筋トレは週何セットやればいいの?
筋トレ初心者は週10セットからっていうけど、それ以下だと効果がないの?
筋トレのセット数は多すぎるとダメって本当?
今回は筋肥大に最適なセット数について徹底解説します
こういった悩みは筋トレを始めると必ず出てくる疑問だが、実は要点を掴めば自分でセット数を組むのは難しくない。
今回の記事では「筋トレを週何セットやればいいのか」について論文から徹底的に考えてみよう。
- 筋トレの適切なセット数がわからない
- 自分がしている筋トレのセット数が多いのか少ないのかわからない
- 筋トレを始めたいけどどれくらいから始めるべきかわからない
この記事の目標は、自分に最適なセット数を自由自在に設定できるようにすること。
そのために知っておくべきポイントは3つ。
- 筋トレ未見者は絶対値、筋トレ経験者は相対値でセット数を決める
- 筋トレ未見者はサブ種目含めて10セットがベター
- 筋トレ経験者は今のセット数から20%増やすのがベター
筋トレのセット数に、万人に当てはまる正解はありません。自分にあった調整法を知るのが筋肥大のカギです
筋トレのセット数とボリュームの関係については「筋トレのボリューム理論を徹底解説!理解のカギは定義を知ること」を見てほしい。
動画はこちら
筋トレはセット数が増えるほど筋肥大効果も高くなる
結論を先に言うと「ある程度までは筋トレのセット数と筋肥大には用量依存性がある」とされている。
基本的にはセット数を増やすほど筋肉が大きくなる傾向があります
この用量依存性の根拠とされているのは2本のメタ分析。
2010年の研究は「1回1セットの筋トレよりも1回2-3セットのほうが筋肥大するのか?」を調べたメタ分析。
そして2017年の研究は「週あたりのセット数が多いほど筋肥大するのか?」を調べたメタ分析。
特に有名なのは2017年のメタ分析で、「筋トレ初心者は10セットから!」はこの論文が元ネタです
どちらの論文は結果は同じ。「セット数が増えるほど筋肥大しやすい」というものだったのだ。
「筋トレは1回1セットより2-3セットがいいのか?」を調べた2010年のメタ分析
まず初めに紹介するのは2010年に行われた「1セット vs 複数セット」を比較したメタ分析。(R)
この研究は「筋トレは1セットでいいのか?2-3セットやるべきなのか?」問題に決着をつけるべき行われたものになる。
いやいや、筋トレは1種目3セットが常識でしょ?
今でこそ筋トレは1種目3セットがメジャーですが、この時代は1種目1セットの筋トレがメジャーでした
常識なんて時代によって移り変わるもの。この当時は筋トレは1種目1セットが当たり前で、3セットもやろうものなら「何?アスリートにでもなりたいの?」と言われかねないのだ。
1セットvs2-3セット論争に終止符を打つべく行われたのがこのメタ分析です
このメタ分析では「1セットvs複数セット」を比べた研究8件が抜き出され、複数セットは筋肥大に有効なのかが調べられた。(R、R、R、R、R、R、R、R)
研究 | 被験者 | トレーニング歴 | セット数 | 頻度 | 実験期間 |
---|---|---|---|---|---|
Galvao and Taaffe (2005) | 老人男女28人 | 未経験 | 1 vs 3 | 週2 | 20週間 |
Marzolini et al. (2008) | 老人男女37人 | 未経験 | 1 vs 3 | 週3 | 24週間 |
McBride et al. (2003) | 若者男女28人 | 未経験 | 1 vs 6 | 週2 | 12週間 |
Munn et al. (2005) | 若者男女115人 | 未経験 | 1 vs 3 | 週3 | 6週間 |
Ostrowski et al. (1997) | 若者男子35人 | 経験あり | 1 vs 2 vs 4(3 vs 6 vs 12) | 週1 | 10週間 |
Rhea et al. (2002) | 若者男性18 人 | 経験あり | 1 vs 3 | 週3 | 12週間 |
Ronnestad et al. (2007) | 若者男性21人 | 未経験 | 1 vs 3 | 週3 | 11週間 |
Strarkey et al. (1996) | 男女48人 | 未経験 | 1 vs 3 | 週3 | 14週間 |
このメタ分析に含まれている研究は筋トレ未経験者が中心なのも重要なポイントです
どの研究もほとんど内容は同じで、各被験者に1セットor3セットの筋トレをしてもらい筋肥大を測定するというもの。
ここで重要なのが、すべての研究が各筋群に対して1つのエクササイズしかしていないこと。
例えば背中のトレーニングでいえば、ラットプルダウン1セットだけを週2-3回のペースでした後、背中の筋肉量が測定されているのだ。
1種目1セットどころか、1筋群でたったの1セットしか筋トレしてません
背中のトレーニングといえばラットプルダウンの後にベントオーバーロー...と複数種目が常識の現在からしたらかなりセット数が少ない。
ただし1997年の研究だけは例外。1つの筋群あたり3つほどエクササイズしているので、この研究だけは()内に各筋群あたりのセット数も記した。
これらの研究からセット数と筋力や筋肥大の関係性を調べたところ、以下のような結果に。
1回に行うセット数が増えるほど筋肥大した
まずは左側の筋肥大から見てみると、セット数が上昇するにつれて筋肥大効果も上昇していることがわかる。
筋トレのセット数と筋肥大”用量依存性(Dose-dependence)”があり、1セットよりも複数セットのほうが筋肥大に有利だと判明したのだ。
筋トレは1セットよりも3セットのほうが、3セットよりも6セットのほうが筋肥大に効果的とわかりました
1回に行うセットが増えても筋力はあまり増えなかった
一方で、筋力に関しては1セットより3セットのほうが効果的だが、6セットまで増やしても3セットと筋力向上は変わらないという結果になった。
この結果は、後の研究で「筋力はセット数ではなく”重量”に依存する」と示されたことからも納得できる。
つまり、筋力を上げたければセット数を増やすより高重量でトレーニングをするほうがいいのだ。
筋肥大と違って、セット数を増やしても筋力はさほど上昇しません
2010年のメタ分析:筋肥大は1セット<3セット<6セット
このメタ分析では、1回あたり各筋群4~6セットまでは「セット数を増やすほど筋肥大する」という結果になった。
ほとんどの研究が週2,3で筋トレをしていたことを考えると、週あたりのセット数に換算すると8~12セットくらいだろう。
ただし一つ注意点があって、このメタ分析には1回6セット以上を行った研究は入っていない。
週13セット以上行った場合に「セット数を増やせば増やすほど筋肥大する」とは言えないことに注意!
週に換算すると13セット以上の筋トレをした研究はないので、それ以上の高セット数において用量依存性があるのかはわからないのだ。
- 1回の筋トレで1セットよりは2-3セット、2-3セットよりは4-6セットのほうが筋肥大する
- 週に換算すると1筋群12セットまでは、セット数と筋肥大の間には用量依存性の関係がある
この研究は「筋トレは1セットで十分?論文から1回何セットが効果的なのか検証」で深掘りしているので気になる人はこちらもチェックしてみてほしい。
筋トレは週あたり何セットやるべきなのか?を調べた2017年のメタ分析
2010年のメタ分析を週あたりのボリュームに換算するなら8~12セットであり、この範囲ならセット数は増やせば増やすほど筋肉は大きくなると言った。
2017年にも(もっと直接的に)「週あたりのセット数と筋肥大」について調べたメタ分析が行われているので、次はこちらをみてみよう。(R)
このメタ分析は先ほどの研究より大規模なもので、「低セットvs高セット」について調べた筋トレ研究15件を抜き出したもの。(R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R)
研究 | 被験者 | トレーニング歴 | 週あたりのセット数 | メイン種目のセット数/週 | 頻度 | 実験期間 |
---|---|---|---|---|---|---|
Bottaro et al. (2011) | 若者男性30人 | 未経験 | 2 vs 6 | 2 vs 6 | 週2 | 12週間 |
Cannon and Marino (2010) | 老人男性31人 | 未経験 | 3 vs 9 | 3 vs 9 | 週3 | 10週間 |
Correa et al. (2015) | 老年女性36人 | 未経験 | 3 vs 9 | 3 vs 9 | 週3 | 11週間 |
Galvao and Taaffe (2005) | 老人男女28人 | 未経験 | ~5 vs 9 | 2 vs 6 | 週2 | 20週間 |
McBride et al. (2003) | 若者男女28人 | 未経験 | 2 vs 12 | 2 vs 12 | 週2 | 12週間 |
Mitchell et al. (2012) | 若者男子18人 | 未経験 | 3 vs 9 | 3 vs 9 | 週3 | 10週間 |
Ostrowski et al. (1997) | 若者男子27人 | 経験あり | 3-7 vs 6-14 vs 12-28 | 3 vs 6 vs 12 | 週1 | 10週間 |
Radaelli, Fleck, et al. (2014) | 若者男子48人 | 経験あり | 6 vs 18 vs 30 | 3 vs 9 vs 15 | 週3 | 6ヶ月間 |
Radaelli, Wilhelm, et al. (2014) | 老人女性27人 | 未経験 | 4 vs 12 | 2 vs 6 | 週2 | 6週間 |
Radaelli, Botton, et al. (2014) | 老人女性20人 | 未経験 | 4 vs 12 | 2 vs 6 | 週2 | 20週間 |
Rhea et al. (2002) | 若者男性18 人 | 経験あり | 3 vs ~5 | 3 vs 9 | 週3 | 12週間 |
Ribeiro et al. (2015) | 老人男性20人 | 未経験 | ~4 vs ~10 | 3 vs 9 | 週3 | 12週間 |
Ronnestad et al. (2007) | 若者男性21人 | 未経験 | 3-6 vs 9-18 | 3-6 vs 9-18 | 週3 | 11週間 |
Soonest et al. (2013) | 若者男性8人 | 未経験 | 2 vs 6 | 2 vs 6 | 週2 | 12週間 |
Strarkey et al. (1996) | 男女48人 | 未経験 | 3 vs 9 | 3 vs 9 | 週3 | 14週間 |
ほとんどの研究が週あたり10セット未満での比較となっています。さらに被験者は筋トレ未経験者ばかりですね
注意点「セット数にはメイン種目ではなくサブ種目も含まれている」
実はこのメタ分析、パッと見では気づかないであろう超重要ポイントがある。
実はこのセット数、メイン種目だけでなくサブ種目が含まれています
- 例えば上腕二頭筋のセット数をカウントするときには、ダンベルカールだけでなくラットプルダウンも含まれている
- 例えば上腕三頭筋のセット数をカウントするときは、スカルクラッシャーだけでなくプッシュ系のベンチプレスも含まれている。
”上腕二頭筋の種目を週30セット行ったら週18セットより筋肥大した”と聞いたら、多くの人は無理ゲーだと感じるだろう。
そんなに多くのセット数をできる時間があるわけない!
確かにダンベルカールを週30セットは無理ですが、ラットプルダウンやベントオーバーロウなどのロー系も含めたら週30セットは超える人も多いはず
研究の世界で使われるこの数え方は分かりづらいので、今回はみなさんがイメージしやすいように各研究から”メイン種目のセット数”も抜き出しておいた。
これを見ると、実際にその筋肉がメインターゲットとして行われているセット数はそこまで多くないことがわかる。
ちなみにこのセット数の数え方は、研究の世界ではわりとオーソドックスな数え方。
他の研究でもよく出てくるので、セット数に関するエビデンスをみたらサブ種目も含まれていると思っていいだろう。
”週10セットまでは”セット数が多いほど筋肥大する
2017年のメタ分析にはサブ種目も含まれていることに注意しつつ研究の結果を見てみよう。
15件の研究をもとに「週あたりのセット数と筋肥大の関係」について調べたところ、結果は以下のようになった。
- 5セット未満 :+5.5%の筋肥大
- 5-9セット :+7.2%の筋肥大
- 10セット以上 :+8.6%の筋肥大
簡単に言ってしまえば、2017年の研究でも「セット数を増やすほど筋肥大する」という結果になりました
ここで「各セット数がどれだけの筋肥大をもたらすのか」を円グラフにしてみよう。
10セット以上の筋肥大を100とすると、その64%にあたる筋肥大は~4セットからもたらされています
このグラフをみると、今の常識からしたら極めて少ない週4セットでも十分筋肥大することがわかる。
そしてもう一つ、筋トレのセット数が増えるほど確かに筋肥大効果は上がっているがその効果は明らかに先細りになっている。
- 週あたり10セットまではセット数を増やすほど筋肉は大きくなる
- 週あたり~4セットの筋トレが64%もの筋肥大をもたらしており、その後セット数を追加するほど筋肥大はするが効果は先細りになっていく
筋トレを10セットすると4セット行うより筋肥大するが、10セットやらなければ筋肥大しないわけではない。
少ないセット数でも筋トレをしないよりはずっとマシなのである。
時間がない人・コスパを求める人は週4セットの筋トレをするだけでも筋肥大します
筋トレ未経験者はまず週10セットから始めよう
2017年の研究におけるポイントをまとめておこう。
- 研究の対象となったのは筋トレ未経験者がほとんど
- 週10セットまではセット数が多くなるほど筋肥大率も高くなった
これらの事実が「筋トレ未経験者は週10セットからはじめるべき!」と言われる由縁です
週30セット以上の高ボリュームでもセット数を増やすほど筋肥大した
2010年と2017年のメタ分析ではセット数と筋肥大の間には「やればやるほど効果が出る」用量依存性があることが分かった。
ただし少なくとも週あたり10セットくらいまでは、ということに注意が必要です
これらのメタ分析には20セットや30セットという高セット数の研究は含まれていない。それ以上のセット数でも用量依存性があるのかはわからないのだ。
2017年以前には高セット数の研究がほぼ存在しない。現に2017年の論文で著者は「週10セット以上で用量依存性があるかはわからないことがこの研究の限界だ」と言っている。
さらに筋トレ経験者を対象にした研究が少ないのも当時の課題でした
むしろこの2017年のメタ分析がセット数と筋肥大に関して研究している者たちに洞察を与える。
どれだけセット数を増やしても筋肥大効果は増え続けるのだろうか?
今までにはなかった30セット越えの超高セットでも筋肥大率が高まるのかどうかを研究者が疑問に思うようになったのだ。
これらの経緯があって近年では筋トレ経験者を対象にした高セット数の研究が行われるようになりました
研究①週30セットでもセット数を増やすほど筋肥大した
ここからは最近行われるようになった筋トレ経験者を対象にした高セット数の研究を紹介しよう。
まず紹介するのは2019年に行われた「高セット数の筋トレは効果的なのか?」を調べた研究。(R)
被験者となったのはトレーニング経験者の男性34人で、彼らを3つのグループに分けた。
低セット数 | 中セット数 | 高セット数 | |
---|---|---|---|
1エクササイズあたりのセット数 | 1セット | 3セット | 5セット |
1筋群あたりのセット数 | 6-9セット/週 | 18-27セット/週 | 30-45セット/週 |
頻度 | 週3 | 週3 | 週3 |
1筋群あたり30-45セットというとバカみたいな高セットに思えるが、サブ種目も含まれていてセット数が多いように思えるだけなのは注意しよう。
ちなみに具体的なエクササイズは以下のような全身トレーニング
- バックスクワット
- レッグプレス
- レッグエクステンション
- ベンチプレス
- バーベルプレス
- ラットプルダウン
- ケーブルロー
そして8週間にわたってこれらの筋トレをしてもらい、各グループの筋肥大率を調べたところ以下のような結果になった。
上2つが上腕二頭筋(a)と上腕三頭筋(b)、下2つが大腿直筋(c)と外側広筋(d)の筋肉量となっている。
結果は非常にわかりやすいもので、セット数が多いほど筋肥大しています
セット数で考えると、まず上半身である上腕二頭筋と上腕三頭筋はそれぞれ2種目ずつ行われているので、補助的に使われる種目を含めて週あたり30セットまではセット数を増やすほど筋肥大したということになる。
そして下半身の種目は「スクワット・レッグプレス・レッグエクステンション」の3種目なので、週あたり45セットまでは「セット数を増やすほど筋肥大した」ということになる。
- 上半身は週30セットまではセット数と筋肥大の間に用量依存性があった
- 下半身は週45セットまではセット数と筋肥大の間に用量依存性が見つかった
下半身と上半身で結果を分ける意味はある?週45セットまではセット数を増やすほど筋肥大するでいいのでは?
こう思うかもしれないが実は研究の世界では「上半身より下半身のほうが高ボリュームが効果的なのでは?」という説がある。(R)
はっきりとしたことは分からないが、上半身と下半身では必要なボリュームが違う可能性があるのだ。
なので今回は保守的に考えて上半身と下半身を分けた結果にした。
何はともあれ、30-45セットという高セットでも用量依存性が見つかりました
研究②週32セットでもセット数が多いほうが筋肥大した
他にも2022年にも「高セット数を筋肥大に効果的なのか?」を調べた研究が行われている。(R)
被験者となったのはトレーニング経験者の男性27人で、彼らを3つのグループに分けた。
低セット数 | 中セット数 | 高セット数 | |
---|---|---|---|
1筋群あたりのセット数 | 16セット/週(G16) | 24セット/週(G24) | 32セット/週(G32) |
頻度 | 週2 | 週2 | 週2 |
この研究でもセット数はサブ種目を含んでいることに注意しましょう!
筋肉量が計測された上腕二頭筋・上腕三頭筋・外側広筋の具体的なエクササイズは、一番ボリュームの多い32セットグループで以下のようになっている。
- 上腕二頭筋:ラットプルダウン16セット+バイセップカール16セット
- 上腕三頭筋:ベンチプレス16セット+ケーブルプルダウン16セット
- 外側広筋:スクワット16セット+レッグエクステンション16セット
基本的にコンパウンド1種目+シングルジョイント1種目といった構成になっている。
このメニューで筋トレを8週間してもらい、実験終了後に被験者の筋肉量を測定した。
筋トレのセット数が16セット、24セット、32セットと増えるほど筋肥大しています
サブ種目込みで32セットまでは上半身・下半身ともにセット数と筋肥大には用量依存性の関係があった
2019年の研究と2022年という2つの研究で、週30セットを超えるような高セット数でも用量依存性が見つかるという結果に。
うおー!やっぱり筋トレのセット数は増やせば増やすほど筋肥大するんだ!
ちょっと待って。実は高セット数のほうが筋肥大しなかったという研究も普通に存在します
セット数が多いほうが筋肥大に逆効果だった!
セット数が少ないほうが筋肥大した2つの例
「セット数が多すぎて筋肥大しなかった!」という研究として一番有名なのは2017年の研究だろう。(R)
被験者となったのはトレーニング経験者19人で、彼らは主要なエクササイズを”5セットor10セット”やるかで2つのグループに分けられた。
種目 | 5セットグループ | 10セットグループ | |
---|---|---|---|
セッション1 | ベンチプレス | 5セット | 10セット |
ラットプルダウン | 5セット | 10セット | |
インクラインベンチプレス | 4セット | 4セット | |
シーテッドロー | 4セット | 4セット | |
クランチ | 3セット | 3セット | |
セッション2 | レッグプレス | 5セット | 10セット |
ランジ | 5セット | 10セット | |
レッグエクステンション | 4セット | 4セット | |
レッグカール | 4セット | 4セット | |
カーフレイズ | 3セット | 3セット | |
セッション3 | ショルダープレス | 5セット | 10セット |
アップライトロー | 5セット | 10セット | |
トライセッププッシュダウン | 4セット | 4セット | |
バーベルカール | 4セット | 4セット | |
シットアップ | 3セット | 3セット |
実際に筋肉量が計測された上腕二頭筋と上腕三頭筋のセット数を数えてみると、メイン・サブ種目合わせて”13セット vs 18セット”となっている。
10セットグループはしんどそうですが、実際に筋肉量が測定されている筋群のセット数はそこまで多くないです
6週間の筋トレ後に筋肉厚さを計測したところ、上腕二頭筋の筋肥大率はセット数が少ないグループに有利な結果となった。
- 三頭筋の厚さは10セットグループのほうが有利だった!(10セット:+10.7%, 5セット:+5.6%)
- 二頭筋の厚さは5セットグループのほうが有利だった!(10セット:+0.9%, 5セット:+7.3%)
- 筋力向上は5セットグループのほうが大きく、その値はベンチプレス(10セット:+6.2%, 5セット:14.9%)、ラットプルダウン(10セット:+4.5%, 5セット:+15.1%)だった!
上腕三頭筋の筋肉量はセット数の多いグループのほうが有利だが、上腕二頭筋はセット数が少ないグループのほうに有利な結果となっている。
他の例としては、2019年の研究で上腕二頭筋をセット数の違いによってグループ分けした研究が行われている。(R)
セット数 | 9セット/週 | 18セット/週 | 27セット/週 |
---|---|---|---|
筋肥大率 | +4.3% | +9.3% | +5.4% |
この研究では真ん中の18セット/週グループが一番筋肥大しています。ちなみにサブ種目込みのセット数です
セット数が多すぎる、という事態に陥ってしまったワケ
今までの研究に比べて特段セット数が多いわけでもないのに、筋肥大に不利になってしまうのはなぜなのだろうか。
いくつか説があるので、代表的な2つを紹介します
説①週1でしか筋トレをしていないから筋肥大しなかった
2017年の研究で筋肥大がうまくいかなかった理由として挙げられているのが、この10セット法を調べた研究では”週1”しか筋トレをしていないこと。
2016年のメタ分析で「筋肥大を目的とするなら筋トレは週2回以上はやるべき」という結論が出ており、筋トレ界ではいわば常識になっている。(R)
2019年と2022年の「高セット数でも用量依存性が見つかった」という研究では、それぞれ週3と週2で鍛えており筋トレに最適な頻度を満たしている。
一方で2017年の研究は、週1しか鍛えておらず筋肥大に最適な頻度を満たしていない。
よって「筋トレに最適な頻度をこなしていないので2017年の研究はいまいち成果が出なかったのでは?」と主張する研究者もいるのだ。
確かに各筋群を週1でしか鍛えていないのは最適ではないかもしれませんが、セット数が多くても筋肥大しない理由になるか...?
説②急激にセット数を増やしすぎた
他の理由として挙げられるのが「急激にセット数を増やしすぎたこと」がある。
ここであらためて高セット数について調べた研究の被験者を比較してみよう。
研究 | 筋トレ歴 | ベンチプレス重量 | 筋肥大 |
---|---|---|---|
2019年 | 4.4年 | 93.8kg | 高>低 |
2022年 | 3.4年 | 98kg | 高>低 |
2017年 | 3.5年&4.8年 | 62kg | 低>高 |
2017年の被験者がベンチプレスが62kgなのに対して、2019年と2022年の被験者はベンチプレスが100kgに到達する勢いだとわかる。
2019年&2022年の研究における被験者はベンチプレスが平均100kgと猛者達ですね
2017年のトレーニー達は筋トレ経験はあるとは言え、ベンチプレスの平均重量から察するにそこまで多くのセット数をこなしていない。
そんな人たちに10セット法を導入すると、今までしていた筋トレよりもセット数が急激に増える。
この急激なセット数の増加こそが筋肥大を阻害する原因となった可能性があるのだ。
言われてみれば当たり前ですが、筋トレ経験者を対象にした研究では以前の筋トレ習慣があることを忘れてはいけません
筋トレ経験者はセット数を絶対値ではなく相対値で考える
「週22セットに増やす」よりも「セット数を20%増やす」のほうが筋肥大した
筋トレ経験者がセット数を決めるときは「今の筋トレからセット数がどれだけ増えたか?」の相対値で考える必要があります
筋トレ経験者にとって「〇〇セットが筋肥大にベスト!」という議論はあまり意味がない。「今の筋トレから何%セット数を増やすのか」が大事なのだ。
このことを具体的に示したのが2022年の「22セットの高セット vs 20%のセット数増加」を比較した研究。(R)
被験者となったのはトレーニー男性16人で、被験者は脚を2通りの方法で鍛えた。
- 週あたり22セットの筋トレを行うグループ
- 週あたりのセット数を今のセット数から20%増加させたグループ
片方のグループは22セットのレッグプレスを、もう一方のグループは今のセット数から20%増のセット数でレッグプレスをしました。
どちらの足も頻度は週2で筋トレを行い、8週間後に筋肉量を計測した。
まず左のグラフを見ると白バー(22セット)より灰色バー(セット数20%増)のほうが筋肥大している事がわかる。
右側の図は各個人における22セットvs20%増の筋肥大を比較したもの。
- 16人中10人が20%増のほうが筋肥大した
- 16人中2人が22セットのほうが筋肥大した
- 16人中4人がどちらの条件でも同じくらい筋肥大した
〇〇セットが最適なんだ!と絶対値で考えるより20%増のほうが筋肥大する確率が高そうですね
もしあなたが筋トレ経験者なら「その値は何セットにしようか?」と考えるより「今より20%セット数を増やそうかな?」と相対値で考えるほうがいい。
むしろ筋トレ経験者が考えるべきは「セット数を増やすべきかどうか」になるだろう。
- 今のセット数より20%増がベター
- むしろ悩むべきはそもそもセット数を増やすかどうか?
筋トレ経験者がセット数を増やすべきタイミング
それでは筋トレ経験者はどんなときにセット数を上げたらいいのだろうか。
簡単にいってしまえば筋トレで停滞期にぶち当たったときです
例えばベンチプレスを10回3セット行っている場合を考えてみよう。
20kgから始めたベンチプレスは経験を積むにつれて30kg→40kg→50kg→・・・と次第に重量が伸びていくだろう。
しかし、いつかベンチプレスの重量というのは停滞してしまう。
くそ!ベンチプレスが70kgから先になかなかいかない!
こんなときこそセット数を増やしてみましょう
「セット数を増やすべきか?」と迷ったときは、筋トレ研究者兼ボディビルダーのエリック・ヘルメスの著書に掲載されているフローチャートを使うのがオススメ。(R)
YESならステップ2に進む。NOならそのままのセット数で続ける
下記すべてにYESならステップ3に進む。NOならこれらを改善する
- 睡眠時間が8時間以上
- カロリーがマイナス収支じゃない
- タンパク質は1.6g/kg以上摂取している
- 筋トレを週2回以上している
- エクササイズを正しく行うことができる
下記すべてにYESならステップ4に進む。NOならセット数を減らして休養期間をとる
- 回復がしっかり取れていると感じる
- 睡眠の質がよい
- ジムに行くのが辛くない
- 重量が落ちていない
- 私生活でストレスが過剰じゃない
- 体の痛みなどはない
生活習慣もよくオーバートレーニングでもないのに停滞期。セット数を20%増やしてもよい
筋トレが停滞期に陥ったときは食事や睡眠などの要素を見直し、オーバートレーニングにもなっていないことを確認したらセット数を増やそう。
サブ種目含め週30セット以上でもやりすぎにならないとはいえ、それはベンチプレスが100kgに届くような人たちの話です
まだ筋トレをはじめて数ヶ月くらいであれば、週20セットですらやりすぎになる可能性が十分ある。
「セット数は多くないか?回復がしっかり取れているか?」をまず考え、回復もばっちりなのに完全に重量がが停滞した...そんなときにセット数を増やすのがいいだろう。
まとめ:実践と応用
最後に筋トレのセット数についての考え方をまとめよう。
- 筋トレ初心者はサブ種目含めて10セットからスタート
- 筋トレ経験者は停滞期に今のセット数から20%増がオススメ
- ベンチプレス60kgレベルなら20セットでやりすぎ、ベンチプレス100kgレベルなら上半身30セット・下半身45セットでもやりすぎにならない(かも)
筋トレのセット数に絶対の正解はありません。今のセット数も考慮して試行錯誤がオススメ
ちなみに筋トレのセット数は専門用語で”ボリューム”とも呼ばれる。ボリュームについて詳しく知りたい人は「筋トレのボリューム理論を徹底解説!理解のカギは定義を知ること」もチェックしてみてほしい。