筋トレ初心者がリコンプするのに最適なカロリーが論文で判明

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「筋肉をつけながら脂肪を落とす」

これはフィットネスの世界では”リコンプ”と呼ばれるが、ダイエットしている人にとってはこれ以上ない願いだろう。

このリコンプについては、以下のような人が実現しやすいとされている。(R)

・筋トレ初心者
・肥満の人

筋トレに反応しやすい筋トレ初心者や、脂肪が余っていて減らしやすい肥満者はリコンプがしやすい。

しかし、いくらリコンプしやすいとは言っても、ただ闇雲に筋トレとダイエットをしていてもリコンプはできない。

今回は、論文から「筋トレ初心者がリコンプするために最適なカロリー」をご紹介。

(筋トレ経験者のリコンプは以下を参考)

実は1日あたり250kcalのカロリー制限なら、筋肉を増やしながら脂肪を落とせるのだ。

目次

そもそもなぜカロリー過剰でなければ筋肥大しないと思われているのか?

そもそも、なぜカロリー過剰でないと筋肥大しないと思われているのだろうか?

一昔前は「体を大きくしたかったらとにかくたくさん食べろ!」と言われていたが、それは本当なのだろうか?

実際に筋トレ界隈では増量期と減量期を作ることが一般的になっている。

この理由は、カロリー過剰なら筋トレ無しでも筋肥大が引き起こされるという事実に基づいている。

例えば1990年の研究では、毎日1000kcalのカロリー過剰を100日間続けたところ、筋トレ無しで筋肉が2.7kg増えたと報告されている。(もちろん脂肪も増えており、その値は+5.4kg。)(R)

筋トレ自身にも筋肥大効果があるので、これらを組み合わせた”筋トレ&カロリー過剰”が一番筋肥大すると思われている。

研究者の中には「カロリー過多が筋トレの肥大効果を上げるかは分からない!」と主張している人もいるが、カロリー過多と筋トレを組み合わせるのがフィットネス業界では一般的になっているのだ。

カロリー過剰にすればするほど筋肥大するが・・・

それでは、実際にカロリー過剰にすればするほど筋肥大するのだろうか?

ということで、まずは2019年のボディビルダーを対象にした研究を紹介しよう。(R)

この研究はボディビルダー11人を対象にしたもので、大幅なカロリー過剰と控えめなカロリー過剰に分けた。

2019年の研究における摂取カロリーと3大栄養素
2019年の研究における摂取カロリーと3大栄養素

カロリー量は、大幅なカロリー過多が6087kcalとかなり多め。

控えめなカロリー過多も4501kcalと多めのカロリー過剰だが、もう一方のグループとは1500kcalも差がある。

PFCバランスはタンパク質はどちらも同じくらいの量を摂取しており、炭水化物量だけ大きく異なっている。

つまるところ、両グループのカロリーの違いは炭水化物からもたらされている。

筋トレは”プッシュ・プル・レッグス”の3分割で、各部位週2回ずつ行っているので合計週6回のトレーニング。

1ヵ月後に筋肉量と脂肪量を測定したところ、以下のような結果に。

筋肉量(左)と脂肪量(右)も変化
筋肉量(左)と脂肪量(右)も変化

まず大幅なカロリー過多にしたグループは、筋肉量も+2.7kgと大きく増えているが、脂肪も+7.4kgと大幅に増加。

一方で、控えめなカロリー過多グループは筋肉量が+1.1kgとやや控えめな増加。

脂肪に至ってはたったの+0.8kgと、ベースラインから(統計的には)増えていないという結果に。

カロリーを過剰にすればするほど筋肉は確かに増えるが、それ以上に脂肪が増えてしまうのだ。

ここで「少しでも筋肉をつけられる少しでもカロリーを摂取したほうがいいのでは?」と思うかもしれない。

しかし、実は控えめなカロリー制限グループにはそれを上回るメリットがある。

それは、”脂肪を減らす減量期がいらない”ということ。

筋肉の増加が遅いとはいえ、筋肉を増やすことが難しい”本格的な”減量期を挟む必要がない。

なので、長期的に見たら少しずつしか筋肉は増えなくても脂肪はつけないほうがいい。

そして何より、増量期に脂肪がつきすぎて一時的にでもだらしない体になるのは嫌な人が多いだろう。

一年中引き締まったカッコイイ体でいられるメリットも考えると、控えめなカロリー制限で筋肉をつけるのがいいだろう。

アスリートも脂肪を増やさず筋肉を増やした

先ほどの研究だが、実は実践に応用するにはいくつか問題点がある。

  • 被験者の維持カロリーがわからない
  • 筋肉量がDXAやMRIなどの高性能機械で測定されていない

まず被験者が何kcalのプラスで食べていたかがわからないので、実生活に使うにも応用が効かない。

例えば維持カロリーが1900kcalの女性と3000kcalの男性がいたとして、どちいらも4500kcalを食べるというのは少々乱暴だろう。

また、筋肉量が高精度のDXAやMRIなどを使っていないという弱点もある。

ということで、もう少し厳密に行われた研究を紹介しよう。

これは2013年のノルウェー大学による「栄養士による食事指導は効果があるのか?」を調べた研究。

今回のテーマとは関係なさそうに見えて、実は「カロリー過剰のほうが筋肥大するのか?」を知るためにぴったりの研究となっている。(R)

被験者となったのは筋肉増強を目指すアスリート39人。

種目はサッカーやバレーボール、アイスホッケーと多岐にわたり、栄養指導の有無で2つのグループに分けられた。

1.栄養士に指導してもらったグループ
2.自己流で筋肉増強を目指したグループ

どちらのグループにも10週間にわたり「週あたり0.7%」の体重増加を目指してもらった。

この実験では、栄養士がついたグループは約500kcalのカロリー過多となり、自己流グループは維持カロリーを摂取している。

2013年の研究における摂取カロリーと3大栄養素
2013年の研究における摂取カロリーと3大栄養素

カロリー過多グループはタンパク質が2.4g/体重と少し多いが、維持カロリーグループも1.7g/体重と十分なタンパク質を摂取している。

炭水化物や脂質の栄養バランスはどちらのグループも同じくらい。

筋トレに関しては筋肥大&筋力UPに特化した内容で、”上半身・下半身”の分割法で各部位を週2回鍛えるというもの。

  • 下半身:スクワット・クリーン・ハックスクワット・デッドリフト
  • 上半身:ベンチプレス・ベンチプル・ローイング・チンニング・ショルダープレス・コアエクササイズ

これらの筋トレをしてもらい、10週間後にDXAで体組成を測定したところ、結果は以下のようになった。

2013年の研究における体重(左)、筋肉量(中央)、脂肪量(右)の変化
(NCG=カロリー過多、ALG=維持カロリー)
2013年の研究における体重(左)、筋肉量(中央)、脂肪量(右)の変化
(NCG=カロリー過多、ALG=維持カロリー)

約500kcalのカロリー過多グループは筋肉が1.7kg増えているが、脂肪も+1.1kgとベースラインと比べて増加。

一方で、維持カロリーグループは筋肉が+1.2kgと増えたものの、脂肪は増えなかった(+0.2kg)。

つまり、維持カロリーで筋トレをしたところ、+500kcalのカロリー過剰と同じくらい筋肉が増えたのだ。

しかも、この研究の被験者はアスリートなので、肥満ではない。

ボディビルダーではないので筋肥大目的の筋トレは初めてかもしれないが、肥満ではなくてもリコンプはできるのだ。

「どれくらいのカロリー制限なら筋肥大に影響がないか?」問題

それでは、リコンプはどのように行えばいいのだろうか?

リコンプしようというときに問題となってくるのが、カロリー設定である。

  • カロリーを減らしすぎると、筋肥大が阻害される
  • カロリーを減らさないと、脂肪が落とせない

カロリーは減らしすぎれば筋肉が増えないし、カロリーを増やしすぎても脂肪が落ちない。

それではどれくらいが最適なカロリーなのだろうか?

ということで次に紹介するのが、2021年に行われた”カロリー不足は筋肥大を邪魔するか?”を調べたメタ分析。(R)

筋トレとカロリー制限を組み合わせた研究52件を抜き出したもので、主な結果は以下の通り。

  • カロリー不足であればあるほど筋肥大効果は邪魔され、-500kcal/日のカロリー制限で筋トレの筋肥大効果は完全に消滅した
  • カロリー不足で筋肥大は阻害されるが、筋力向上は阻害されなかった。

このメタ分析で抜き出された個別の研究結果をプロットしたのが以下になる。

(A)カロリー制限時の筋肉変化(B)カロリー制限時の筋力変化(C)カロリー制限していない時の筋肉変化(D)カロリー制限をしていない時の筋力変化
(A)カロリー制限時の筋肉変化(B)カロリー制限時の筋力変化
(C)カロリー制限していない時の筋肉変化(D)カロリー制限をしていない時の筋力変化

左上(A)を見ると、”筋トレ&カロリー制限”の条件ではほとんどの研究で筋肉が減少している。

一方で、右上(C)を見ると、同じ”筋トレ&カロリー制限”の条件でも筋力向上効果はほとんど阻害されていない。

そして、カロリー制限をせずに筋トレをしたグループは筋肉量(B)も筋力(D)も増えていることがわかる。

さらに、この研究では脂肪1kgを落とすのに9441kcalのカロリー不足が必要だと仮定し、実際のカロリー不足と筋肥大効果の関係も図示されている。

カロリー減少量に対する筋肉量の変化
カロリー減少量に対する筋肉量の変化

縦軸が筋肉の増加量、横軸がカロリーマイナス量なのだが、カロリー制限が大きくなるほど筋肉が減少しているのがわかる。

そして、カロリー制限と筋肉増加量を直線で近似したとき、筋肉が減少に転じるのは約500kcal。

つまり、500kcalのカロリー制限で筋肥大効果は消失するのだ。

ここで、250kcalを境目として一つ一つの研究をもう少し詳しくみてみよう。

250kcal以下のカロリー制限では筋肉の増加が多く見られている一方で、250kcal以上のカロリー制限ではほとんどの研究で筋肉が減少してしまっている。

つまり、筋肉を減らさないためには”~250kcal/日”までのカロリー制限が限界となる。

脂肪を減らすためにカロリーを減らすにしても、リコンプを狙うなら250kcal以上のカロリー制限はしないほうがいいだろう。

ちなみに、ここで注意点が2つある。

1つ目は、タンパク質が十分に摂取されているかは不明なこと。

十分なタンパク質はトレーニングと並んで重要な要素。

実際に”2.4g/体重”という高タンパク質では、-40%のカロリー制限でも脂肪が減って筋肉が増えたという研究がある。

250kcal以下にカロリー制限を抑えつつも、”2.0g/体重”を目安に十分なタンパク質を取ることも忘れてはならない。

そして2つ目が、個々の研究を見てみると被験者は筋トレ未経験者が多いことである。

筋トレの経験が浅いならこのメタ分析で導き出された-250kcalまでというのは有用だが、筋トレ経験者には別のガイドラインが必要になるだろう。

まとめ

今回はリコンプについてまとめた。

筋トレ初心者がリコンプを目指すなら、”250kcal/日”程度のカロリー制限で筋トレをしていくのがいいだろう。

「そもそも自分の維持カロリーがわからない!」という人は、以下の記事を参考にしてほしい。

また、筋トレ経験者の人には以下の記事にリコンプ法をまとめているので、こちらも参考にしてみてほしい。

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