筋力UPに筋肥大、ダイエット効果まで。クレアチンの科学

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筋トレ好きと言えばサプリのイメージがある、という人も多いだろう。とはいえ、サプリというのはたくさんある。

なので、筋トレの王道とも言えるべきサプリを少しずつ紹介していこう、というのが今回のシリーズ。

初回は筋力UP・筋肥大UPの王道サプリであるクレアチンに関する話。

実はクレアチンというのは筋トレ研究者が”ゴールドスタンダード”と呼ぶくらいに効果が科学的に実証されている数少ないサプリ。

今回はそんなクレアチンについて紹介していこう。

目次

そもそもクレアチンって何?

そもそもクレアチン(Creatine)とは何か?

クレアチンは体内で日々作られている物質で、原料となっているのはアミノ酸であるメチオニン(Methionine)、グリシン(Glycine)、アルギニン(Arginine)の3つ。

クレアチンは体内の95%が骨格筋に貯蔵されており、クレアチンの2/3はホスホクレアチン(phosphocreatine:PCr)として貯蔵されている。[1]

クレアチンの体内動体
クレアチンの体内動体

そしてこのクレアチンは最終的にクレアチニン(Creatinine)に分解されて尿に排出されるという流れになっている。

そんなクレアチンだが、これはATP-CP系と呼ばれるエネルギーシステムで使われる。

このATP-CP系が何かというと、主に運動開始〜10秒までの高強度運動で力を発揮するシステム。

すなわち、筋トレのような運動はこのATP-CT系の恩恵を大きく受けているのである。[2]

そんなクレアチンだが、実はサプリなどで大量に経口摂取することで、筋肉のクレアチン濃度を増やすことができる。

このことに関しては、古典的なものとして1996年の研究がある。[3]

被験者となったのは男性12人で、まず彼らに20gのクレアチンを6日間にわたって摂取してもらった。

そしてその後4週間にわたってクレアチンを摂取しないグループと2gを継続的に摂取するグループに分けたところ、筋肉のクレアチン濃度は以下のような結果に。

筋肉のクレアチン濃度(上段:20g摂取→摂取なし 下段:20g摂取→2g摂取)
筋肉のクレアチン濃度(上段:20g摂取→摂取なし 下段:20g摂取→2g摂取)

まず、どちらのグループも20gを摂取し終えた7日後(Day7)にはクレアチン濃度が爆増している。

その後クレアチンを摂取しなかったグループは徐々にクレアチン濃度が減少しているが、2gのクレアチンを摂取し続けたグループはクレアチン濃度を維持していることがわかる。

クレアチンを大量摂取した後にクレアチンを飲み続けることで、筋肉のクレアチン濃度を高く保てることが判明したのである。

ちなみに先程の体内動態の図をみたときに「クレアチンは食事からも賄われているからサプリで摂る必要はないのでは?」と思った人もいるかもしれない。

確かにクレアチンは肉や魚料理にも含まれているが、2004年の研究では加熱調理によって肉100gあたりのクレアチン量は476mg→265mgまで減少することが報告されている。[4]

加熱調理をしない寿司を毎日爆食いしているならいざ知らず、そうでないならクレアチンはサプリで摂取しなければこれだけの大量のクレアチンはなかなか摂るのが難しいのである。

クレアチンは筋トレに効きまくる

サプリでクレアチン濃度が上がるのはいいとして、じゃあ筋肉のクレアチン濃度が上がると、どんな効果が期待できるのだろうか?2017年の論文から抜粋しよう。[2]

  • スプリントパフォーマンスの向上
  • 筋トレでのパフォーマンス向上
  • トレーニング中の筋力&筋量の上昇
  • グリコーゲン合成の強化
  • 無酸素性代謝閾値の上昇
  • 有酸素運動のパフォーマンス向上
  • 回復力の向上
  • トレーニング耐久性の向上

主に期待される効果としては、クレアチンが関与するATP-CP系が担当している高強度トレーニングに対するもの。

つまりスプリントや筋トレのパフォーマンス向上である。

とはいえ、このマガジンでは何度も紹介しているが「理論的に効果がありそうでも実際には効果がなかった」という例はいくらでもある。

では実際にどうなのか?

ということで、2017年に大規模なメタ分析が2件行われているので紹介しよう。

まず紹介するのは2017年の「クレアチンは上半身の筋力向上に効くのか?」を調べたメタ分析。[5]

この研究では53の研究から​​1138人の被験者を抜き出した。

その結果、クレアチンの摂取により筋力は向上し、ベンチプレスで効果量0.265、チェストプレスで効果量0.677、上肢全体では効果量0.317だった。

そして同じ著者から「クレアチンは下半身の筋力向上に効くのか?」も調べられており、こちらも60の研究から1297人の被験者を抜き出した大規模なもの。[6]

その結果、下半身においてもクレアチンの摂取により筋力は向上し、スクワットで効果量0.336、レッグプレスで0.297、下肢全体では効果量0.235だった。

つまるところ、この2つのメタ分析では「クレアチンを摂取することで上半身も下半身も小さな効果ではあるが筋力が向上した」という結果になったのである。

クレアチンは古くから研究されており、これだけ大規模なメタ分析も可能なのだが、その結果は「効果あり」だったのである。

それくらい効果が保証されているからこそ、実際に筋トレ研究者にサプリの”ゴールドスタンダード”と言わせるような代物である、数少ない飲む価値のあるサプリの1つとして名前を連ねているのである。

クレアチンはダイエットにさえ効く…!?

このように筋トレのパフォーマンスを上昇させることが長年知られてきたクレアチンだが、実は最近「クレアチンがダイエットに効くぞ!」という論文すら出てきた。

このことを示したのが2019年の「クレアチンは脂肪を減らすのでは?」を調べたメタ分析。[7]

この論文は50歳以上を対象にした高齢者研究で、19件の研究から609人の被験者を抜き出したもの。このようにして「筋トレとクレアチンの組合せは脂肪を減らすのか」を調査したところ、以下のような結果に。

クレアチン摂取によるフォレストプロット
クレアチン摂取によるフォレストプロット

この図は0を基準にしてマイナス(左)側ならクレアチンに有利な結果、プラス(右)側ならクレアチンに不利な結果なのだが、全ての結果を総合した◆を見ると、脂肪に有利な側になっていることがわかる。

なので、結論としては「クレアチンを飲むと痩せる!」ということになるのである。

しかし、ここで数値をよくよく見てみると、その脂肪減少量は-0.55kgになっている。

そしてもう一つ大事なことが、このメタ分析では実験期間が5週間以上のものが抜き出されていること。

要するに、このメタ分析から言えることは「5週間のクレアチン摂取で体脂肪が0.55kg減るかも」ということ。

確かに減らないよりは嬉しいかもしれないが、”ダイエットのために”飲むにしてはあまりに効果が微妙なのである。

もし「クレアチンは痩せることがメタ分析で証明されている!」みたいな宣伝文句があったとして、それ自体は真実だろう。

しかし、実際の効果は微々たるもので、ダイエット効果はあまり期待できない。

筋トレのパフォーマンス向上ついでに効果があったらいいな、くらいに考えておくのがいいだろう。

クレアチンの具体的な摂取方法

ダイエット効果はほとんど期待できないとは言え、クレアチンが筋トレ好きにおすすめなことには変わりない。

先ほど紹介したように筋力が向上することが保証されているし、実は筋肉量も増えることがわかっている。

例えば2003年のメタ分析では、筋肉量を測定した研究33件を抜き出したところ、筋トレのみでは0.6kgの筋肉量の増加が見られたのに対し、クレアチンを摂取したグループは2.2kgも筋肉量が増加していることが報告されている。[8]

ちなみに実はクレアチンは親水性が高く、摂取することで筋肉内に水も一緒に引き込む。なので1kg程度は体重が増えるので、実際にクレアチンの効果で増えた筋肉量はここまで多くないだろう。

しかし、それでも筋肥大に対して効果量0.33と、少ないものではあるが確かな効果があったのである。筋力向上なども加味すると、筋トレの効果UPという意味では十分に試す価値はあるだろう。

さて、それでは具体的にどのように摂取すればいいのだろうか?

初めに紹介した研究では初めに1日20gという多量のクレアチンを摂取する”ローディング”という作業をしている。

しかし、実はこのローディングをしなくても、時間は少しかかってしまうが同じようにクレアチンレベルが上がることが近年の研究でわかっている。

例えば2018年の「ローディングなしのクレアチンの効果」を調べた研究を見てみよう。[9]

この研究は男性36人を被験者にしたもので、彼らを3つのグループに分けた。

  • プラセボグループ
  • 1日3gのクレアチンを摂取するグループ
  • 1日5gのクレアチンを摂取するグループ

そして35日後に筋肉のクレアチン濃度を測定したところ、3gと5gを摂取したグループはどちらも筋肉内のクレアチン濃度がプラセボに比べて上昇しており、その程度は同じくらいであったことが報告されている。
(プラセボ:114.2→125.6、3g:127.6→152.4、5g:114.9→136.8)

この実験では7日後のクレアチン濃度も調べられており、その値は3gで136.2、5gで118.8g。

ローディングなしでは先ほどの研究のように1週間でクレアチン濃度が最大値まで上がることはないが、一ヶ月もすれば筋肉内のクレアチン濃度が最大限に上がることがわかっている。

短期的にクレアチン濃度を上げたければローディングしてもいいが、1日20gのクレアチンを6日間分、合計120gで40日分にも匹敵するクレアチンを使ってしまうのは勿体無い。

特にローディングはせず1日3gのクレアチンを摂取すれば十分だろう。

ちなみに、「クレアチンといえば糖質と一緒に摂るべきなんでしょ?」と思う人もいるかもしれないが、必ずしもその必要はない。

例えば2017年の論文では「クレアチンは糖質と一緒に摂取する方が筋肉のクレアチン濃度は上がる」とされている。

筋肉のクレアチン量(左からベジタリアン、普通、ローディング、ローディング&糖質)
筋肉のクレアチン量(左からベジタリアン、普通、ローディング、ローディング&糖質)

確かに一番右のローディングと糖質を組み合わせたグループが一番筋肉のクレアチン濃度が上昇しているように見える。

しかし、これはあくまで急性期研究の話。

つまるところ、短期的にはローディング&糖質の摂取が筋肉のクレアチン濃度が一番上昇するが、先ほどの研究のように少量のクレアチンでも取り続ければ最終的には同レベルの150台のクレアチン濃度を達成できる。

なにもクレアチンを糖質と一緒に摂ることに躍起にならなくても、それより時間がかかるとは言え1ヶ月もすれば十分にクレアチン濃度をあげることができるのである。

そして最後に買うべきクレアチンの種類だが、これは”クレアチンものハイドレート”一択である。

というのも、研究で使われているクレアチンはほとんどが”クレアチンモノハイドレート”である。

最新の2022年の研究でも、他のクレアチンの亜種は価格が高く釣り上げられているわりに、これらがクレアチンモノハイドレートより有効であることを実際に示した研究はないという結論になっている。[10]

クレアチンモノハイドレートは効果が実証されているし、何より安い。飲む場合はこのクレアチンモノハイドレートで問題ないだろう。

まとめ:実践的アドバイス

今回はクレアチンについて紹介したので、最後に実践的なアドバイスをまとめておこう。

  • クレアチンは筋トレ系サプリのゴールドスタンダード。筋力や筋肥大への効果がかなり実証されている
  • 飲む場合は1日3gを飲めばOK。その際ローディングをしたり、糖質と一緒に摂ったりする必要は特にない。
  • クレアチンは”クレアチンモノハイドレート”一択。その他の種類や糖質が一緒になっているものを買う必要はない。

私事だが、サプリは一時期ハマっていたが、今はあまり飲まなくなった。

しかし、クレアチンだけは効果が確約されているに近い上、そこまでコストも高くないので飲み続けている。

もしサプリを試す余裕があるなら、まずはクレアチンを試してみてはいかがだろうか?

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