ダイエッターなら一度は聞いたことがある言葉、チートデイ。
ダイエットを続けていると体が飢餓モードになって代謝が減る。
そこで一時的に爆食いすることで体に『食事がきた〜!』と思わせて騙そう(Cheat)というのがコンセプト。
そして、同じコンセプトの方法に”リフィード”と呼ばれるものがある。
こちらは爆食いするのではなく、2-3日にわたって維持カロリーにするというもの。
今回の記事はそんなチートデイやリフィードなどの”間欠的エネルギー制限(Intermittent Energy Restriction)”にまつわる記事。
これらのコンセプトで語られる戦略をまとめて理解してしまおうではないか。
一時的にカロリーを増やす”ダイエット・ピリオダイゼーション”
先ほども書いたように、これらの戦略に”間欠的エネルギー制限(Intermittent Energy Restriction)"などの呼び名がある。
しかし、今回はあえて2020年の論文で用いられている”ダイエット・ピリオダイゼーション”という言葉を使おう。(R)
ダイエットピリオダイゼーション:減量効果を最大化するために変数(摂取カロリー・栄養素)を操作すること
Brandon et al, 2020
いわば、非ピリオダイゼーション的なダイエット法とは”毎日ずっと20%のカロリー制限”みたいなもの。
一方で、ダイエット・ピリオダイゼーションとは”5日間は20%のカロリー制限をして土日は維持カロリー”や”1日おきに断食する”など、日によって摂取カロリーを操作する戦略を指す。
そして、ダイエット・ピリオダイゼーションの具体的な戦略は”摂取カロリー”と”実施期間”で3つに大別できる。(R)
- チートデイ/ミール :1日/1食だけ大量の食事を食べる
- リフィード :2-3日間にわたり、10~40%のオーバーカロリーにする
- ダイエットブレイク:1-2週間にわたり維持カロリーに戻す
まずは、最もよく知られているのがチートデイだろう。
これはダイエットをしたことがある人なら、誰もが一度は使ったことがあるはず。
そして、次がリフィードである。
これは期間をチートデイのように爆食いをしない代わりに、維持カロリーに戻す期間を長くとる。
そして最後がダイエットブレイクである。
1-2週間にわたって維持カロリーに戻すというものだが、実は2003年の研究で本当にたまたま発見されたもの。
比較的新しい概念なので一般にはあまり浸透していない。(この記事で紹介した研究が始まり)
何はともあれ、これらのコンセプトはすべて同じ。
一時的に摂取カロリーを増やして代謝を上げよう…そして、究極の目的は効率的に痩せることである。
まずは代表的なチートデイから見ていく…より先に『そもそもダイエットで代謝は下がるのか?』という話をしておこう。
現実のトレーニーでも代謝が下がることが判明
これまでの研究で”肥満の人がダイエットをすると代謝が下がる”ということは実証されており、ぶっちゃけ反論の余地がない。
その程度は92kcalだったり516kcalだったり研究によってマチマチだが(R,R)、代謝が下がる”代謝適応(metabolic adaptation)”が起きることはまず間違いない。(詳しくはこの記事を参照)
ただ、細かいことをいえば”筋トレ大好きなトレーニー”に対してはほとんど実証されていなかった。
仮に『代謝適応は肥満の人に特有の現象!我らのような高タンパク質を摂取して筋トレをガシガシやっている人には当てはまらないのだ!』と言われたら、ぶっちゃけ反論できる証拠はなかったのである。
まぁこれは過去形の話で、2020年の研究でついにトレーニーに関しても代謝適応が起きることが報告された。(R)
この研究では、20人の若者トレーニー(男性5人、女性15人)を対象にし2週間にわたり”-37.5%のカロリー不足"というやや激しめの減量をさせた。
被験者には今までの筋トレを継続しながら”2.2g/体重”の高タンパク質を摂取してもらった。
その結果、実験開始前には1602kcalだった安静時代謝率(Resting metabolic rate:RMR)が2週間のダイエットで1508kcalまで下がった。実に5.9%の代謝低下である。
研究者は以下のように結論している。
トレーニーにおいて、2週間にわたる37.5%のカロリー制限は有意な代謝低下を引き起こした。高タンパク質と筋トレは、これらの代謝適応を和らげることはできなかった。
Madelin et al, 2020
ダイエットによる代謝適応は見事にトレーニーでも起こることが証明されたという結果に。
筋トレと高タンパク質はどこまでも万能…ということではないらしい。
何はともあれ、大前提である代謝適応は起こる。
それでは、本題のチートデイは代謝を上げるのに有効な方法なのか?という話を検証していこう。
チートデイは代謝を上げる?
世間一般的にはよく使われるチートデイだが、実際に代謝適応を阻止するとした直接的な証拠は(おそらく)存在しない。
というのも、かなり初期の研究段階から『たぶん2日はオーバーカロリーにしないとダメ』ということがわかっていたからである。
この分野で代表的になっているのが、1998年と1995年に普通体型の女性を対象に行われた研究。(R,R)
これらの研究では、どちらも女性に1000kcal/日という激しいカロリー制限をしてもらった後、オーバーカロリーにしたもの。
その時間幅が、1998年の研究では24時間、1995年の研究では48時間だった。
つまるところ、先ほどの分類で言えば、1998年の研究はチートデイで、1995年の研究は”リフィード”に相当する。
この研究では、実験前後で”黄体ホルモンパルス(Luteinizing hormone pulsatility:LH脈動性)”を測定している。
簡単に説明しておくと、このLH脈動性を使って女性の月経不順や無月経を予測することができる。
そして「LH脈動性が乱される=月経不順や無月経になる」と予測されるのだが(詳しく知りたい方はこちらの日本語サイトなど参照)、どちらの研究でもまずカロリー制限によってLH拍動性が乱されることが確認されている。
その後、まず1998年の研究では4000kcalのオーバーカロリーを24hで摂取してもらった。
その後、再びLH拍動性を測定することでチートデイの効果を評価したのである。
しかし、1日アグレッシブに爆食いしてもLH拍動性は改善されなかった。
つまり、激しいダイエットによるホルモン変化はチートデイで改善されなかった。
一方で、1995年の研究ではカロリー制限でLH脈動性を乱した後、1日でアグレッシブに爆食いさせるのではなく、48時間にわたり維持カロリーを摂取してもらった。
すると、今度はLH拍動性がベースラインに向かって回復したのである。
これらを合わせて「1日でドカ食いするより2日間で維持カロリーに戻すほうがカロリー制限の悪影響を緩和できるな?」ということが20年以上も前から知られている。
そして、この「実施期間の長さが大切!」という概念は、今でも全く色褪せていない。2019年の論文から引用しよう。(R)
カロリー制限による代謝適応を逆転させるという意味では、現在あるエビデンスはエネルギー摂取量だけでなく、オーバーカロリーにする実施期間も重要であることを示している。
Jackson et al, 2019
つまるところ、期間が1日しかないチートデイは代謝適応への戦略として最も使えないのである。
しかし、チートデイには見過ごせないもう一つの効果がある。
それが心理的な効果である。
チートデイの心理効果は大きい
実践した人はよく分かるかもしれないが、チートデイのような”計画された失敗”はダイエットに絶大な効果を発揮する。
食欲が湧いてしまったときに『食べないようにしよう』と自制するのは相当に難しい。
しかし、『チートデイのときに食べよう!』と先延ばしにすることは簡単だからである。
このことは2016年の研究で示されており、週1回の計画された失敗日を作った人は、ぶっ続けでダイエットし続けるよりダイエットのモチベーションを高く保てたことが判明している。(R)
しかし、この心理的効果の恩恵は論文のタイトルにもあるとおり”定期的かつ計画的に失敗日”を作ることにある。
要は、欲求を先延ばしにできる期間があればいいのである。
ということで、これらの心理的効果はリフィードやダイエットブレイクでも得られる。
特段チートデイをする必要はない。(後述するが、リフィードもダイエットブレイクはリバウンド防止効果が実証されている)
ということで、チートデイはさておき、お次は代謝を戻す可能性が見出されたリフィードの話に移ろう。
リフィードをすると代謝適応を防げる!?
1995年の研究から、2日間にわたり維持カロリーに戻せばカロリー制限によるホルモンへの悪影響が緩和されることがわかった。
ということで「実際にリフィードで代謝を上がるの?」という話になる。
そして、このことで超有名なのが2000年のパドヴァ大学による研究だろう。(R)
この研究は健康な女性10人を対象にしたもので、3日間にわたり50%という激しいダイエットをしてもらった後、3日間にわたり+40%のリフィードを実施した。
このとき、糖質メインと脂質メインの2パターンでリフィードをしたのである。
- 糖質メイン:糖質64%, 脂質25%, タンパク質11%
- 脂質メイン:糖質35%, 脂質55%, タンパク質11%
その結果、代謝に関係するホルモンのレプチンと1日の総消費カロリーを測ったところ以下ような結果に。
- 糖質でリフィードしたときはレプチンレベルが28%上昇し、エネルギー消費量も7%上昇した!
- 脂質でリフィードしたときはレプチンも代謝量も変わらなかった!
どうやらレプチンは糖質によく反応するらしい。なので、糖質でリフィードすると代謝が戻ると判明したのである。
これ以来、リフィードといえば”糖質で維持カロリーに戻す”という方法がすっかり定着した。
リフィードの他の例としては、2014年の研究などがある。(R)
この研究では肥満の女性74人を対象に、2つのグループに分けた。
- ぶっ続けダイエット :6週間ずっとダイエットをする
- ”11日間ダイエット⇄3日間は自由に食う”のサイクルを6週間繰り返す

よく見ると、毎日のカロリー摂取量もリフィードのほうが低い。
さらに、3日間はカロリーをあげているので削っているカロリーはぶっ続けグループの方が明らかに多い。
そして、6週間のダイエット後に4週間のフォローアップを行い合計10週間に及ぶデータを集計したところ、以下のような結果に。
- 6週間後にはどちらも脂肪が減っていた!(リフィード:-6.28kg vs ぶっ続け:-5.39kg)
- さらにフォローアップも含む10週間後では、リフィードグループのほうがリバウンドしなかった!(リフィード:-5.41kg vs ぶっ続け:-3.21kg)
先ほども言ったがリフィードの方が明らかに頑張っていない。
しかし、どちらも同じくらい体重が減っている。
そして、その後のフォローアップを見るとリフィードをすることでリバウンドも防止されるという嬉しい特典付き。
そして、各グループの代謝変化が以下のようになる。

赤線で示されているリフィードをしたグループは、青線で示したぶっ続けグループより安静時代謝率の低下率が低いことがわかる。
つまるところ、リフィードを3日間にわたり行うことはメリットしかなかったのである。
しかし、これはあくまで肥満の人を対象にしたの話。普通体型かつ筋トレしているトレーニーには効果あるの?という話である。
トレーニーがリフィードをするとき、そこには”代謝を上げる”以上に重要な意味がある
ということで、そんな疑問にピッタリの論文が2020年に出された。(R)
この研究は『筋トレをしている人にリフィードは有効か?』を調べたもので、参加者となったのは普通体型のトレーニー男女27人。
この研究では、被験者を2つのグループに分けた。
- ぶっ続けダイエット(CR):毎日25%のカロリー制限を行う。
- 土日リフィード(RF) :平日は35%のカロリー制限を行い、土日は維持カロリーに戻す
実際の摂取カロリーがわかりやすい図になっている。

まず、どちらも1日平均25%のカロリー制限。
そして、タンパク質摂取量が”1.8g/体重”という現実のトレーニーにかなり近いものになっている。
そして、脂質はどちらのグループも"0.7g/体重”を摂取。あとは残りはすべて糖質に振り分けるというスタイル。
なので、リフィードグループのリフィード日はめちゃくちゃ糖質過多になる。
というよりは、糖質が代謝を刺激する作用が強いことがわかっているので、糖質でのリフィードを狙っているのである。
そして、上半身と下半身の筋トレを週2回ずつしてもらい、7週間後に安静時代謝率(RMR)と体組成を計測したところ以下のような結果に。
- どちらも同じくらい脂肪が落ちた!(リフィード:-2.8kg vs ぶっ続け:-2.3kg)
- リフィードグループは代謝の低下が少なかった!(リフィード:-38kcal vs ぶっ続け:-78kcal)
- リフィードグループのほうが筋肉が減少しなかった!(リフィード:-0.2kg vs ぶっ続け:-1.9kg)
どちらも落ちた脂肪量は同じだったが、リフィードグループのほうが代謝低下が起きず、筋肉が減少しなかったという結果に。
まず、代謝低下については『解析が間違っていて本当は有意差ないんじゃない?』みたいな議論がされていることは付け加えておく。(R)
ただ、正直なところ”代謝適応”に関しては横に置いておいても良くないだろうか。
だって、たかが40kcalしか変わらないし。
そんなことより、この研究で重要なのは筋肉量である。
なんと筋トレとリフィードで『ダイエットの筋肉分解作用が防げる』ことがわかったのである。
しかも、この研究で測定されているのは『水分を抜いた筋肉量(dry Fat Free Mass)』である。
つまるところ、水分による影響は除外されており、リフィードグループはちゃんと筋肉が維持されていたのである。
なぜこんなことが起きたのか?ぶっちゃけ、はっきりとした理由は不明である。
ただ、他の研究で「普通体型の人が20%のカロリー制限を10日間すると、タンパク質合成が19%減少しタンパク質分解が60%増加した」ことが報告されている。(R,R)
メカニズム的には、長期的なカロリー制限をリフィードによって最長5日間に分割することで筋肉分解が防止できた可能性がある。
しかし、これはあくまで説に過ぎない。
ちなみに、単に糖質でリフィードグループは筋トレのパフォーマンスが上がった可能性はある。
しかし、筆者は『でもトレーニングのボリュームはグループ間で同じだったんだよね』と言っている。
何はともあれ、『高タンパク質&筋トレ&リフィード』で筋肉の分解が防げることが発見されたのである。これはトレーニーには吉報である。
まだ発見されたばかりで研究が進んでいないので断定はできない。
しかし、リフィードはメリットこそあれデメリットはない。実践しない理由はないのである。
時間を伸ばすほどいいなら、もっと時間を伸ばしたらどうなるのか?すなわちダイエットブレイクである。
今一番アツい分野『ダイエットブレイク』
このマガジンでは何回か紹介しているが、ダイエットブレイクとは1-2週間にわたって維持カロリーに戻すというもの。
今回は少し視点を変え、ダイエットブレイクのおさらいをしつつ、最新の研究も紹介しよう。
ダイエットブレイクの始まりというのは、以前の記事でも紹介した2003年の研究である。(R)
実はこの研究、当初の予想とは真逆の結果が出た研究。
この研究では、肥満男女142人を3つのグループに分けた。
- 5ヶ月間ぶっ続けでダイエットするグループ
- 6週間の『一切ダイエットをしないフェイズ』を1回だけとったグループ
- 2週間の『一切ダイエットをしないフェイズ』を3回とったグループ
なぜこんな分け方をしたのか…それは研究者が「いわゆるダイエットブレイクなんて行ったら被験者はダイエットを台無しにする」という仮説を立てたから。
というのも、研究で被験者をダイエットさせても、実験が終われば結局みんなリバウンドしてしまう。
だから、研究者は「意図的にダイエットをしないフェイズを作ったら、そこで被験者はリバウンドするに違いない。
結果として、ダイエットはダメになるはず!」と考えたのである。
しかし、蓋を開けてみたら、全く真逆の結果が出てきた。
なんと、ダイエットブレイクを実施したグループのほうが体重が減少したのである。

この当時はダイエットブレイクなんて名前はつけられておらず、研究者も『意図的に被験者をリバウンドさせることはできなかったよ…』としょんぼりする始末。
そして、2005年にライル・マクドナルドという人物がこの現象にダイエットブレイクという名前をつけ、”フレキシブル・ダイエット”という本のなか紹介した。
そして、(そこそこ)広く知られるようになったダイエットブレイクだが、以前の記事でも紹介した2017年の研究でその威力が確認された。(R)
これは51人の肥満男性を2つのグループに分け、33%のカロリー制限をしてもらったもの。
- 16週間ぶっ続けでダイエットしたグループ
- ”2週間のダイエット⇄2週間のダイエットブレイク”を8回繰り返したグループ
ダイエットブレイクグループは、ダイエット期間こそ30週間もかかった。
しかし、その半分はダイエットしないというなかなか挑戦的な内容。
そして、その体重変化をまとめたものが以下の図である。

黒く塗りつぶされたダイエット期間を見ると、ダイエットブレイクを取り入れたグループはぶっ続けでダイエットをするより155%も多く脂肪を落としている。
そして、1年後のフォローアップで確認されたリバウンドを含めると、ダイエットブレイクをしたグループはぶっ続けに比べて8.1kgも脂肪を落としている。
ちなみに、ダイエットブレイクにはダイエット期間自体が倍増するという欠点がある。
なので、フィジークのような時間制限のあるダイエットには使いづらい。
しかし、一般人にとってダイエットにこれほどまでに強力な方法はなかなかないと。
仮に7.5ヶ月かかったとしても、むこう40年とか理想の体型でいられるなら安いものである。
何はともあれ、ダイエットブレイクは肥満の人に対して絶大な威力を発揮することがわかった。
となると、毎度おなじみになりつつあるがトレーニーに対してはどうなのか?という話になる。
2021年、ついにダイエットブレイクがトレーニーの世界へ
肥満治療の世界で生まれたダイエットブレイク。
しかし、ダイエットに効果があるとわかれば、アスリートやトレーニーを対象に研究しているスポーツ界も黙ってはいない。
ということで、2020-2021年にダイエットブレイクに関する研究がいくつか行われている。
まず紹介するのは、2020年に行われた研究。(R)
この研究では筋トレをしている男女38人を2つのグループに分けた。
- コントロール(CON) :25%のカロリー制限を6週間にわたって行う
- ダイエットブレイク(INT):25%のカロリー制限を2週間行うごとに1週間のダイエットブレイクを行う(合計8週間)
被験者には"1.8g/体重”のタンパク質を摂取してもらい、週3回の筋トレを行ってもらった。これまた現実のトレーニーにかなり近い設定。
そして、実験終了前後で体組成を計測したところ以下のような結果に。
- どちらのグループでも同じように体脂肪量が落ちた!(全被験者平均:-1.2kg)
- どちらのグループも筋肉量と安静時代謝率は落ちなかった!(全被験者平均:±0kg, +12kcal)
この短期間の研究では、ダイエット効果や代謝に目立った違いは見られず。しかし、この研究では一つ大事なことが報告されている。
それは『脱抑制(disinhibition)』のスコアがコントロールで上がったのに対して、ダイエットブレイクグループでは下がったのである。(CON:+0.66、INT:-0.85)
この脱抑制とは何かというと『ダイエットをしていたのに、それを忘れてついタカが外れたようにドカ食いしちゃった』みたいなのこと。
この脱抑制を防ぐことは、言わずもがな長期的なダイエットの成功に欠かせない。研究者も以下のように結論づけている。
長期的なダイエットによる脱抑制の影響を軽減し、ダイエットブレイクは長期的なダイエットのアドヒアランスを高める。
Madelin et al, 2020
ダイエットブレイクは肥満者ほど激烈な効果をトレーニーにもたらさなかったものの、心理的には大きな効果があることがわかったのである。
次に紹介するのが、2021年に出たこれまたトレーニーを対象にした『ダイエットブレイクは効果的か?』を調べた研究。(R)
この研究は筋トレをしているアスリート26人を対象にしたもので、被験者を2つのグループに分けた。
- ぶっ続けグループ(CER):12週間連続でダイエットしてから3週間の維持カロリー期間を取ったグループ
- ダイエットブレイク(IER):”3週間ごとに1週間のダイエットブレイク”のサイクルを3回繰り返すグループ
まず、減量ペースはどちらのグループも”週に体重×0.7%”とかなり理想的なもの。
そして、”2.3g/体重”のタンパク質摂取で総カロリーの20%を脂質から摂取してもらった。そして、残りはおなじみのように糖質にしてもらった。
つまり、この研究でもリフィードグループは糖質でリフィードしていたことになる。
理由は今までと同じで糖質が代謝を刺激するから。
アスリート系の研究はこういうところを突き詰めてやりがちなのである。
結果としては、まず15-16週間に及ぶ実験前後で、脂肪はどちらのグループも同じように減った。

○:ぶっ続け ●:ダイエットブレイク
次に、どちらのグループも同じように筋肉を維持した。そして、安静時代謝率もグループ間で差はなかった。

○:ぶっ続け ●:ダイエットブレイク

○:ぶっ続け ●:ダイエットブレイク
先ほどの研究と同じように、ダイエット効果に関しては特に目立った違いは見られなかった。
そして、これまた先ほどの研究と同じように、この研究でもダイエットブレイクを取ったグループのほうが空腹感が低く、食べたい欲求も強くなかったことが報告されている。
つまり、心理的な効果が大きかったのである。
どうやら、十分な痩せ型のトレーニーにはダイエットブレイクは肥満者で見られたほど激烈な効果をもたらさないらしいのである。
ただ、このダイエットブレイクはトレーニーに効果がないというより、研究が始まったばかりでまだわからないだけである。
ダイエットの終わりの期間が決まっている!という人でなければ、十分に取り入れる価値はあるのである。
まとめ
リフィードやダイエットブレイクに関して見てきたが、これらに関して言えることはただ一つ。
リフィードやダイエットブレイクに過剰な期待はできない。
しかし、ダイエットに取り入れるデメリットは特に無いんだからやればいい!
そして、お気づきかもしれないがリフィードやダイエットブレイクは相反するものではない。
どちらもダイエットに取り入れればいいのである。
例えば、週2回ほどリフィードで維持カロリーに戻しつつ、2~6週間ごとに1-2週間のダイエットブレイクを入れる…と言ったようにすればいいのである。
ちなみに個人的には土日はリフィードを入れて、4週間ごとに2週間のダイエットブレイクがおすすめ。
ビックリするくらいダイエットに努力している感がなくなりこれでいいのかと思うレベルだが、しっかり痩せるので安心してほしい。
そして「リフィードもダイエットブレイクも心理的な効果が大きいので無理に糖質を摂取することにこだわらなくて良い」というのが私見である。
特にフレキシブルダイエットとの組み合わせは鬼に金棒、ついドカ食いして脱抑制!となることはグッと減ること間違いなし。
リフィードとダイエットブレイクはこれからもどんどん発展していくだろう分野、また新しい情報が入り次第シェアしていくつもりである。是非お試しあれ!