があり、その上に運動によるカロリー消費(PA:Physical Activity)が乗っかっている。
なので、運動量が増加しグラフが右に行けば行くほど、縦軸の”1日の消費カロリー(Total Energy Expenditure)”も増加する。
しかし、実際は左のグラフのようにはならず、右のグラフのようになる。
ある程度までは運動量の増加によって消費カロリーが増えるが、ある一定の点を越えると”運動以外のカロリー”が急激に減少するのである。
というのも、運動が増えすぎると体が消費カロリーが大きくなりすぎないように勝手に調整してしまうのである。
- 筋肉のエネルギー効率を良くする
- 体が”熱として無駄に捨てていたエネルギー”を減らす(R)
これらの変化は細胞レベルで起こるもの。私たちの意志ではどうしようもない。
消費カロリーを増やすという意味では、有酸素運動を一定以上やっても無駄な努力に終わってしまうのである。
有酸素運動は300kcalくらいに収めておくのがベスト
それでは有酸素運動はどれくらいやればいいのだろうか?
そのひとつの目安となるのが”300kcal”である。
おそらくこれ以上の有酸素運動はカロリー調整が入ってしまい、1日の消費カロリーを上げることはないだろう。
実際に、2012年にコペンハーゲン大学が”600kcal vs 300kcal”の有酸素運動を比較したところ、『300kcalのほうが痩せた!』という結果が報告されている。(R)
というのも、600kcalのグループは有酸素運動を追加しすぎた影響でNEAT(日常生活でのカロリー)が大幅に下がってしまい、実際の総消費カロリーは思った以上に上がらなかったのである。
ちなみに、この研究の被験者は運動習慣がない人なので、もし日常で動き回る仕事をしているなら300kcalよりもっと少なくてもいいかもしれない。
何はともあれ、有酸素運動をやりまくっても他の部分でカロリーが調整されるだけ。
あまり何時間も有酸素運動をやる必要はないのである。
運動量の増やしすぎに注意
有酸素運動をやりまくっても、消費カロリーは大して増えない。
もし有酸素運動が大好きで仕方ないなら別に1時間の有酸素運動をしてもいいだろう。
しかし、有酸素運動は嫌いだけどダイエットのために仕方なくやっている、というなら、300kcalくらいに押さえておくのが無難。参考までにどうぞ。