サプリ

ビーツやほうれん草、レタスを食うと筋肉にいいって知ってた?

「ビートルートジュースを飲むと筋トレのパフォーマンスが上がる!」

という話を聞いたことがあるだろうか。

ビートルートはボルシチなどの料理に使われる野菜で、硝酸塩という物質がたっぷり入っている。

この硝酸塩、実は筋トレを含む運動のパフォーマンスを上げると言われている。

今回は、論文から硝酸塩と筋トレに関する話。

硝酸塩というのは、シトルリンと同様にNO(一酸化窒素)を増やし、筋トレのパフォーマンスを向上させるのだ。

硝酸塩はNOを増やす

そもそも、硝酸塩とは何なのだろうか。

硝酸塩とは葉野菜などに多く含まれている成分。

例として農林水産省のHPから硝酸塩が多く含まれている野菜をいくつかピックアップしてみよう。(R

  • ほうれん草
  • レタス
  • サラダ菜
  • 小松菜
  • 春菊
  • セロリ
  • チンゲンサイ

これらの野菜には硝酸塩が多く含まれているのだが、実はこの硝酸塩とその代謝物である亜硝酸塩(NO2-)は、1970年代には発がん性のある物質であるN-ニトロソ化合物に変化するとして忌み嫌われていた。

しかし、ここ10年ほどで硝酸塩に関する意見は180度変わった。

硝酸塩とその代謝物は健康に悪いどころか、むしろ健康や運動パフォーマンスにいい効果があるのでは、と言われるようになったのだ。(R

健康にいいのか悪いのかという議論は未だに続いているが、今回は健康問題は一旦無視。

運動パフォーマンス、とりわけ筋トレに関する文献を紹介していこう。

まず硝酸塩が運動にポジティブな効果が期待できる理由、それはざっくり言えば硝酸塩を摂取するとNOが増えるから。(R

硝酸塩の体内の動き

食事から摂取した硝酸塩(Dietary NO3-)は、口内細菌によってNO2-に変換され、その後NOに変換される。

シトルリンの記事で紹介したように、NOは筋肉の収縮に必要なカルシウムの増加を促し、筋肉の収縮効率を上げる。

また、NOはミトコンドリアの効率も上げるので、少ない酸素量で同じだけの力を生成できるようになるのだ。

これらの作用によって、NOは運動のパフォーマンスを上げることが期待されている。

つまり、硝酸塩がNO2-を経てNOになり、NOが筋肉にポジティブな影響を与えることで運動のパフォーマンスが上がる。

実はこのメカニズム、シトルリンがアルギニンを経てNOになり、NOが筋肉にポジティブな影響を与えるという、シトルリンの作用メカニズムと同じ。

つまり、シトルリンと硝酸塩はどちらもNOを増加させ、それが筋トレを含む運動パフォーマンスの向上につながっているのだ。

ちなみに、同じメカニズムを期待してアルギニンを摂取している人もいるかもしれないが、アルギニンはサプリで摂取しても体内のアルギニン濃度は増やさないことに注意。

アルギニンはサプリで摂取しても吸収されづらいので、もしアルギニンの増加によってNOを増やしたければ、遠回りに見えてもアルギニンの材料であるシトルリンを摂取するのがいい。

わかりやすく言えば、硝酸塩もシトルリンもNOを増やす、そしてNOの増加が筋トレのパフォーマンス向上につながるのだ。

硝酸塩で筋トレの効果はあがる?

メカニズム的にはシトルリンと同様に筋トレのパフォーマンスを向上させる可能性がある硝酸塩。

しかし、理論的には効果がありそうでもヒトで試すと実際に効果がなかったという例はいくらでもある。

硝酸塩の実際の効果はどうなのだろうか。

ということで、実際に筋トレへの効果を調べた研究を見てみよう。
まず紹介するのは2016年に行われた研究。(R

被験者となったのはトレーニング経験者の男性12人で、彼らに2つの条件で条件で筋トレをしてもらった。

  • プラセボ
  • 70mlのビートルートジュースを飲む

被験者には70mlのビートルートジュースを飲んでもらい、400mgの硝酸塩を摂取してもらった。

ちなみにビートルートは”ビーツ”とも呼ばれる野菜のことで、料理ではウクライナ発祥のボルシチなどで使われる。

見た目は真っ赤な株のような見た目で、硝酸塩が多く含まれている。

被験者には6日間にわたってこのビートルートジュースを飲んでもらい、70%1RMのベンチプレスを2分のインターバルで3セット行ってもらったところ、結果は以下のようになった。

各セットのレップ数(黒:硝酸塩の摂取、白:プラセボグループ)

硝酸塩を摂取したときのレップ数が黒バー、何も摂取していないときのレップ数が白バーになる。

どのセットも硝酸塩を事前に摂取したときのほうがレップ数を多くこなしているので、当然総レップ数も硝酸塩を摂取したときのほうが多い。

シトルリンのときと同じく、筋トレ前に摂取することで実際にレップ数が向上するという結果になった。

他の例として2020年の研究も紹介しよう。(R

被験者となったのは男性12人で、彼らに2つの条件でベンチプレスとスクワットをしてもらった。

  • プラセボ
  • 400mgの硝酸塩を含むビートルートジュースを2時間前に摂取

被験者にはビートルートジュースを飲んでもらい、60%1RM、70%1RM、80%1RMの3条件で筋トレをしてもらった。

そしてパワーやレップ数について測定したところ、結果は以下のようになった。

バックスクワットとベンチプレスのレップ数

まずバックスクワットのほうから見てみると、60%1RMと70%1RMではビートルートジュースを摂取した黒バーのほうが多くレップをこなしている。

一方で、80%1RMという高強度ではビートルートを摂取したグループもプラセボグループもレップ数に違いはない。

そして、ベンチプレスではどの強度でもビートルートジュースを摂取してもレップ数が向上していない。

先ほどはベンチプレスで効果が確認されたが、今回の研究ではベンチプレスでは効果がなかったのだ。

それでは、この結果の違いは何が原因なのだろうか?

この研究と先ほどの研究の一番の違いと言えば、先ほどの研究は6日間にわたってビートルートジュースを摂取しているが、今回の研究は1回しかビートルートジュースを摂取していないこと。

つまり、たった1回ビートルートジュースの接種では筋トレのパフォーマンスは向上しない可能性がある。

しかし、今回はどうやらそういうわけでもないらしい。

というのも、2020年に行われた別の研究では、ベンチプレスの2時間前にビートルートジュース70mlを摂取したところ、プラセボと比較してパワー(効果量0.51)とレップ数(効果量0.46)が向上したことが報告されている。(R

ぶっちゃけると、この研究と先ほどの研究で結果が異なる理由は分からない。

そもそも、少ない被験者の筋トレ研究では効果があるサプリでもいつも効果が出るとは限らない

個々の研究で見ると、たまたま効果が出ないときもあるのだ。

そんなときは、いつものように研究を統合した”メタ分析”を見ることにしよう。

硝酸塩でパワーが向上したというメタ分析

そんなとき、私たちに良い指針を与えてくれるのが何を隠そう”メタ分析”。

ということで、2021年の「硝酸塩は筋力を向上させるか?」を調べたメタ分析を紹介しよう。(R

このメタ分析は筋トレ前に硝酸塩(ほとんどがビートルートジュース)を摂取させた研究19件を抜き出したもの。

硝酸塩摂取が筋肉のパワー向上に与える影響に関して調べたものなのだが、結果は以下のようになった。

個々の研究の効果量

抜き出された研究19件の中には、硝酸塩を摂取してもパワーが向上しなかった(0をまたいでいる)ものもある。

しかし、19件すべての研究が硝酸塩を摂取した側にポジティブに傾いている。

そして、全体の結果を表す◆は硝酸塩を摂取したほうが明確にパワーが向上するという結果になっており、その効果量は0.42~0.45。(値は分析法によって若干異なる)

結果として、硝酸塩の摂取は体内のNO量を増やし、ひいてはそれが筋トレのパワーを向上させることが判明したのである。

硝酸塩とシトルリン、同時に摂るとNOが倍増する?

硝酸塩もシトルリンも、NOの増加によって筋トレのパフォーマンスを向上させる。

というのは冒頭で話した通り。

それでは、この2つのサプリを同時に使ったらどうなのだろうか。

ここでもう一度、シトルリン(アルギニン)と硝酸塩がNOを増やす経路について見てみよう。

シトルリン(アルギニン)と硝酸塩がNOを増やす経路

上の図を見ると、左側は硝酸塩が亜硝酸を経由してNOに変換されるというNO3-NO2-NO経路を表している

一方で、シトルリンはアルギニンとNOSを経由して、NOに変換されている。

これはシトルリン-アルギニン-NOS経路である。

実は、この2つの経路は別々にNOを増加させており、交わってはいない。

なので、もし硝酸塩とシトルリンをどちらも摂取したら、NOが増えまくってめちゃくちゃ効果が上がるんじゃないの?という話になる。

実際にこの問題に切り込んだのが2020年の研究。(R

被験者となったのは男女24人で、彼らには2つのグループに分かれてもらった。

  • プラセボを摂取する
  • 520mgの硝酸塩と6gのシトルリン

被験者はシトルリン6gと520mgの硝酸塩を含んだサラダを食べてもらい、週1で筋トレと有酸素運動を含むサーキットトレーニングを行ってもらった。

主な筋トレ種目はレッグプレスで、被験者はトレーニング前の4〜6時間前にシトルリンと硝酸塩を摂取している。

実は、この研究ではあえてトレーニングよりもだいぶ前にサプリを摂取している。

というのも、この研究ではシトルリンと硝酸塩の”急性的な影響”を排除したいから。

わかりやすく言えば、シトルリンと硝酸塩のプレワークアウトサプリとしての効果を調べたいのではなく、シトルリンと硝酸塩を日常的に摂取したらベースのNOレベルが上がって運動パフォーマンスは向上するのか、を調べるのが目的なのである。

8週間後に運動パフォーマンスに関する指標を調べたところ、結果は以下のようになった。

  • レッグエクステンションの筋力に関して、サプリメントグループのほうが向上した!(p=0.008)
  • レッグエクステンションの筋持久力に関して、サプリメントグループのほうが大きく改善したが有意差には届かなかった!(p=0.092)
  • VO2maxと最大パワーに関しても、サプリメントグループのほうが大きく向上したが有意差には届かなかった!(それぞれp=0.168、p=0.286)

レッグエクステンションの筋力に関しては、サプリメントを摂取したグループのほうが向上するという結果に。

他の筋持久力や有酸素運動のパフォーマンスを示すVO2maxなどの指標も、有意差には届かなかったがサプリメントグループのほうが有利という結果になった。

ちなみに、この研究では心血管系などに関する指標も調べられているが、サプリメントを摂取してもそれらの値には全く影響がなかったことが報告されている。

つまり、シトルリンや硝酸塩の摂取でNOが増加すると血流が増えて運動のパフォーマンスが向上するという、最初に提唱されていた説はかなり怪しい。

しかし、NOが他の何らかのメカニズムで運動のパフォーマンスを向上させ、運動のパフォーマンスを向上させるのだ。

硝酸塩を取るときの注意点4選

今までは硝酸塩が効果的という研究を見てきたが、効果がないとした研究ももちろんある。

その一例として、2022年の研究を紹介しよう。(R

被験者となったのは男性16人で、被験者は以下の2グループに分けられた。

  • プラセボを摂取する。
  • トレーニング30分前に硝酸塩180mgを摂取する

サプリメントグループは、トレーニングの30分前に赤ほうれん草エキス2gを摂取した。

この赤ほうれん草エキスには硝酸塩を180g含んでおり、トレーニング後には20gのタンパク質、46gの炭水化物、4.5gの脂肪を含む回復飲料も渡されている。

筋トレはピリオダイゼーションを採用しており、頻度は週3の全身トレーニング。
11週間後に筋力や体組成を計測したところ、結果は以下のようになった。

  • どちらも同じくらい大腿直筋が筋肥大した!(サプリ:+0.29cm、プラセボ:+0.29cm)
  • どちらも同じくらい外側広筋が筋肥大した!(サプリ:+0.18cm、プラセボ:+0.14cm)
  • どちらのグループも同じくらいベンチプレスの1RMが向上した!(サプリ:+13.6kg、プラセボ:+22.9kg)

どちらのグループも筋力が向上し筋肥大もしたが、グループ間で差はなかったのである。

この研究はなぜ効果がなかったのか、いくつかの理由が考えられる。

ということで、硝酸塩で筋トレのパフォーマンスを上げたいときの注意点としてまとめておこう。

注意点1:摂取量が少ないと×

まず一つ目の注意点は、硝酸塩の摂取量が少ないと効果がでない可能性が高いということ。

というのも、今まで効果があるとして紹介した研究は、どれも硝酸塩が400mgは含まれている。

それに対して、今回の研究では硝酸塩は半分以下の180mgしか含まれていない。

この硝酸塩の容量の違いが、異なる研究結果を引き起こしたと考えられる第一原因。

硝酸塩を摂取するなら、1日400mgは摂取するようにすべきだろう。

注意点2:サプリより素材そのまま

異なる結果を生み出した原因として次に考えられるのが、今回は摂取したサプリがビートルートジュースかサラダではなく、赤ほうれん草エキスであること。

というのも、実はビートルートなどに含まれる抗酸化物質がNOの増加に重要と言う説があるのだ。(R

ビートルートジュースに含まれる抗酸化物質が硝酸塩の生理活性を上げるので、抽出物で硝酸塩だけを摂取してもイマイチ効果が出ない。

硝酸塩でNOを増やしたければ、ビートルートジュースやサラダとして抗酸化物質もマルッと摂取するのが吉。

注意点3:そもそもサプリは品質が怪しくコスパが悪い

とはいえ、実はビートルートジュースも大してオススメできないという現実がある。

というのも、ビートルートジュースのサプリメントは会社間、製品間で硝酸塩の含有量が異なっており、ほとんどのビートルートサプリが運動パフォーマンスを向上させる量に達していない。(R

何より、ビートルートジュースサプリは価格が高くコスパが悪い。

スーパーに置いてあるほうれん草を食べるだけで硝酸塩は摂取できるので、野菜から摂取すれば十分だろう。

ちなみに2000年の研究では有機野菜は普通の野菜より硝酸塩が少ない傾向があることが報告されていることに注意。(R

注意点4:マウスウォッシュは使わない

最後に絶対に注意しなければならないことがある。

それは、この研究を含む硝酸塩サプリメントの研究では、マウスウォッシュを使わないように指示されていることだ。

というのも、硝酸塩が亜硝酸塩に変換されるためには、口内細菌が大きな役割を果たす。

なので、マウスウォッシュで口内細菌を一掃してしまうと、硝酸塩を亜硝酸に変換する能力が著しく下がってしまうのだ。

硝酸塩をせっかく摂取しても、マウスウォッシュを使って口内細菌を殺してはうまくNOに変換することができない。

いくら硝酸塩を摂取しても意味がなくなってしまうので、マウスウォッシュは控えるようにしよう。

まとめ:実践的アドバイス

今回は硝酸塩について紹介したので、最後にまとめ。

  • 硝酸塩は運動のパフォーマンスを高める可能性が高い
  • 硝酸塩は400mgは摂取が必要
  • 硝酸塩は野菜など素材そのまま摂取するのが良い
  • 硝酸塩による効果を得たければマウスウォッシュはNG

一昔前は硝酸塩は体に悪いとされていたが、今となっては運動パフォーマンスを向上することが期待されている硝酸塩。

しかも、実は持久系運動に特化しているタイプ1繊維よりもタイプ2繊維のほうが硝酸塩が効きやすいという理論的根拠もあったりする。(R

タイプ2繊維というのは血管が少なく酸素運用能力が低い。

これがタイプ2繊維が疲労を感じやすい原因にもなっているのだが、そのせいでタイプ2繊維では酸素に依存している”シトルリン-アルギニン-NOS経路”でのNOの生産が難しい。

なので、酸素に依存しない硝酸塩からのNO生産はタイプ2繊維にとって大いに助かる可能性が高い。

シトルリン(アルギニン)と硝酸塩がNOを増やす経路

上の図でも、アルギニンからの経路は酸素に依存しており(O2 dependent)、硝酸塩からの経路は酸素に異存していない(O2 independent)ことがわかる。

わかりやすく言ってしまえば、硝酸塩は持久系運動より筋トレに効果が出やすい。

また、NOには筋肥大に重要な衛生細胞を増やす効果があることもわかっている。(R

硝酸塩をサプリで摂取する必要はないが、日常の食事で意識してみるのはGOODな選択肢になるだろう。ぜひお試しあれ!