ボディメイク

筋トレ初心者のリコンプを可能にする最適カロリーが論文で判明

フィットネスの世界では”リコンプ”という言葉がある。

英語でいうところの”Recomposition(リコンポジション)”で、日本語で「再構成」の意味。

具体的には「脂肪を減らして筋肉をつけようぜ!」というもので、ダイエットをしている人にとってこれ以上ない願い。

このリコンプについては、特に以下のような人で実現しやすいとされている。(R)

・筋トレ未経験者
・肥満

筋トレに反応しやすい未経験者や余りあるエネルギーを持つ肥満者はリコンプがしやすい。

とはいえ、筋トレ中級者も不可能とは言い切れないし、むしろ増量期と減量期を作る必要ないのでは?と思える研究も多くある。

ということで、今回のシリーズはリコンプを目指そう!というお話。

ちなみに今回は解釈を少し拡張して、”脂肪を増やさず筋肉を増やす”もリコンプに含めることにする。

大幅なカロリー増加は脂肪ばかり増える

一昔前は「体を大きくしたかったらとにかくたくさん食べろ!」と言われていた。

実際に筋トレ界隈では増量期と減量期を作ることが一般的になっている。

というのも、(意外と知られていない気がするが)カロリー過多はトレーニングなしでも筋肥大を引き起こすことが知られている。

実際に毎日1000kcalのカロリー余剰を100日間続けたところ、トレーニングなしで筋肉が2.7kg増えたという研究がある。(もちろん脂肪も増えてその値は+5.4kgだった)(R)

言うまでもなく筋トレにも筋肥大効果があるので、これらを合わせた”筋トレ&カロリー過多”は有利になると考えるのは必然。

とはいえ、このことに関しては未だ決定的ではおらず研究者の中には「カロリー過多が筋トレの肥大効果を上げるかは分からなくね?」と言う人もいるほど。(R)

こんなときは実際にヒトの研究を見たほうが早い!と言うことで、2019年のボディビルダーを対象にした研究を見てみよう。(R)

この研究ではボディビルダー11人を大幅なカロリー過多と控えめなカロリー過多に分けた。

タンパク質はどちらも十分な量を摂取しており、カロリーと炭水化物だけ大幅に違っている。

筋トレは”プッシュ・プル・レッグス”の3分割で、各部位週2回ずつで合計週6回のトレーニング。

筋量増加を目指しているので、トレーニングの進捗に合わせてもちろん重さもどんどん増やしている。

1ヵ月後に筋肉量と脂肪量を測定したところ、以下のような結果に。

大幅にカロリー過多にしたグループは筋肉量も+2.7kgと増えているが、脂肪も7.4kgと大幅に増加。

一方で、控えめなカロリー過多グループは筋肉量が+1.1kgとベースラインに比べて有意に増加し、脂肪はたったの+0.8kgとベースラインから統計的には増えないという結果に。

大幅なカロリー過多ではそのエネルギーのほとんどが脂肪として貯蔵されるとうい結果に。

ここで「少しでも筋肉をつけられる大幅なカロリー摂取のほうがいいのでは?」と思うかもしれない。

この意見に関しては完全に却下する感じで。

というのも”脂肪を付けなければ減量期がいらない”という大事なポイントを見落としている。

短期的に見たら筋肉の増加が遅いとはいえ、筋肉を分解する減量期を挟む必要がないので長期的に見たら大幅なカロリー過多はデメリットしかない。

そして何よりのメリットは増量期に脂肪がつきすぎてだらしない体にならないこと。一年中引き締まったカッコイイ体でいられるほうがいいに決まっている。

この研究の弱点としては、被験者のベースラインのカロリーがわからないこと。

あとは、筋肉量を測るときに体重や身長などから計算する推測式を使っていること。

不正確だというわけではないが、一般的に用いられるDXAやMRIに比べたら精度は劣る。

アスリートも脂肪を増やさず筋肉を増やした

ということでもう少し厳密な研究を見てみよう。

紹介するのは2013年のノルウェー大学による「栄養士による食事指導は効果があるのか?」を調べた研究なのだが、意図せず今回のテーマにぴったりの研究となっている。(R)

被験者となったのは筋肉増強を目指すアスリート39人。サッカーやバレーボール、アイスホッケーと種目は多岐にわたり、栄養指導の有無で2つのグループに分けられた。

1.栄養士に指導してもらったグループ
2.自己流で筋肉増強を目指したグループ

どちらのグループにも10週間にわたり「週あたり0.7%」の体重増加を目指してもらったのだが、栄養士がついたグループは約500kcalのカロリー過多となった。一方で、自己流のグループはおよそ維持カロリーを摂取した。

カロリー過多グループはタンパク質が2.4g/体重と少し多いが、維持カロリーグループも1.7g/体重と十分なタンパク質を摂取している。全体的な栄養バランスは同じくらい。

筋トレに関しては筋肥大&筋力UPに特化した内容で、”上半身・下半身”の分割法で各部位を週2回鍛えるというもの。

  • 下半身:スクワット・クリーン・ハックスクワット・デッドリフト
  • 上半身:ベンチプレス・ベンチプル・ローイング・チンニング・ショルダープレス・コアエクササイズ

負荷の増加もちゃんと行われており、だいたい10RMを狙い達成したら2.5kgずつ重りを増やしていくオーソドックスなもの。

10週間後にDXAで体組成を測定したところ、結果は以下のようになった。
(NCG=カロリー過多、ALG=維持カロリー)

約500kcalのカロリー過多グループは筋肉が1.7kg増えているが、脂肪も+1.1kgとベースラインと比べて増加。

一方で、維持カロリーグループは脂肪は+0.2kg増えなかった。

さらには、筋肉の増加量もカロリー過多グループとほぼ同じの+1.2kgとなっている。

つまり、維持カロリーで筋肉増強を目指したところ脂肪は増えず見事に筋肉だけ増えた。

しかも、この研究の被験者はアスリートなので肥満なわけもなく筋トレ経験もあり。

にも関わらずカロリー過多にせずとも筋肉をつけることは十分に可能だった。

「どれくらいのカロリー制限なら筋肥大に影響がないか?」問題

それではリコンプしようというときに問題となってくるのが”カロリー設定”である。

これはもちろん筋トレ経験と体型によって変わってくる。

筋トレ経験が浅い人や肥満の人にとって参考になるのが2021年の10月に出たばかりの”カロリー不足は筋肥大を邪魔するか?”を調べたメタ分析。(R)

筋トレとカロリー制限を組み合わせた研究52件を抜き出したもので、大まかな結果としては以下の通り。

  • カロリー不足であればあるほど筋肥大効果は邪魔され、-500kcal/日のカロリー制限で筋トレの筋肥大効果は完全に消滅すると推測された
  • カロリー不足でも筋力向上効果は阻害されなかった。

抜き出された個別の研究結果をプロットしたのが以下。

”筋トレ&カロリー制限”はほとんどの研究で筋肉が減少しているが(A)、筋力向上効果はほとんど阻害されていない(C)。

一方で、カロリー制限をしていないグループは筋肉量(B)も筋力(D)も増えていることがわかる。

さらに、この研究では脂肪1kgを落とすのに9441kcalのカロリー不足が必要だと仮定し、実際のカロリー不足と筋肥大効果の関係を図示。

カロリー制限が大きくなるほど筋肉が減少しているのが一目瞭然。

カロリー制限と筋肉増加量を直線で近似したとき、筋肉が減少に転じるのは約500kcalとなっている。

しかし、一つ一つの研究に注目してみると少し違った解釈になる。

250kcal以下のカロリー制限では筋肉の増加が多く見られている一方で、250kcal以上のカロリー制限ではほとんどの研究で筋肉が減少してしまっている。

つまり、筋肉を減らすリスクを最小限に抑えて脂肪を落とすには”~250kcal/日”くらいのカロリー制限が理想となる。

ここで注意点が2つある。

1つ目は、タンパク質が十分に摂取されているかは不明なこと。

十分なタンパク質はトレーニングと並んで重要な要素。

実際に”2.4g/体重”という高タンパク質では、-40%のカロリー制限でも脂肪が減って筋肉が増えたという研究がある。

250kcalにカロリー制限を抑えつつ、”2.0g/体重”を目安に十分なタンパク質を取ることも忘れてはならない。

2つ目は、個々の研究を見てみると被験者は老人・肥満・筋トレ未経験者などが多いことである。

肥満で筋トレの経験が浅いならこのガイドラインでいいが、筋トレ中級者である程度痩せている場合は別のガイドラインが必要になる。

まとめ

筋トレ初心者が安全にリコンプを目指すなら”250kcal/日”程度のカロリー制限で地道に削っていくのが良いといえそう。

次回は筋トレ上級者のリコンプについて。それではまた後日!

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