コレステロールの作られ方が複雑すぎて嫌になってきた...
そんな人向けに、コレステロールの生合成をざっくりと学んでいきましょう
コレステロールとは?
コレステロールといえば体に悪いイメージがある!
そんなイメージがある人も多いと思いますが、生体には欠かせない物質です。
コレステロールは水に溶けない脂溶性物質で、動物が生体内で使うステロールの一種。
ステロールとは、ステロイド骨格のC3位にアルコール基を持つ有機化合物です
歴史的にみると、1784年に初めて胆石からコレステロールが分離された。[1]
そして30年後にフランスの科学者ミシェル・E・シュヴルールがコレステリンと名付けたのだ。
そんなコレステロールの働きには以下のようなものがある。
- 細胞膜の材料
- ビタミンDの前駆体
- ステロイドホルモンの前駆体(コルチゾール・アルドステロン・副腎アンドロゲンなど)
- 性ホルモンの前駆体(テストステロン・エストロゲン・プロゲステロン)
- 脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)の吸収を促進する胆汁酸塩の構成成分
あまり知られていませんが、実はコレステロールは細胞周期の調節にも関わっています。例えばコレステロール治療薬のスタチンは細胞増殖を停止してしまう副作用も...。[3]
コレステロールといえば悪者というイメージがある人も多いと思うが、これはコレステロールとトリグリセリドを運んでいるリポたんぱく質のせい。
実際にコレステロールを多く含むLDLが高く、コレステロールをほとんど含まないHDLが低いと動脈硬化症になるリスクが高くなることが知られている。[2]
LDLが悪玉コレステロール、HDLが善玉コレステロールと呼ばれるのはこのためです。
- コレステロール
cholesterol。
*bile*を意味するギリシャ語のchole+”solid”を意味するギリシャ語のstereos+アルコールを意味する-ol。胆石から分離されたことが由来。 - ステロイド骨格
steroid。3つの六員環と1つの五員環からなる構造。ホルモンやアルカロイド、ビタミンなど様々な物質にみられる - LDL
low density lipoprotein。コレステロールを肝外組織に送る - HDL
High density lipoprotein。肝外組織からコレステロールを抜く
コレステロール生合成
コレステロールの生合成が複雑すぎてわからない!
その気持ちが痛いほど分かるので、ざっくりと覚える方法を紹介します
コレステロールは炭素数27の化合物で、それが炭素数2のアセチルCoAから始まるのでその経路は複雑怪奇。
理解することを主眼に超ざっくり分けると2段階に分けることができる。
- 材料となる活性型イソプレンの生成
- 活性型イソプレンをひたすら合体しまくる
まずは酢酸からリン酸基がついた活性型イソプレン(C5)と呼ばれるものを生成する。
イソプレンはC5にリン酸基がついたもの。リン酸はいい脱離基になるので、いい材料になります
そして、それを合計6個合体させることでスクアレン(C30)という化合物ができる。
あとはスクアレンをちょっといじくれば、めでたくコレステロール(C27)の完成です
余談だがスクアレンまでは動物だろうと植物だろうと菌類だろうと一緒。
そこからの経路が生物によって異なり、動物はステロールとしてコレステロール、植物はスチグマステロール、菌類はエルゴステロールを生成する。
コレステロールはビタミンD3の原料となり、エルゴステロールはビタミンD2の原料となります
参考文献
1. Endo A. A historical perspective on the discovery of statins. Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci. 2010;86: 484–493.
2. Huff T, Boyd B, Jialal I. Physiology, Cholesterol. StatPearls Publishing; 2023.
3. Singh P, Saxena R, Srinivas G, Pande G, Chattopadhyay A. Cholesterol biosynthesis and homeostasis in regulation of the cell cycle. PLoS One. 2013;8: e58833.