「筋トレは限界まで追い込め!」
というのは最早過去の話になりつつある。
筋トレは追い込んでも追い込まなくても効果は変わらないし、筋トレ経験者ともなればなおさら筋トレは追い込まない方がいい、ということが研究で示されてきたからだ。
それでは、筋トレはどれくらい追い込まなくてもいいのだろうか。
一言で追い込まないといっても、限界まであと1レップで止めることもあれば、限界まで3レップ手前でセットを終えることもできる。
1レップだけ残した場合と3レップ残した場合では、筋トレの効果は変わらないのだろうか?
ということで、今回は論文から「筋トレはどこまで追い込むべきか?」という話。
実は皆さんが思っている以上に筋トレは追い込まなくても効果が出ることが判明しているのだ。
RIRと速度ロスの関係
筋トレをどこまで追い込むべきかという話は、専門用語を使うと「何RIR残して筋トレを終了するか?」ということに他ならない、というのは以前の記事で紹介した通り。
そして、何RIRを残して筋トレをするかというのは「何RPEで筋トレをするか?」や「何%の速度ロスで筋トレをするか?」ということでもある、というのも以前の記事で紹介した通り。
簡単におさらいをすると、RIRはRPEや速度ロスに変換することができるので、速度ロスに関する研究はRIRに関する研究と見ることができる。
そして実際に、RIRを測定した研究よりも速度ロスに関する研究のほうがタメになるものが多い。
しかし、ここで一つ問題がある。
速度ロスがRIRに変換できるとはいえ、そもそもRIRと速度ロスとの対応が分からなければ話にならない。
ということでまず紹介するのが2020年の速度ロスとRIRの関係性を調べた研究。[1]
被験者となったのはトレーニング歴のある男性20人で、彼らには50%、60%、70%、80%1RMの4つの強度でスミスマシンのスクワットとベンチプレスをしてもらった。
各セットは限界まで追い込んでもらい、その際に速度も同時に記録することで、速度ロスとRIRの関係を定量化した。
その結果が以下の表になる。
この表は「特定の速度ロスは何RIRなのか」を示しているのだが、見方を簡単に説明しよう。
例えば70%1RMのベンチプレスで20%の速度ロスまでベンチプレスをした場合、対応する箇所を見ると被験者は4.7レップをこなしていることがわかる。
そして、4.7レップというのは限界まで追い込んだ場合のたった38.4%しかレップを完了していない。
このときのRIRは7.6レップと、被験者はかなり余力を残してセットを終えたことが見て取れる。
このように、特定の速度ロスに対するRIRを強度別に定量化したのである。
ちなみに全体的な傾向として、どちらの場合も速度ロスを大きく設定してセットを終えたときほどRIRが少ない(=追い込んでいる)と分かるが、これは以前の記事で説明した通り。
ということは、異なる速度ロスを比べた研究はすなわち、異なるRIRを比べた研究とも言えるのだ。
筋力を向上させたいなら追い込まないがいいワケ
早速異なる速度ロスを比較した研究を見ていこう。
筋トレの目的は主に筋力向上と筋肥大の2つに分けられるので、まずは筋力向上に関する話から見ていこう。