「バキバキの体になりたい!」
という願いは、筋トレをしていると1度くらいは抱く思い。
しかし、ダイエット研究は肥満という病を脱することを目的としているものが多く、「普通体型の人をバキバキにしてみた」みたいな研究は少ない。
ということで、今回は「筋トレ歴2年の男性が初めてボディビル大会に出るまで」を追った研究をご紹介。
筋トレの研究者はどのようにしてバキバキの体を作るのか?食事と筋トレ、有酸素運動について解説していこう。
バキバキの体作りのために重要なこと
バキバキの体を作るためには、激しい筋トレやキツイ食事制限が必要と思っている人もいるかも知れないが、実は運動というのはそこまで重要ではない。
具体的にいうと、毎日のように腹筋をしたり走り込みをする必要はないのである。
重要なのは”脂肪を落とすこと”で、それさえ達成できればどんな人でもバキバキになれる。そして運動というのは脂肪を落とすためには必須ではないのだ。
例えば、バキバキの体の代名詞である腹筋で考えてみよう。
腹筋というのは、以下のように筋繊維の間に”腱”がある構造になっているので、実は誰でも割れ目がある。
しかし、普段はこの割れ目の上に皮下脂肪が乗っているために、割れ目というのは見えない。
なので、この皮下脂肪さえ落とすことができれば、腱が浮き出てきて腹筋は割れるのだ。
この皮下脂肪を落とすために一番重要なのは食事制限。運動は二の次になる。
これは腹筋に限らず他の筋肉も同様で、脂肪さえ落とせば筋肉というのは繊維が浮き出てくる。
これこそがバキバキの体なのである。
バキバキを目指すとき筋トレで気をつけるべきこと
とはいえ、筋トレが不要なのかというとそういうわけでもない。
というのも、筋トレをしないでダイエットをすると筋肉は落ちてしまう。
いくら腹筋が割れていても筋肉が落ちてしまいガリガリの体になってしまってはカッコ良くない。
食事より重要性が低いとはいえ筋トレは必須なのだ。
しかし、実はこれから筋トレを始める初心者と数年間筋トレを続けてきた経験者では筋トレで気をつけるべきことは違ってくる。
まずはこれから筋トレを始める初心者だが、この場合はあまり何も考えずに筋トレをすればいい。
というのも、初心者のうちは筋トレで筋肉がつきやすい。
オーソドックスな筋トレとダイエットをするだけで、筋肉が増やしつつも脂肪を落とすことができ、十分にバキバキの体が実現できる。
一方で、筋トレ経験者であれば、反対に筋トレの”ボリューム”を多少落としてもいいかもしれない。
というのも、筋トレ経験者というのは”筋肉をつけながら脂肪を落とす”のは難しい。
そして筋トレ歴が長ければ長いほど筋トレのボリュームも高くなってしまっているだろう。
人によっては食事制限中に今までと同じボリュームの筋トレを行うのはキツイかもしれない。
そんなときは筋トレのボリュームを少し落とそう。
「ボリュームを落としたら筋肉も減るのでは?」と思うかも知れないが、一般的に筋肉を増やすのではなく維持するだけなら多少ボリュームを落としても大丈夫なことが知られている。
筋トレが辛すぎて燃え尽きるくらいなら、筋トレのボリュームを落とすほうが賢明だろう。
3.5ヶ月かけてコンテスト準備をしたときの変化を調べた
このようにして運動と食事でバキバキの体を作っていくのだが、実際の例として2015年の「21歳男性がボディビル大会に出るまで」を記録したケーススタディを紹介しよう。(R)
この論文は「ステロイド・利尿剤・絶食などは一切使用せず、科学の力だけでコンテストボディ作りをしよう!そして記録を残そう!」というコンセプトの研究で、被験者に選ばれたのは筋トレ歴2年の男性A。
男性Aはイギリス人で、今回が初めてのボディビル出場となる21歳の青年である。ステータスは以下のようになる。
- 年齢 :21歳
- 身長 :178.5cm
- 体重 :86kg
- 体脂肪率:14%
- 基礎代謝:1993kcal
ちなみに、実験開始前は毎日同じ食事をしていたというので、ストイックな性格なのだろうと思われる。
さらには、2週間に1度はチートデイでピザとアイスクリームを食べていたらしい。
日本にもそれなりに居そうな類のトレーニー。
1日6回食べていたという男性Aだが、普段の食事内容は下の表になる。
細かい食事内容はさておき、注目すべきはカロリーと三大栄養素。
タンパク質が”2.99g/体重”で、脂質はたったの28g。
糖質は"2.5g/体重”と普通くらいなので、トレーニーに典型的な”高タンパク質・低脂質”といった印象。
ただ、ちょっと高タンパク質低脂質にしすぎなのは否めない。
実験開始前の食事内容はこのような感じなのだが、それはさておき、いよいよ14週間の研究がスタート。
研究者はまず、コンテストに向け、食事内容をトレーニング日とオフ日で2パターン作成。
男性Aが決まった食事を毎日食べることを好んだため、毎日同じ食事を食べてもらう食事法にした。
以前の食事からタンパク質が削られ、その量は”2.4g/体重”とそれなりにオーソドックスな量。
一方で、脂質は以前の食事に比べて爆増している。
その量は”1.38g/体重”とやや多め。そして糖質は"1.59g/体重”と、やや少なめ。
ちなみに「脂質を増やし過ぎでは?反対に糖質を減らしすぎでは?」と思う人がいるかもしれない。
というのも、現代科学では「脂質は最低限にして糖質を多めにする」というのが主流になっているから。
そこに関しては、考察パートで研究者が「脂質を増やしすぎたかもしれない」と反省するハメになる。
なので、実践するときはもう少し脂質を増やして糖質を減らすようにしよう。
次は運動に関してみていこう。
まず、筋トレは分割法で各部位週2回ずつトレーニングしている。
そして、朝に絶食状態での有酸素運動(HIITや低強度のジョギング)も何度か行われている。
食事だけではカロリー不足を作るのが難しいので、有酸素運動で消費カロリーを上げる戦略にした模様。
実際の運動内容が以下。
あとは、サプリとしてクレアチンを1日5g飲んでいる。
クレアチンは科学が認めた数少ない優良サプリなので、研究者はバキバキボディ作りにもクレアチンを採用。
全体としては「高タンパク質を保ちつつ、カロリー制限をする。
筋トレで筋肉を維持し、有酸素運動で消費カロリーUP」というオーソドックスなダイエット法になる。
実験期間中の、被験者の実際の摂取カロリーと消費カロリー、カロリー収支は以下のようになる。
前半は500kcalいかないくらいのカロリー不足で、後半は1000kcal近いカロリー不足となっている。
そして、14週間に及ぶダイエットによる、筋肉量と脂肪量の変化は以下の通り。
実験期間の3.5ヶ月で落とした体重は11.7kg。
その中でも、割合は脂肪で6.7kg、筋肉で5.0kg落ちたという結果に。
最終的な体脂肪率は6.8%と見事なコンテストボディが完成した。
ただ正直なところ、どうしても筋肉が落ちてる感は否めない
この筋肉が分解されすぎた問題に対して、研究者はいくつか反省点を挙げている。
まず一つ目の反省点は、減量ペースが早すぎたかもしれないこと。
この研究では減量ペースが”体重×0.98%/週”だったが、「コンテストのようなバキバキボディを作るためには、もっと減量ペースを落としたほうがよかったかも」と振り返っている。
というのも、他のイギリスボディビルダーを調べた研究なんかでは「コンテストで入賞する選手は減量ペースが遅く0.46%/週だった」という報告などがある。
研究者は、他のボディビル研究に比べて減量ペースが早かったかも、と反省したようだ。
肥満から普通体型を目指すには1%/週は決して早くないが、体脂肪が減ってくると筋肉は分解されやすくなる。
バキバキボディを作るには、もっとゆっくりなペースでもいいかも、というのが結論である。
そして、もう一つの反省点は糖質不足。
カロリー制限中においても、十分な糖質は筋肉の分解防止に必須。糖質が足りなかったことが筋肉の分解に繋がったかも、と研究者は反省している。
最後の反省点に挙げているのは、有酸素運動のやりすぎである。
というのも、有酸素運動は筋トレの肥大効果を邪魔することが知られている。筋肉を分解させた理由に挙げられるのも妥当な話。
ちなみに、この研究では基礎代謝の変化も測定されている。
体重が12kgちかく減っているのだから、もちろん基礎代謝もそれなりに減っている。
これに関しては防ぎようがないので仕方ない。
しかし、基礎代謝が減ってしまうのは事実なので、やっぱり都度カロリーを見直す必要がある。
まとめ
今回の研究は、イギリス人男性が「体脂肪率14%→体脂肪6.8%」になるまでを記録した、いわばドキュメンタリー的研究。
n=1の研究なので科学的エビデンスとしては弱い。
しかし、バキバキボディを目的にした研究は数少ないので、今回のダイエットや運動の戦略と、コンテスト後の反省点は学べることも多い。
そして、バキバキの体を作る具体的な方法は下記の記事にまとめてある。
実践したいけど方法がわからないという人はぜひ読んでほしい。是非お試しあれ!