脂肪も落としながら筋肉をつけたい!
いわゆるリコンプと呼ばれる最強のダイエットですが、正しくやれば十分に可能です
このリコンプについてだが、実現しやすいとされている人たちがいる。(R)
- これから筋トレを始める人
- 肥満体型の人
筋トレによって新しく筋肉がつきやすい筋トレ未経験者や、脂肪がたくさんある肥満の人はリコンプしやすいと言われています
しかし、いくらリコンプしやすいとは言ってもただ闇雲に筋トレとダイエットをしていても達成するのは難しい。
今回は論文から「筋トレ初心者がリコンプするために最適なカロリー」を紹介。
- オーバーカロリーでないと筋肥大しないというのは根拠がない
- カロリー制限が厳しくなるほど筋肥大はしづらくなるが、維持カロリーやマイナスカロリーでも筋肥大することができる
- 筋トレ初心者は一日250kcal以下のカロリー制限であればリコンプできる可能性が高い
実は研究によって筋トレ初心者は-250kcal以下のカロリー制限をしながら筋トレをするとリコンプできる可能性が高いことがわかっています
筋トレ経験者のリコンプに関しては「筋トレ上級者のためのリコンプ完全ガイド【不可能だと諦めてない?】」をご覧ください。
「オーバーカロリーではないと筋肥大しない」には何の根拠もない
リコンプなんて本当にできるの?カロリー過剰じゃないのに筋肉が増えるなんて嘘くさい...
逆になぜカロリー過剰でないと筋肥大できないと思っているんですか?そういうデータでもあるんですか?
一昔前は「体を大きくしたかったらとにかくたくさん食べろ!」とも言われていたが、本当にたくさん食べればそれだけ筋肥大するのだろうか。
昔のボディビルダーは減量期と増量期に分けてトレーニングに励んでいたが、これはデータによって裏付けされた合理的な方法なのだろうか。
これらは”カロリー過剰→筋肉が増える”という結果に基づいています
研究によって、カロリー過剰なら筋トレ無しでも筋肥大が引き起こされることがわかっている。
毎日1000kcalのカロリー過剰を100日間続けたところ、筋トレ無しで筋肉が2.7kg増えた。(もちろん脂肪も増加し、その値は+5.4kgだった)
筋トレなんかしなくても、オーバーカロリーで体重が増えれば自然と筋肉(と脂肪)が増えます
そして筋トレをすることにも筋肥大効果があるので、これらを組み合わせた”筋トレ×カロリー過剰”が一番筋肥大すると思われている。
とはいえ”筋トレ×カロリー過剰”が”筋トレ×維持カロリー(またはマイナスカロリー)”よりも筋肥大するというのはあくまで予想であって、事実ではない。
実際に研究者の中には「カロリー過多が筋トレの筋肥大効果を上げるかは分からない!」と主張している人がいまだにいます
筋肉を大きくしたい場合は”カロリー過剰×筋トレ”を組み合わせるのがフィットネス業界では一般的になっているが、確固たる証拠に裏付けられた合理的な方法というわけではないのである。
「カロリー過多→筋肥大」というのは事実ですが、カロリー過多でないと筋肥大しないというのは事実ではありません
カロリーを過剰摂取するほど筋肥大するがそれ以上に脂肪が増える
とはいえカロリー過剰にすればするほど筋肉も大きくなるのは事実です
カロリー過剰にすればするほど筋肉が大きくなる例として、2019年のボディビルダーを対象にした研究を紹介しよう。(R)
この研究はボディビルダー11人を対象にしたもので、大幅なカロリー過剰と控えめなカロリー過剰の2グループに分けた。
①大幅なカロリー過剰 | ②控えめなカロリー過剰 | |
---|---|---|
摂取カロリー(kcal) | 6087 | 4501 |
タンパク質(g/体重) | 1.8 | 2.0 |
炭水化物(g/体重) | 12.9 | 8.0 |
脂質(g/体重) | 0.93 | 1.06 |
カロリー量は、大幅なカロリー過多が6087kcalとかなり多め。
もう一方のグループも4501kcalと結構なカロリー過剰ですが、もう一方のグループとは1500kcalも差があります
PFCバランスはタンパク質・脂質がどちらのグループも同じくらいの量で、炭水化物の量のみが大きく違う。
筋トレは”プッシュ・プル・レッグス”の3分割で各部位週2回ずつ行ってもらう計週6回のトレーニング。
この条件で1ヵ月間過ごしてもらい、10件前後で筋肉量と脂肪量を測定した。
大幅なカロリー過剰にしたグループは、筋肉量も+2.7kgと大きく増えているが脂肪も+7.4kgと大幅に増加。
大幅なオーバーカロリーでたしかに筋肉が増えていますが、それ以上にすさまじい勢いで脂肪が増えています
一方で、控えめなカロリー過多グループは筋肉量が+1.1kgとやや控えめな増加。
脂肪に至ってはたったの+0.8kgと、実験開始前から太らなかったのだ。
ほどよいカロリー過剰によって、脂肪を増やさず筋肉だけ増やすことができたのです
筋肉を1kg増やすのは超大変。それなら脂肪が増えようとも筋肉がガッツリ増えるほうがいいのでは?
そう思う気持ちもわからなくはないですが、ほどよいカロリー制限には”減量期がいらない”という最強のメリットがあります
短期的にみたらカロリー過剰にするほど筋肉がつくが、長期的に見ると筋肉が分解されやすい減量期が不要なほどよいカロリー制限のほうが無駄な脂肪もつかずメリットが大きい。
何より増量期に脂肪がつきすぎて、一時的とはいえ”だらしない体”になるのは嫌な人も多いはず
一年中引き締まったカッコイイ体でいられることも考えると、控えめなカロリー制限で筋肉をつけるほうが合理的ではないだろうか。
維持カロリーでも脂肪を増やさず筋肉だけを増やすことができる
カロリー過剰よりもう少しきつい条件...維持カロリーでも筋肉を増やすことができます
ほどよいカロリー過剰ではなく、維持カロリーでも筋肥大することができたと報告した研究もある。
具体的には2013年のノルウェー大学による「栄養士による食事指導は効果があるのか?」を調べた研究になる。(R)
この研究は「栄養士による指導の有無は効果的なのか」を調べた研究ですが、はからずも今回の話題にピッタリな研究になっています
被験者となったのは筋肉増強を目指すアスリート39人。
競技種目はサッカーやバレーボール、アイスホッケーと多岐にわたり、栄養指導の有無で2つのグループに分けられた。
- 栄養士に指導してもらったグループ
- 栄養士の指導ナシで筋肉増強を目指したグループ
どちらのグループも「週あたり0.7%の体重増加」を目標に10週間過ごしてもらった。
実際に各グループの摂取していたカロリーと栄養素も記されている。
栄養指導あり | 栄養指導なし | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
ベースライン | 実験中 | 差異 | ベースライン | 実験中 | 差異 | |
摂取カロリー(kcal) | 3041 | 3585 | +544 | 3032 | 2964 | -68 |
タンパク質(g/体重) | 1.8 | 2.4 | +0.6 | 1.7 | 1.7 | 0 |
炭水化物(g/体重) | 5.4 | 6.8 | +1.4 | 5.4 | 4.5 | -0.9 |
脂質(g/体重) | 30 | 25 | -5 | 30 | 34 | -4 |
栄養士の指導ありグループは約500kcalのカロリー過多、自己流グループは維持カロリーの摂取になっています
炭水化物・脂質の摂取量はどちらのグループも同じくらいで、タンパク質の摂取量には差があるがどちらのグループも十分な量のタンパク質を摂取している。
筋トレに関しては筋肥大&筋力UPに特化した内容で、”上半身・下半身”の分割法で各部位を週2回鍛えるというもの。
- 下半身:スクワット・クリーン・ハックスクワット・デッドリフト
- 上半身:ベンチプレス・ベンチプル・ローイング・チンニング・ショルダープレス・コアエクササイズ
これらの条件で過ごしてもらい、10週間後にDXAで体組成を測定した。
約500kcalのカロリー過多グループは筋肉が1.7kg増えているが、脂肪も+1.1kgとベースラインと比べて増加。
一方で維持カロリーグループは筋肉が+1.2kgと増量に成功しましたが、脂肪は増えませんでした(+0.2kg)
つまり”維持カロリー×筋トレ”の組み合わせで、脂肪を増やさずにカロリー過剰グループと同じくらい筋肉を増やすことに成功した。
しかもこの研究の被験者は肥満者ではなく普通体型のアスリートです
必ずしも筋トレをしたことがあるとは限らないので筋トレ未経験者だった可能性はあるが、肥満者ではなくとも維持カロリーで筋肉を増やすことができたのだ。
本題である”カロリー制限×筋肥大”は可能なのか?
維持カロリーでも脂肪を増やさず筋肉を増やせる。それではマイナスカロリーで筋肥大はどうでしょうか?
この疑問を解消するのにピッタリなのが2021年に行われた「カロリー不足は筋肥大を邪魔するか?」を調べたメタ分析。(R)
筋トレ×カロリー制限を組み合わせた研究52件を抜き出したもので、主な結果は以下の通り。
- カロリー不足であればあるほど筋肥大効果は邪魔された!
- -500kcal/日のカロリー制限で筋トレの筋肥大効果は完全に消滅した
- カロリー不足によって筋力向上は阻害されなかった
カロリー制限をするほど筋肥大効果は減少する傾向にあり、-500kcalのカロリー制限で完全に消失しました
このメタ分析で抜き出された個別の研究結果をプロットしたのが下記のグラフ。
左上(A)の”筋トレ×カロリー制限”条件下ではほとんどの研究で筋肉が減少している。
一方で同じ”筋トレ&カロリー制限”条件下(右上C)でも筋力向上効果はほとんど阻害されていない。
”カロリー制限×筋トレ”条件下では筋肉量(B)も筋力(D)も増えています
この研究では脂肪1kgを落とすのに9441kcalのカロリー不足が必要だと仮定したうえで、実際のカロリー不足と筋肥大効果の関係も図示されている。
縦軸が筋肉の増加量、横軸がカロリーマイナス量なのだが、カロリー制限が大きくなるほど筋肉が減少している。
そしてカロリー制限と筋肉増加量を直線で近似したとき、筋肉が減少に転じるのが500kcal。
とはいえこれは直線近似した場合の話。250kcalを境目に個々の研究をみると別のことがわかります
250kcal以下のカロリー制限では筋肉が増加している研究が多く見られている一方で、250kcal以上のカロリー制限ではほとんどの研究で筋肉が減少している。
リコンプを目指すなら”-250kcal/日”以下のカロリー制限をすると筋肉を増やせる可能性が高いです
ちなみに、ここで注意点が2つある。
注意点①:十分なタンパク質を摂取していた場合は250kcal以上のオーバーカロリーでもリコンプできる可能性がある
このメタ分析では被験者が十分な量のタンパク質を接種していたかどうかは不明です
十分なタンパク質はトレーニングと並んで重要な要素。
実際に”2.4g/体重”という高タンパク質では、-40%のカロリー制限でも脂肪が減って筋肉が増えたという研究がある。
250kcal以下にカロリー制限を抑えつつも”2.0g/体重”を目安に十分なタンパク質を取ることもちろんのこと、高タンパク質の条件下では250kcal以上のカロリー制限でもリコンプができる可能性がある。
注意点②
個々の研究を見てみると、被験者は筋トレ未経験者ばかりです
筋トレ初心者であれば、このメタ分析で導き出された-250kcalまでを目安にすればいいだろう。
しかし筋トレ経験者には別のガイドラインが必要となる可能性がある。
筋トレ経験者向けのガイドラインとしては「筋トレ上級者のためのリコンプ完全ガイド【不可能だと諦めてない?】」を参考にしてほしい。
まとめ
今回はリコンプについてまとめた。
- 維持カロリーやマイナスカロリーでも筋肥大はすることができる
- 筋トレ初心者であれば1日250kcal以下のカロリー制限であれば筋肉を増やせる可能性が高い
筋トレ初心者がリコンプを目指すなら、”250kcal/日”程度のカロリー制限で筋トレをしていくのがいいだろう。
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