- 筋トレは週何セットやればいいの?
- 筋トレ初心者は週10セットからって言うけど、それ以下だと効果がないの?
- 筋トレのセット数は多すぎると逆効果なの?
こういった悩みは筋トレを始めると必ず出てくる疑問だが、実は要点を掴めば自分でセット数を組むのは難しくない。
そこで今回は、「筋トレを週何セットやればいいのか」について論文から徹底的に考えてみよう。
「筋トレを週何セットやればいいの?」という問題は、実は有名なメタ分析の”結果”だけを見ていてはイマイチ理解ができない。
個々の研究で実際にどのような筋トレをしているかを知らなければならないのだ。
今回の記事では、メタ分析に含まれる各研究の要点も表にまとめてある。
「なぜ巷では初心者は週10セットからと言われているのか」から「セット数はどうやって増やせばいいか」まで、「筋トレは週何セットやるべきか?」を徹底検証していこう。
”セット数が増えるほど筋肥大する”を示した2つの有名なメタ分析
結論を先に言うと、基本的にはセット数と筋肥大に関しては「やればやるほど効果が上がる」、いわゆる”用量依存性”があることがわかっている。
すなわち、週のセット数は増やせば増やすほど筋肥大する。
この用量依存性を示した有名な論文が2つある。
- 「セッションあたりのセット数による筋肥大」を調べた2010年のメタ分析。
- 「週あたりのセット数による筋肥大」を調べた2017年のメタ分析。
2010年の研究は「1セットよりも複数セットのほうが筋肥大するか?」を調べたメタ分析で、2017年の研究は「週あたりのセット数は多いほど筋肥大するか?」を調べたメタ分析。
特に有名なのは2017年のメタ分析で、巷でよく聞く「筋トレ初心者は週10セットから始めよう」という話はこの研究から出てきたもの。
ということで、現在の「筋トレは何セットやるべきか?」の中心的な話題となっている2つの論文を見てみよう。
「筋トレは1セットより複数セットがいいのか?」を調べた2010年の研究
まず初めに紹介するのは、セッションボリュームに関する研究2010年に行われた「1セット vs 複数セット」を比較したメタ分析。(R)
この研究は、いわば「筋トレは1セットでいいのか?複数セットやるべきなのか?」問題に決着をつけるべき行われたもの。
今でこそ「1回3セット」が普通となっているが、この時代のフィットネス界では「筋トレは1セットで十分」という考えが主流だった。
実際に、アメリカスポーツ医学界のガイドラインでは「筋トレは週2,3回、8-10種目を1セットやれば十分」と書かれている。(R)
複数セットは時間がある人やアスリート向けのプログラムと言った立ち位置で、「複数セットはシングルセットより効果的じゃない!」と主張する人もいた。(R、R)
「複数セットは1セットより効果的なのか」について論争が行われていた時代なので、この「問題に白黒つけるべく行われたのが今回のメタ分析。
具体的には、「1セットvs複数セット」を比べた研究8件が抜き出された。(R、R、R、R、R、R、R、R)

どの研究も週2,3回の頻度で筋トレをしており、セット数(エクササイズボリューム)が1セットまたは3セットで2グループに分かれている。
ここで重要なのが、すべての研究が各筋群に対して1つのエクササイズしかしていないこと。
例えば背中のトレーニングでいえば、ラットプルダウン1セットだけを週2,3回のペースでした後、背中の筋肉厚さが測定されている。
背中のトレーニングといえばラットプルダウンの後にベントオーバーロー...という複数種目が常識から現在したらかなりセット数が少ない。
ただし、1997年の研究だけは例外。
1つの筋群あたり3つほどエクササイズしているので、この研究だけは()内に各筋群あたりのセット数も書いておいた。
これらの研究からセット数と筋力や筋肥大の関係性を調べたところ、以下のような結果に。

まずは左側の筋肥大から見てみると、セット数が上昇するにつれて筋肥大効果も上昇している。
つまり”用量依存性(Dose-dependence)”があり、まさに「筋トレはやればやるほど効果が出る」のである。
一方で、筋力に関しては1セットより3セットのほうが効果的だが、6セットまで増やしても3セットと筋力向上は変わらないという結果に。
この結果は、後の研究で「筋力はセット数には依存せず”高重量を扱うこと”に反応しやすい」とわかっていることからも頷ける話。
筋肥大の話に戻ると、筋トレをするなら1セッションで各筋群あたり4~6セットまでは「やればやるほど効果が出る」という結果になった。
ほとんどの研究が週2,3で筋トレをしていたことを考えると、週あたりのセット数に換算すると8~18セットと言ったところ。
このメタ分析で得られた知見をまとめると以下のようになる。
週あたり8-18セットまでは、セット数を増やせば増やすほど筋肉は大きくなる
この研究は以下の記事でもさらに詳しく紹介しているので、こちらもオススメ。

筋トレは週あたり何セットやるべきなのか?を調べた2017年のメタ分析
2010年のメタ分析を週あたりのボリュームに換算するなら8~18セットであり、この範囲ならセット数は増やせば増やすほど筋肉は大きくなると言った。
2017年にも(もっと直接的に)「週あたりのセット数と筋肥大」について調べたメタ分析が行われているので、次はこちらをみてみよう。(R)
このメタ分析は先ほどの研究より大規模なもので、「低セットvs高セット」について調べた筋トレ研究15件を抜き出したもの。(R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R)

注意点「セット数にはメイン種目ではなくサブ種目も含まれている」
このメタ分析では、要約を見ただけでは気づかないであろう超重要ポイントがある。
それは、セット数にはメイン種目のみならずサブ種目も含まれていること。
例えば上腕二頭筋のセット数をカウントするときにはロー系のラットプルダウンが含まれているし、上腕三頭筋のセット数をカウントするときは、プッシュ系のベンチプレスなども含まれている。
”上腕二頭筋を週30セット行ったら週18セットより筋肥大した”と聞いたら、多くの人は「そんなにできるわけない!」と思うはず。
なぜなら、普通はバーベルカールやダンベルカールなどの上腕二頭筋をメインターゲットにしている種目を週30セットをこなしていると想像するからだ。
しかし、研究の世界では少し事情が違う。
実際は上腕二頭筋だけを刺激する種目だけでなく、ラットプルダウンやベントオーバーローなど上腕二頭筋を補助的に使う種目も含んで週30セットである。
なので、今回は読者のみなさんがイメージしやすいように各研究から”メイン種目のセット数”も抜き出しておいた。
これを見ると、実際にその筋肉がメインターゲットとして行われているセット数はそこまで多くないことがわかる。
一見すると週あたりのセット数が30セット近い高ボリューム研究が含まれているように見えるが、実際に直接的にその筋群を鍛えているのは週12-15セットくらい。
このセット数の数え方は、研究の世界ではオーソドックスな数え方で、他の研究でもよく出てくる。
セット数の数え方が一般的に想像される数え方と違うことはエビデンスに触れることが多い現代では覚えておくべきだろう。
”週15セットまでは”セット数が多いほど筋肥大する
15件の研究をもとに「週あたりのセット数と筋肥大の関係」について調べたところ、結果は以下のようになった。
- 5セット未満 :+5.5%の筋肥大
- 5-9セット :+7.2%の筋肥大
- 10セット以上 :+8.6%の筋肥大
簡単にいってしまえば、2017年の研究でも「セット数は増やせば増やすほど筋肥大する」という結果になったのである。
ここで「各セット数がもたらす筋肥大」を円グラフにしてみよう。

なぜこのようなグラフにしたかというと、10セット以上の筋肥大効果を100とすると、その64%に当たる筋肥大は4セット以下の筋トレからもたらされていることを紹介したかったから。
言い換えるなら、週4セットという今の常識からしたら極めて少ないセット数でも多くの人が思っている以上に筋肉は大きくなる。
そしてもう一つ、筋トレのセット数が増えるほど確かに筋肥大効果は上がっているが、その効果は明らかに先細りになっている。
このメタ分析の結果をまとめると、以下のようになるだろう。
- 週あたり10セットまでは、セット数を増やすほど筋肉は大きくなる
- しかし、週あたり4セットの筋トレが64%もの筋肥大をもたらており、その後セット数を追加しても筋肥大はするがその効果は先細りになっていく。
筋トレを10セットすると4セット行うよりきん肥大するが、10セットやるかどうかはその人の価値観次第。
「4セットの筋トレが64%の筋肥大をもたらすなら、週あたり4セットが一番コスパがいい」と思う人がいても何もおかしくないだろう。
週30セットの高ボリュームでもセット数を増やすほど筋肥大する!
2010年と2017年のメタ分析では少なくとも週10セットまでは筋トレは「やればやるほど効果が出る」用量依存性があることが分かった。
なぜ”少なくとも週10セットまでは”を強調したかというと、これらのメタ分析には20セットや30セットという高セット数の研究は含まれていなから。
というのも2017年以前では”高セット数の研究が存在しない”という問題点があった。
実際に2017年の論文でも、著者は「週10セット以上で用量依存性があるかはわからないことがこの研究の限界だ」と言っている。
とはいえ、2017年のメタ分析でセット数と筋肥大に用量依存性の関係があるとわかると、「どれだけセット数を増やしても筋肥大効果は増えるのか?」という疑問を研究者が持つようになる。
ということで、2017年以降には30セット越えの超高セット研究が行われているので紹介しよう。
まず紹介するのは2019年に行われた「高セット数の筋トレは効果的なのか?」を調べた研究。(R)
被験者となったのはトレーニング経験者の男性34人で、彼らを3つのグループに分けた。
- ローボリューム :1セット/1エクササイズ、1筋群あたり6-9セット/週
- 中程度のボリューム:3セット/1エクササイズ、1筋群あたり18-27セット/週
- ハイボリューム :5セット/1エクササイズ、1筋群あたり30-45セット/週
ちなみに1筋群あたり30-45セットというとバカみたいな高セットに思えるが、この研究でも先ほど同様メイン種目とサブ種目あわせての数字になる。
その筋肉がメインターゲットでは無く補助的に使われている種目も1セットとカウントしているので、セット数がめちゃくちゃ多いように見えるだけ。
筋トレの頻度は週3で、具体的なエクササイズとしては「バックスクワット・レッグプレス・レッグエクステンション・ベンチプレス・バーベルプレス・ラットプルダウン・ケーブルロー」から成る全身トレーニングとなっている。
8週間にわたりこれらの筋トレをしてもらい、各グループの筋肥大率を調べたところ以下のような結果になった。

上2つが上半身である上腕二頭筋(a)と上腕三頭筋(b)、下2つが下半身である大腿直筋(c)と外側広筋(d)の結果となっている。
結果としては非常にわかりやすいもので、セット数を増やせば増やすほど筋肥大するという”用量依存性”の関係になっている。
セット数で数えてみると、まず上半身である上腕二頭筋と上腕三頭筋はそれぞれ2種目ずつ行われているので、(補助的に使われる種目を含めて)週あたり30セットまでは「セット数を増やすほど筋肥大した」ということになる。
そして下半身の種目は「スクワット・レッグプレス・レッグエクステンション」の3種目なので、週あたり45セットまでは「セット数を増やすほど筋肥大した」ということになる。
ちなみに読者の中には「上半身と下半身で結果を分けずに45セットまで用量依存性があるではダメなの?」と思った人もいるだろう。
実は研究の世界では「上半身より下半身のほうが高ボリュームが効果的かもしれない」という説がある。(R)
はっきりとしたことは分からないが、上半身と下半身では必要なボリュームが違う可能性があるので、今回も一応上半身と下半身を分けた。
そのような事情もあって今回の研究をまとめると以下のようになる。
- 上半身はメイン・サブ種目含めて週あたり30セットまで用量依存性があった!
- 下半身はメイン・サブ種目含めて週あたり45セットまで用量依存性があった!
サブ種目含めて30~45セットという高セット数でも用量依存性が見つかったのだ。
週あたり32セットの高ボリュームでもセット数が多いほうが筋肥大
ここで他の高ボリューム研究も見てみよう。
2022年にも「高セット数を筋肥大に効果的なのか?」を調べた研究”が行われている。(R)
被験者となったのはトレーニング経験者の男性27人で、彼らを3つのグループに分けた。
- 16セットグループ:1筋群あたり16セット/週
- 24セットグループ:1筋群あたり24セット/週
- 32セットグループ:1筋群あたり32セット/週
どのグループも各筋群を週2の頻度で鍛えており、この研究でも今までのようにセット数に”補助種目”を含んでいることは要注意。
具体的なエクササイズを説明すると、筋肉厚さが計測された上腕二頭筋・上腕三頭筋・外側広筋のエクササイズは、一番ボリュームの多い32セットグループで以下のようになっている。
- 上腕二頭筋:ラットプルダウン16セット+バイセップカール16セット
- 上腕三頭筋:ベンチプレス16セット+ケーブルプルダウン16セット
- 外側広筋:スクワット16セット+レッグエクステンション16セット
基本的に、コンパウンド種目とシングルジョイント種目を1種目ずつといった構成。
これらの筋トレを8週間してもらい、実験終了後に被験者の筋肉厚さを測定したところ以下のような結果に。

こちらの研究も分かりやすい結果で、筋トレのセット数が増えるほど筋肥大している。
上半身・下半身ともに、メイン・サブ種目込みで週あたり32セットまでは「セット数を増やすほど筋肉が大きくなる」という用量依存性があったのだ。
2019年の研究と2022年という2つの研究で、かなり高セット数の筋トレでも用量依存性が見つかるという結果になった。
これらの結果を見ていると「筋トレはとにかくセット数を増やせばいい」なりそうだが、そういうわけでもない。
逆の結論である「セット数を増やしたほうが筋肥大しなかった」という研究もあるのだ。
筋トレのセット数が多すぎて逆効果になる場合もある
「セット数が多すぎて筋肥大しなかった!」という研究として一番有名なのは2017年の研究だろう。(R)
被験者となったのはトレーニング経験者19人で、彼らは主要なエクササイズを”5セットor10セット”やるかで2つのグループに分けられた。
実際に行っていたエクササイズは以下の通り。
- セッション1
- ベンチプレス:10回× 5 or 10 セット
- ラットプルダウン:10回 × 5 or 10セット
- インクラインベンチプレス:10回 × 4セット
- シーテッドロー:10回 × 4セット
- クランチ:20回 × 3セット
- セッション2
- レッグプレス:10回 × 5 or 10セット
- ランジ:10回 × 5 or 10セット
- レッグエクステンション:10回 × 4セット
- レッグカール:10回 × 4セット
- カーフレイズ:20回 × 3セット
- セッション3
- ショルダープレス:10回 × 5 or 10セット
- アップライトロー:10回 × 5 or 10セット
- トライセップスプッシュダウン:10回 × 4セット
- バーベルカール:10回 × 4セット
- シットアップ:20回 × 3セット
実際に筋肉厚さが計測された上腕二頭筋と上腕二頭筋のセット数を数えてみると、メイン・サブ種目合わせて”13セット vs 18セット”となっている。
今までの研究に比べてそこまでセット数が多いわけではないどころか、セット数が少ないといった印象を持った人も多いはず。
6週間の筋トレ後に筋肉厚さを計測したところ、(どちらのグループも有意差には届かなかったが)筋肥大率はセット数が少ないグループのほうに有利な結果となった。
- 三頭筋の厚さは10セットグループのほうが有利だった!(10セット:+10.7%, 5セット:+5.6%)
- 二頭筋の厚さは5セットグループのほうが有利だった!(10セット:+0.9%, 5セット:+7.3%)
- 筋力向上は5セットグループのほうが大きく、その値はベンチプレス(10セット:+6.2%, 5セット:14.9%)、ラットプルダウン(10セット:+4.5%, 5セット:+15.1%)だった!
三頭筋の厚さはセット数の多いグループのほうが有利だが、二頭筋はセット数が少ないグループのほうに有利な結果となっている。
他の例としては、2019年の研究で上腕二頭筋をサブ種目込みで”9セット vs 18セット vs 27セット”で3グループに分けて比較したところ、筋肥大率がそれぞれ4.3%,9.3%,5.4%だったというものがある。(R)
こちらの研究でも、(週9セットや)週27セットよりも週18セットのほうが筋肥大したのである。
セット数が多すぎる、という事態に陥ってしまったワケ
今までの研究に比べて特段セット数が多いわけでもないのに、筋肥大に不利になってしまうのはなぜなのだろうか。
先に断っておくと、現段階で「常にセット数が多いほど筋肥大するとは限らない」というのは分かっているが、その原因や「どれくらいのセット数が多すぎになるのか?」は分かっていない。
とはいえ、いくつかの推測を行うことはできる。
推測①週1でしか筋トレをしていないから筋肥大しなかった
に2017年の研究で筋肥大がうまくいかなかった理由として挙げられているのが、この10セット法を調べた研究では”週1”しか筋トレをしていないこと。
なぜなら、2016年のメタ分析で「筋トレは週2回以上はやるのが筋肥大に効果的」という結論が出ているから。(R)
2019年と2022年の「高セット数でも用量依存性が見つかった」という研究では、それぞれ週3と週2で鍛えており筋トレに最適な頻度を満たしている。
一方で、2017年の研究は週1しか鍛えていないのだ。
よって、「筋トレに最適な頻度をこなしていないので2017年の研究はいまいち成果が出なかったのでは?」と言われることがある。
しかし、頻度が低いから筋肥大しづらかったというのは確かにそうかもしれないが、高セット数のほうが筋肥大しなかった理由としてはイマイチだろう。
推測②トレーニング歴が浅いのにセット数を増やしすぎた
第二の理由として挙げられるのが「被験者のトレーニング経験の違い」である。
もう一度、3つの高ボリューム研究の被験者の筋トレ歴と実験開始前のベンチプレス重量を比較してみよう。
- 2019年:筋トレ歴4.4年、ベンチプレス重量93.8kg
- 2022年:筋トレ歴3.4年、ベンチプレス重量98kg
- 2017年:筋トレ歴3.5&4.8年、ベンチプレス重量62kg
2017年の被験者がベンチプレスが62kgなのに対して、2019年と2022年の被験者はベンチプレスが100kgに到達する勢い。
ベンチプレスの初心者平均が60kgであることから言っても、2017年の被験者は長年筋トレをしているとはいえそこまで力を入れていない可能性が高い。
一方で、2019年と2022年の研究は被験者が100kgに到達する本気のトレーニー。
つまり、2017年の研究と比較して、2019年の研究と2022年の研究はかなり熟練度の高いトレーニーが被験者なのだ。
なぜこのことが重要かというと、後ほど紹介するが「セット数は徐々に増やすほうが筋肥大に効果的」というエビデンスがあるから。
簡単に言ってしまえば、筋トレの熟練度が上がるほど高セット数に適応できるのだ。
2017年の被験者はベンチプレス1RMがたったの62kg。
筋トレ初心者とほぼ変わらない重量しか扱えない人にとって、10セット法はあまりにセット数が多すぎたのだ。
「週22セットに増やす」よりも「セット数を20%増やす」のほうが筋肥大
筋トレ経験者を被験者にしたセット数の研究を読み解く上で大事なコツがある。
それは”〇〇セット”という絶対値ではなく、「今までのボリュームからどれだけ増えたか?」という相対値で考えなければならないということ。
このことを具体的に示したのが、2022年の「22セットの高セット vs 20%のセット数増加」を比較した研究。(R)
被験者となったのはトレーニー男性16人で、被験者は脚を2通りの方法で鍛えた。
- 週あたり22セットのレッグプレスを行う
- 週あたりのセット数を今までのセット数を20%増加させてレッグプレスを行う
どちらの足も週2で筋トレを行い、8週間後に筋肉厚さを計測したところ、以下のような結果に。

まず左のグラフを見ると、22セットを行った白バーより、セット数を20%増やした灰色バーのほうが筋肥大している事がわかる。
そして、右側の図は各個人における20%増加時と22セット時の筋肥大を表している。
16人中10人が週あたり20%のセット数を増やしたときのほうが筋肥大している一方で、22セット時のほうが筋肥大したのは16人中たった2人だけである。
そして、16人中4人はどちらの条件でも同じくらい筋肥大した。
要するに、絶対値で22セットとやみくもに高セットにするより、セット数を20%増やしたグループのほうが筋肥大したのである
もしあなたがトレーニングのセット数を考えているトレーニング経験者なら、「その値は何セットにしようか?」と考えるより「20%増やそうかな?」と相対値で考えるほうがいい。
いくらセット数を増やすほど効果が上がるからといって、とにかくたくさんのセット数をこなせばいいわけではない。
特定のセット数から始めて、筋トレ年数があがるにつれて徐々にセット数を上げていくのがいいだろう。
筋トレ初心者は何セットから始める?筋トレ経験者はいつセット数を増やす?
多くの研究を見てきたので、最後にセット数についての考え方をまとめよう。
- 筋トレ初心者は、今までのセット数がないので、〇〇セットという絶対値で考えてもよい。
- 筋トレ経験者は、今までのセット数があるので、〇〇%増加という相対値で考えるほうがよい。
筋トレ初心者は現在の筋トレが0セットなので、「セット数を何%増やすか?」を考える必要がない。
なので、必然的に〇〇セットという絶対値で考えざるをえない。
そして筋トレ経験者は、筋トレ年数と現在のセット数によって最適なセット数が変わってくる。
なので、現在のセット数より20%増やすという相対値で考えるのがいいだろう。
そうなると、当然以下のような疑問が生まれてくる。
- 筋トレ初心者は何セットから始めればいいの?
- 筋トレ経験者はどんなときにセット数を増やしたほうがいいの?
それでは各疑問に答えていこう。
筋トレ初心者は”週あたり10セット”がスタート地点といわれるワケ
まず、スタート地点として、確実に効果が無駄にならないだろうセット数は”週あたり10セット”だろう。
2010年のメタ分析と2017年のメタ分析の被験者の欄を見てみると、実はほとんどが筋トレ未経験者であることに気づくだろう。


2010年と2017年のメタ分析の結果は厳密には「筋トレ未経験者は週あたり10セットまでなら、セット数を増やして筋トレを始めるほどきん肥大する」なのだ。
なので、これから筋トレを始める人は週あたり10セットから始めてみるのがオススメ。
とはいえ、時間がなかったりする人は週4セットくらいで始めても筋肉は十分大きくなるだろう。
まずは週10セットないしは週4セットから始め、筋トレ歴が長くなるにつれてセット数を徐々に上げていけばいい。
筋トレ経験者がセット数を増やすべきタイミング
それでは、筋トレ経験者はどんなときにセット数を上げたらいいのだろうか。
簡単に言ってしまえば、筋トレの重量が伸び悩んだときである。
というのも、筋肥大は基本的にロードボリュームで決まる。
ロードボリューム=重さ×挙上回数
初めのうちは、10回3セットでもどんどん重さが増えていくのでロードボリュームが増えていくが、どこかで必ず重さの増加が止まる停滞期が訪れる。
例えばベンチプレスが70kgで停滞してしまった時、セット数を増やさないとロードボリュームは停滞してしまう。
そんなとき、セット数を増やすと挙上回数が増えるのでロードボリュームも増やすことができる。
ロードボリュームの停滞を打ち破れるので、また一段階筋肥大することができるのだ。
具体的に「セット数を増やすべきかな?」と迷ったときは、筋トレ研究者兼ボディビルダーのエリック・ヘルメスの著書に掲載されているフローチャートがわかりやすいのでオススメ。(R)

筋トレが停滞期に陥ったとき、まずは食事や睡眠などの要素を見直す。
筋トレ以外の要素にも気を遣っているのになかなか重量が増やせない...そんなときもすぐにセット数を増やしていけない。
まず疑うべきなのが”セットが多すぎないか?”ということである。
というのも、往々にして”セット数が多すぎる可能性のほうが高いから。
メイン・サブ種目含めて>30セットでも”やりすぎ”にならないとは言え、それは筋トレ歴が4年近くありベンチプレスも3桁に届きそうな人々の話である。
筋トレ歴1年くらいならば、10セット法の研究からも週20セットは越えないほうが無難。
そして、現在の風潮からしてメイン・サブ種目含めて週20セットというラインだと意外と軽々とこの数値を越えている”やりすぎ”の人が多い。
「セット数は多くないか?回復がしっかり取れているか?」をまず考え、回復もばっちりなのに完全に筋トレが停滞期...そんなときに、ようやくセット数を増やすのだ。
まとめ:実践と応用
最後に筋トレのセット数についての考え方をまとめよう。
- 筋トレを始めるとき、メイン・サブ種目あわせて10セットからスタートが無難
- 筋トレが停滞したときは20%ほどセット数を増やしてもよい
- 筋トレ歴が1年くらいのビギナーは週20セットをやると”やりすぎ”
- 筋トレ歴が4年前後の中級者なら、上半身でメイン・サブ合わせて30セット、下半身で45セットという高ボリュームでも可
時間がない人は週あたり4セットでも10セットの64%の筋肥大が得られるし、1回1セットでも筋肉は大きくなる。
今まで筋トレをやってきた人は、現在のボリュームを基準にして考えてみるのがいいだろう。
ちなみに筋トレのセット数は専門用語で”ボリューム”とも呼ばれる。ボリュームについて詳しく知りたい人は以下の記事もオススメ。
