世界一分かりやすい「甲状腺ホルモンはどうやってできるのか」

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甲状腺ホルモンってなに?

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甲状腺ホルモンがどうやってできるのか知りたい!

そんな疑問に答えるべく、今回の記事は「甲状腺ホルモンとは何か?どうやってできるのか?」を紹介しよう。

この記事のポイント
  • 甲状腺ホルモンは代謝調節などにかかわるホルモン
  • 甲状腺ホルモンはトリヨードサイロニン(T3)とテトラヨードサイロニン(T4)の2つがある
  • 甲状腺ホルモンはチロシンを出発点にして作られる
目次

甲状腺ホルモンとは?

甲状腺ホルモンとは、ヨウ素が3つのトリヨードサイロニンとヨウ素が4つのテトラヨードサイロニンのこと。

それぞれ別名T3・T4と略して表記されることがあるが、これはヨウ素の数を表している。

ようじゅ

T4には”チロキシン(thyroxine)”というあたかも「甲状腺ホルモンの代表です!!」みたいな別名がつけられています

これは甲状腺で主に作られる甲状腺ホルモンがT4というのが理由。

実際に正常なヒトの甲状腺は一日あたり~85mcgのT4と6.5mcgのT3を産生していると言われている。[1]

しかし実際に作用が強いのはT3のほうで、T4は肝臓や腎臓で脱ヨウ素化してT3として使われることが主なのでT3の前駆体とも言われる始末。

ようじゅ

産生量が多くチロキシンという名前がついているのはT4ですが、実際に活性を示すのはT3とややこしいことになっています

T3とT4からなる甲状腺ホルモンだが代謝に関わる様々な働きがある。[2]

甲状腺ホルモンの働き
  • 代謝の向上
  • 脂肪の合成/分解
  • 糖質の代謝亢進
  • たんぱく質の合成/分解
用語解説
  • 甲状腺(thyroid)
    ”oblong shields”を表すギリシャ語のthureosが語源。盾のような形をしている内分泌腺
  • トリヨードサイロニン(T3)
    甲状腺ホルモンの一種で強い活性を示す。
    「3を意味する”トリ(tri-)”」+「ヨウ素を意味する”ヨード(iodo)”」+「甲状腺関連物質のthyronine」
  • テトラヨードサイロニン(T4)
    産生される甲状腺ホルモンの大部分を占める。
    「4を意味する”テトラ(Tetra-)”」+「ヨウ素を意味する”ヨード(iodo)」+「甲状腺関連物質のthyronine」
  • チロキシン
    英語でthyroxine。”サイロキシン”と読まれることもある。
    「甲状腺を意味する”thyroid”」+「酸素を意味する”ox-”」+「化合物を表す接尾語の”-ine”」

甲状腺ホルモンができるまでの全体像

ここからは甲状腺ホルモンが体内でどうやって作られるかを紹介していこう。

まず初めに概要を説明してしまおう。

甲状腺ホルモンの出発点はチロシンだ。

ヨウ素が一つ付けば「3-モノヨードチロシン(MIT)」になり、ヨウ素が二つ付けば「3,5-ジヨードチロシン(DIT)」になる。

そしてこれらが結合することによって甲状腺ホルモンとなるわけだが、DITが必ず絡んでくるので組み合わせとしてはMIT+DITかDIT+DITしかない。

よってヨウ素の数は最終的に3つor4つになるので、トリヨードサイロニンかテトラヨードサイロニンが完成する。

甲状腺ホルモンの生合成
用語解説
  • チロシン
    英語でTyrosine。「チーズ」を意味するギリシャ語の”turos”とアミノ酸などの化合物を表す接尾語の”-ine”を組み合わせてtyrosineと呼ばれる。チーズから単離されたことに由来する
  • ヨウ素
    英語でIodine。「紫色を意味するギリシャ語の”iodes”」+「化合物を表す”-ine”」。ヨウ素の結晶や気化したものが紫色であることに由来する

甲状腺ホルモンの生合成

ようじゅ

ここからは甲状腺ホルモンが出来るまでの流れをもう少し詳しく説明してみましょう

まず甲状腺は主に濾胞細胞と傍濾胞細胞から構成されている。

この中でも甲状腺ホルモンの精算に関わっているのは濾胞細胞のほう。

”濾胞”とは多くの細胞からなる袋状の構造を意味し、甲状腺でも濾胞細胞に囲まれた”コロイド”と呼ばれる空間が存在している。

甲状腺の構造

ちなみに傍濾胞細胞はカルシウム調節に関わるカルシトニンの調節に関わっており、カルシトニンに由来して別名C細胞(C cell)とも呼ばれる。[3]

ようじゅ

今回は甲状腺ホルモンに関わる話なので、傍濾胞細胞とカルシトニンについては割愛します

用語解説
  • 甲状腺濾胞細胞
    Thyroid follicular cells。主に甲状腺ホルモンの産生と放出に関わる。
  • 甲状腺傍濾胞細胞
    Thyroid parafollicular cells。主にカルシトニンの放出に関わる。

濾胞細胞の細胞質とコロイド空間で先ほど説明したプロセスが次々と行われ、チロシンから甲状腺ホルモンが産生・分泌される。

濾胞細胞とコロイドでの甲状腺ホルモン生合成

①出発点はチロシンの集合体「サイログロブリン」

甲状腺濾胞と呼ばれる区間には”サイログロブリン”と呼ばれるたんぱく質が貯蔵されている。[2]

”サイログロブリン”とよくわからない名前がついているが、要はチロシンの貯蔵形態の一種。

サイログロブリンという形で貯蔵されていることによって、たんぱく質として安定しているうえに溶解が可能となっているのだ。[4]

ようじゅ

グルコースがグリコーゲンという形で蓄えられているのと一緒で、チロシンもサイログロブリンという形で蓄えられています

このサイログロブリンがコロイド内に放出され、ヨウ化物と出合うことで甲状腺ホルモンの産生が始まる。

用語解説
  • 甲状腺濾胞
    英語でthyroid follicles。
  • コロイド
    英語で(Follicle) coloid。甲状腺濾胞細胞で囲まれた空間を指し、サイログロブリンのヨウ素化が行われる
  • サイログロブリン
    英語でthyroglobulin。「甲状腺」を意味する”thyro-”とたんぱく質ファミリーの一つである”globlin”からサイログロブリンと呼ばれる。
  • ヨウ化物
    I-。濾胞細胞の細胞質とコロイド内に蓄えられている。[4]

②チロシン(サイログロブリン)のヨウ素化

コロイド内に放出されたサイログロブリンは、甲状腺ペルオキシダーゼの働きによってヨウ素が付加される。

甲状腺ペルオキシダーゼによるヨウ素の付加

甲状腺ペルオキシダーゼは過酸化水素を利用することによって、チロシンにヨウ化物イオンを付加する。

ようじゅ

便宜上チロシンにヨウ化物イオンが付加したように書きましたが、実際はサイログロブリンに存在するチロシン部分に結合しています

ヨウ素が一つ付加すればモノヨードチロシン(MIT)、二つ付加すればジヨードチロシン(DIT)ができる。

用語解説
  • モノヨードチロシン
    3-Monoiodotyrosine。「1を意味する”mono”」+「ヨウ素を意味する”iodo”」+「チロシンを意味する”tyrosine”」
  • ジヨードチロシン
    3,5-Diiodotyrosine。「2を意味する”di”」+「ヨウ素を意味する”iodo”」+「チロシンを意味する”tyrosine”」
  • 甲状腺ペルオキシダーゼ
    thyroid peroxidase。ペルオキシダーゼは過酸化水素などを用いた酸化を触媒する酵素の総称。”peroxide(-O-O-)”と”-ase(酵素)”の組み合わせ。[2]

③二量体が形成される

ここでヨウ素が一つ付加したMITとヨウ素が二つ付加したDITが出来るわけだが、DITとMITorDITが結合することによってトリヨードサイロニンまたはテトラヨードサイロニンができる。

ここでも反応を触媒するのは甲状腺ペルオキシダーゼである。

甲状腺ペルオキシダーゼによるカップリング反応
ようじゅ

ちなみにT3とT4はいまだにサイログロブリンに付着したままです

④サイログロブリンから甲状腺ホルモンが分離される

この段階まで来ると(T3とT4が付着した)サイログロブリンは濾胞細胞の細胞質内に戻される。

ここでたんぱく質の分解が行われ、遊離型のT3とT4が完成し血中に放出される。

ちなみに甲状腺ホルモンは脂溶性なので、血中では基本的にたんぱく質と結合して輸送される。

血中に放出された甲状腺ホルモンは標的部位に到達することで作用を発揮するが、活性が高いのはT3のほう。

T4のほとんどが肝臓や腎臓で脱ヨウ素化されT3になることによって作用を発揮するので、T4はT3の前駆体とも呼ばれる。

抗甲状腺薬はヨウ素の結合を触媒する”甲状腺ペルオキシダーゼ”を阻害

ちなみに甲状腺ホルモンが過剰になる甲状腺機能亢進症で用いられる”抗甲状腺薬”は甲状腺ペルオキシダーゼの働きを阻害することで甲状腺の過剰産生を防ぐ。

また無機ヨウ素薬などが投与されることもあるが、これはヨウ素を過剰摂取するとサイログロブリンの分解が抑制されるという性質を利用したものである。

甲状腺ホルモンのまとめ

参考文献

1. Gomes-Lima C, Wartofsky L, Burman K. Can Reverse T3 Assay Be Employed to Guide T4 vs. T4/T3 Therapy in Hypothyroidism? Front Endocrinol . 2019;10: 856.

2. Shahid MA, Ashraf MA, Sharma S. Physiology, Thyroid Hormone. StatPearls Publishing; 2023.

3. Cote GJ, Grubbs EG, Hofmann M-C. Thyroid C-Cell Biology and Oncogenic Transformation. Recent Results Cancer Res. 2015;204: 1–39.

4. Coscia F, Taler-Verčič A, Chang VT, Sinn L, O’Reilly FJ, Izoré T, et al. The structure of human thyroglobulin. Nature. 2020;578: 627–630.

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