筋トレにはほうれん草!硝酸塩がパフォーマンスを上げると論文で判明

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「ほうれん草を食べると筋トレのパフォーマンスが上がる!」

こんな話を聞いたことがあるだろうか。

ほうれん草にたくさん含まれる硝酸塩が、筋トレのレップ数を向上させるというのだ。

今回は、論文から「硝酸塩が筋トレのパフォーマンスを上げるぞ!」という話をご紹介。

硝酸塩を摂取することで筋トレのレップ数と筋力が向上することが判明した。

目次

硝酸塩が筋トレのパフォーマンスを上げるワケ

硝酸塩は葉野菜に多く含まれる成分

そもそも硝酸塩と言われても、耳に馴染みのない人が多いだろう。

硝酸塩とは葉野菜などに含まれている成分で、以下の野菜に多く含まれている。(参考:農林水産省HP

  • ほうれん草
  • レタス
  • サラダ菜
  • 小松菜
  • 春菊
  • セロリ
  • チンゲンサイ

硝酸塩が運動のパフォーマンスを上げる鍵となるのが、一酸化窒素である。

食事で摂取した硝酸塩は一酸化窒素に変換される。

この一酸化窒素が筋トレのパフォーマンスを上げるのだ。(R,R

硝酸塩の体内の動き
硝酸塩の体内の動き

食事から摂取した硝酸塩(Dietary NO3-)は、口内細菌によって二酸化窒素(NO2-)に変換され、その後一酸化窒素(NO)に変換される。

NOが筋トレのパフォーマンスを上げるメカニズムはいくつか提唱されている。

  • 筋肉の収縮に必要なカルシウムの増加を促し、筋肉の収縮効率を上げる。
  • ミトコンドリアの効率を上げ、少ない酸素量でより多くのエネルギーを生産できるようになる

簡単に言ってしまえば、筋肉が効率良く収縮できるようになるのだ。

ちなみにこのメカニズムは、筋トレサプリのシトルリンと同じ。

シトルリンもNOの材料となるアルギニン(L-arginine)を増やすことで筋トレのパフォーマンスを上げる。

アルギニンもサプリで販売されているが、アルギニンを直接摂取することは意味がないので注意。

シトルリンと硝酸塩は経路こそ違えど、どちらもNOを増加させることで筋トレのパフォーマンスを向上させるのだ。

硝酸塩で筋トレのレップ数が増える?

硝酸塩を摂ることで筋トレのレップ数が増えた

メカニズム的には、硝酸塩は筋トレのパフォーマンスを向上させる可能性がある。

しかし、理論的には効果がありそうでもヒトで試すと実際に効果がなかったという例はいくらでもある。

それでは硝酸塩のヒトを対象にした研究はどのような結果になっているのだろうか。

まず初めに紹介するのは2016年に行われた研究。(R

被験者となったのはトレーニング経験のある男性12人で、彼らに2つの条件で筋トレをしてもらった。

  • プラセボ
  • 70mlのビートルートジュースを飲む

被験者には70mlのビートルートジュース(硝酸塩400mg)を摂取してもらった。

ビートルートは日本ではあまり馴染みがないかもしれないが、”ビーツ”とも呼ばれる野菜のことでボルシチなどでよく使われる。

ビートルートには硝酸塩がたくさん含まれているので、硝酸塩の補給方法としてビートルートジュースが採用されたのだ。

被験者には6日間にわたってこのビートルートジュースを飲んでもらい、70%1RMのベンチプレスを2分のインターバルで3セット行ってもらった。

このときのレップ数を計測した結果は以下の通り。

各セットのレップ数(黒:硝酸塩の摂取、白:プラセボグループ)
各セットのレップ数(黒:硝酸塩の摂取、白:プラセボグループ)

硝酸塩を摂取したときのレップ数が黒バー、何も摂取していないときのレップ数が白バーになる。

結果として、全てのセットで硝酸塩を摂取したときのほうがレップ数を多くこなしている。

全セットでの合計重量も硝酸塩を摂取したグループのほうが有意に大きかった。

  • 硝酸塩:2582kg
  • プラセボ:2171kg

筋トレ前に硝酸塩を摂取することで、レップ数が向上することが示されたのだ。

硝酸塩を摂取しても筋トレのレップ数が増えなかった研究もある

他の例として2020年の研究も紹介しよう。(R

被験者となったのは男性12人で、彼らに2つの条件でベンチプレスとスクワットをしてもらった。

  • プラセボ
  • 400mgの硝酸塩を含むビートルートジュースを2時間前に摂取

被験者にはビートルートジュースを飲んでもらい、60%1RM、70%1RM、80%1RMの3条件で筋トレをしてもらった。

そしてパワーやレップ数について測定したところ、結果は以下の通り。

バックスクワットとベンチプレスのレップ数
バックスクワットとベンチプレスのレップ数

まずバックスクワットのほうから見てみると、60%1RMと70%1RMではビートルートジュースを摂取した黒バーのほうがレップ数が多い。

一方で、80%1RMという高強度ではビートルートを摂取してもレップ数が増えていない。

次にベンチプレスだが、どの強度でもビートルートジュースはレップ数を増やさなかった。

先ほどとは打って変わって、硝酸塩の効果がイマイチはっきりしない結果となったのだ。

硝酸塩を摂取してもパフォーマンスが上がらなかったワケ

それでは、この結果の違いは何が原因なのだろうか?

理由①1回の硝酸塩では効果がない?

真っ先に考えられる原因は、ビートルートジュースを飲んでいた長さ。

効果アリの研究では6日間にわたってビートルートジュースを摂取しているが、効果がイマイチとなった研究ではたった1回しかビートルートジュースを摂取していない。

つまり、硝酸塩は1日だけ摂るのではなく日常的に摂る必要があるかもしれないのだ。

しかし、この説は間違っているとは言えないが正しいとも言えない。

2020年に行われた別の研究では、ベンチプレスの2時間前にビートルートジュース70mlを摂取しただけでパワー(効果量0.51)とレップ数(効果量0.46)が向上したことが報告されている。(R

ビートルートジュースの摂取期間が決定的な理由とは言えないのだ。

理由②そもそも被験者が少なくて効果がはっきりしない

もう一つの理由は、研究が小規模で効果がはっきりしないというもの。

筋トレ研究というのは被験者が少ないことがほとんどなうえ、試しているのは効果があるといっても所詮はサプリ。

効果が少ないものを少数の被験者で試すと、効果アリと効果ナシの結果が両方出てくることは珍しくない。

実は今回の研究も結果に違いが出た理由は明確にはわからない。

一方の研究ではたまたま効果ありとなり、他方の研究ではたまたま効果なしとなった可能性があるのだ。

硝酸塩と筋トレのパフォーマンスについて調べた研究

「それでは結局のところ、硝酸塩は筋トレのパフォーマンスを上げるのか上げないのかどっちなの?」

こんな悩める私たちに良い指針を与えてくれるのがメタ分析である。

個々の研究をみても効果はバラバラ。

それなら各研究を統合したメタ分析を見ればいいのだ。

硝酸塩で筋力とレップ数が向上した

まず紹介するのは2021年の「硝酸塩は筋力を向上させるか?」を調べたメタ分析。(R

このメタ分析は筋トレ前に硝酸塩(ほとんどがビートルートジュース)を摂取させた研究19件を抜き出したもの。

硝酸塩摂取が筋力向上に与える影響に関して調べたところ、結果は以下の通り。

硝酸塩に関する研究の効果量
硝酸塩に関する研究の効果量

全体の結果を表す◆は硝酸塩を摂取したほうがパワーが向上するという結果になっており、その効果量は0.42~0.45。(値は分析法によって若干異なる)

ちなみに、個々の研究を見てみると硝酸塩を摂取しても筋力が向上しなかった(線が0をまたいでいる)ものが多数ある。

しかし各研究はどれも平均値(■)が硝酸塩を摂取した側にポジティブに傾いているので、最終的に硝酸塩の摂取は筋力を向上させる結果になった。

他には2022年のメタ分析でも、硝酸塩の摂取で筋力とレップ数が向上したことが報告されている。(R

硝酸塩を摂取することで、筋力とレップ数は向上する可能性が高いと言えるだろう。

硝酸塩を取るときの注意点4選

硝酸塩は効果が小さく、正しい使い方をしても研究によっては効果ナシの結果となってしまうこともある。

一方で、明確な理由があって効果が出ない場合もある。

今回はそんな研究から硝酸塩で筋トレのパフォーマンスを上げるための注意点を紹介しよう。

硝酸塩で効果がなかった2022年の研究。

効果がない使用例として参考になるのが2022年の研究。(R

被験者となったのは男性16人で、被験者は以下の2グループに分けられた。

  • プラセボを摂取する。
  • トレーニング30分前に硝酸塩180mgを摂取する

サプリメントグループは、トレーニングの30分前に赤ほうれん草エキス2g(硝酸塩180g)を摂取。

トレーニング後には20gのタンパク質、46gの炭水化物、4.5gの脂肪を含む回復飲料も渡されている。

筋トレはピリオダイゼーションを採用しており、頻度は週3の全身トレーニング。

現実世界のトレーニングに近い内容となっている。

11週間後にわたり筋トレをしてもらい、筋力や体組成を計測したところ結果は以下のようになった。

  • どちらも同じくらい大腿直筋が筋肥大した!(サプリ:+0.29cm、プラセボ:+0.29cm)
  • どちらも同じくらい外側広筋が筋肥大した!(サプリ:+0.18cm、プラセボ:+0.14cm)
  • どちらのグループも同じくらいベンチプレスの1RMが向上した!(サプリ:+13.6kg、プラセボ:+22.9kg)

どちらのグループも筋力向上と筋肥大をしたが、硝酸塩は影響を及ぼさなかった。

「なぜこの研究で結果が出なかったのか」から、硝酸塩で筋トレのパフォーマンスを上げたいときの注意点をまとめておこう。

注意点1:摂取量が少ないと×

まず一つ目の注意点は、硝酸塩の摂取量が少ないと意味がないこと。

硝酸塩が筋トレのパフォーマンスを上げた研究はどれも、硝酸塩が400mgは含まれている。

今回の研究のように硝酸塩が180mgしか含まれていないと不十分。

硝酸塩を摂取するなら、1日400mgは摂取するようにすべきだろう。

注意点2:サプリより素材そのまま

二つ目の注意点は、硝酸塩はサプリではなく野菜から摂る必要があること。

というのも、実は硝酸塩がNOになるためにはビートルートなどに含まれる抗酸化物質が重要とされている。(R

今回の研究で使われたのは赤ほうれん草エキスというサプリ。

硝酸塩の生理活性を上げる天然の抗酸化物質が含まれない抽出物では、硝酸塩を摂取しても体内でNOになることがない。

硝酸塩でNOを増やしたければ、ビートルートジュースやほうれん草のサラダなど素材そのままで摂取するのがオススメ。

注意点3:そもそもサプリは品質が怪しくコスパが悪い

素材そのままで摂取するのがいいとは言ったが、正直なところビートルートジュースはやめておいたほうがいい。

ビートルートジュースのサプリメントは会社間、製品間で硝酸塩の含有量が異なっている。

実はほとんどのビートルートジュースが運動パフォーマンスを向上させる量に達していないという研究結果があるのだ。(R

何より、ビートルートジュースは価格が高くコスパも悪い。

スーパーに置いてあるほうれん草を食べるだけで硝酸塩は摂取できるのに、わざわざサプリを買う必要がない。

日本で手に入りやすいほうれん草を食べれば十分だろう。

ちなみに、2000年の研究では有機野菜は普通の野菜より硝酸塩が少ない傾向があることが報告されていることにも注意。(R

注意点4:マウスウォッシュは使わない

最後の注意点は、マウスウォッシュを使わないこと。

食事などから摂取された硝酸塩が亜硝酸塩に変換されるためには、口内細菌が大きな役割を果たしている。

マウスウォッシュを使ってしまうと、その大事な役割を果たしている口内細菌が死滅してしまう。

実際に今まで見てきた硝酸塩サプリメントの研究では、マウスウォッシュを使わないように指示されている。

硝酸塩をせっかく摂取しても、マウスウォッシュを使って口内細菌を殺してはNOに変換することができない。

硝酸塩をいくら摂取しても意味がなくなってしまうので、マウスウォッシュは控えるようにしよう。

まとめ:実践的アドバイス

今回は硝酸塩についてまとめた。

  • 硝酸塩は筋トレのパフォーマンスを高める可能性が高い
  • 硝酸塩は400mgは摂取が必要
  • 硝酸塩は野菜など素材そのまま摂取するのが良い
  • 硝酸塩による効果を得たければマウスウォッシュはNG

ちなみに2000年の研究では、NOが筋肥大に重要な役割を果たす衛生細胞を増やす効果があることも報告されている。(R

わざわざサプリを買う必要はないが、日常的に意識して硝酸塩を食べるのは吉。

またNOを増やすためにはシトルリンという選択肢もある。

今回の話とも密接に関わっているので、より理解を深めたい方や「筋トレに少しでも効果のあるサプリは全部チェックしておきたい!」という人は以下の記事もオススメ。

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