「筋トレのRMってなに?」
筋トレ初心者によくある悩みだが、実際に使われるのはRMよりも%1RMのほう。
%1RMとは、簡単に言ってしまえば「どれだけの強度で筋トレをしているか?」の指標である。
今回の記事では、論文からRMと%1RMをご紹介。
実は%1RMというのは、一般的に思われているよりも実用性が低い指標なのだ。
RMと%1RMの意味は”筋トレの強度”
RMは最大反復回数を表す
RMは”Repetion Maximum"の略で、日本語に訳すなら「最大反復回数」といったところ。
筋トレの強度を表す指標として使われており、具体的には重量を表している。
例えばスクワットの1RMなら、「最大反復回数が1回(の重量)」となる。
100kgで1回スクワットをするのが精一杯の人は1RMは100kgだし、60kgで1回スクワットするのが精一杯という人は1RMが60kgとなる。
同様にして、2RMなら「最大反復回数が2回(の重量)」、3RMなら「最大反復回数が3回(の重量)」となる。
ただし、実際には2RMや3RMは滅多にお目にかかることがない。
1RMだけ覚えておけばいいだろう。
実際によく使われる指標は%1RM
そして、実は1RMという言葉もそこまで使われることはない。
筋トレでよく使われるのは”%1RM"という指標で、日本語にするなら「1RMの何%の重さなのか?」を表している。
例えばスクワットの1RMが100kgだった場合、80kgのスクワットは80%1RMとなる。
この%1RMが筋トレの強度の指標として研究ではまぁまぁ使われる。
「別に筋トレの重量をそのまま強度として使えばいいのでは?」と思った人がいるかもしれないが、%1RMには強度を相対化できるメリットがある。
スクワットのMAX重量が100kgの人と70kgの人がいたとしよう。
重量で強度を表してしまうと、例えば60kgのスクワットのときには以下のようになってしまう。
- スクワットのMAX重量が100kgの人:60kgのスクワット
- スクワットのMAX重量が70kgの人:60kgのスクワット
MAX重量が70kgの人のほうが明らかに高強度で筋トレをしているのに、これではどちらが高強度なのかわからない。
ここで%1RMを導入したらどうだろうか。
- スクワットのMAX重量が100kgの人:60%1RM
- スクワットのMAX重量が70kgの人:85%1RM
スクワットのMAX重量が100kgの人は低強度、MAX重量が70kgの人は高強度でトレーニングしていることが一目でわかる。
研究の世界では、研究のたびに被験者が変わる。
そして被験者が変わればMAX重量も変わる。
%1RMのほうが研究間での比較がしやすく、必然的に%1RMが浸透していったのだ。
強度によって筋トレで得られる効果が変わる
筋トレの強度を表す%1RM。
実は強度は筋トレにとって超重要で、強度によって筋肉に起きる変化(筋適応)が変わる。
筋力を上げたければ高強度低レップ、筋持久力を上げたければ低強度高レップの筋トレがいいのだ。
筋肉には”特異性の原理”と言われるものがある。
これは筋肉は普段使っている用途に特化して成長するというもの。
重いものを持つ力(=筋力)を鍛えたければ重いものを持ち上げればいいし、何レップもこなす力(=筋持久力)を上げたければ何レップもこなせばいい。
筋力を鍛えたければ高強度になるし、筋持久力を鍛えたければ低強度の筋トレになる。
「それでは筋肥大はどうなんだ?」という話だが、筋肥大は(ロード)ボリュームに比例することがわかっている。
ロードボリューム = 重量 × レップ数 × セット数
このロードボリュームを増やすには、高重量よりも中重量のほうが効率がいいことがわかっている。
例えば1RMが100kgだったとして、100kgのスクワットを1回だけ行った場合はロードボリュームは100kg。
それに対して、60kgのスクワットを10回行った場合はロードボリュームは600kgになる。
高強度でトレーニングするよりも、強度を落としてレップ数を重ねたほうがロードボリュームを稼げるので筋肥大しやすいのだ。
とはいえ、ロードボリュームを稼げるからといって低強度にしすぎるのもよくない。
実は低強度では中強度よりもボリュームを稼げるが筋肥大しないことがわかっているのだ。
例えば2015年の「15-25レップ vs 8-12レップ」を比較した研究では、低強度のほうが3倍ものロードボリュームを稼いだにも関わらず筋肥大は同程度だった。[R]
筋肥大にはある一定以上の高強度が効果的なことがわかっている。
ボリュームも稼げて強度も低すぎない中強度のトレーニングが適しているのだ。
実際の筋トレで%1RMは使い勝手が悪い
筋トレで得られる効果は強度によって変わる。
なので目的にあわせて強度を設定することは重要になる。
しかし、実は現実世界の筋トレで%1RMを導入する意味はほとんどない。
強度の指標は%1RMではなくレップ数を使えばよい
%1RMが実際の筋トレでは役に立たないのは、強度の指標として%1RMよりもレップ数のほうが使い勝手がよいから。
1RMを測定して、筋肥大したいからその70%の重量で・・・というのは効率が悪く現実的ではない。
わざわざそんなことをしなくても、自分が筋トレで得たい効果に合わせてレップ数調整すればいいだけ。
- 筋力向上:1-5レップ
- 筋肥大:8-15レップ
- 筋持久力向上:20レップ以上
実際に研究でも「70%1RMよりも90%1RMのほうが筋力向上する」ではなく「8-12レップよりも4-6レップのほうが筋力が向上する」のようにレップ数で比較している場合も多い。
%1RMを使うのは手間がかかるだけなので、実際の筋トレではレップ数を強度の指標として使えばいいのだ。
そもそも%1RMの換算表は精度が悪い
そしてもう一つ、そもそも%1RMとレップ数の換算表は精度が悪いことも注意が必要。
というのも、実は1%RMとレップ数の関係は個人差が大きい。
例えば2019年の研究に、トレーニング経験者58人に70%1RMの重さで限界までスクワットをしてもらったものがある。(R)
先ほどの換算表が正しければ、被験者は11レップをこなすはず。
しかし、実際の結果を見てみると見事に予想を裏切られる結果となった。
縦軸のレップ数を見てほしい。
11レップに点が集中している...かと思いきや、実際はてんでバラバラなことがわかるだろう。
この被験者の70%1RMの平均レップ数は16回で、個人の結果にいたっては6~28回とかなりの幅があったのである。
他にも2021年のトレーニング経験者25人を対象にした研究でも同様の結果が得られている。
70%1RMの重さでスクワットをしてもらったところ、こなしたレップ数は平均14回で個人の結果は6-26回だったことが報告されている。(R)
どちらの研究も平均値ですら11回から大きく外れており個人差も大きい。
%1RMとレップ数の換算表はあまりあてにならないのである。
まとめ
今回はRMについてまとめた。
研究の世界では%1RMが強度の指標として使われていたりもするが、実際の筋トレではレップ数をそのまま強度の指標として使うのがいいだろう。
ちなみに「%1RMとRPEやRIRとの関係性はどうなのか?」と思った人もいるかもしれない。
%1RMとRPEは一緒に語られることもあるが、実はこの2つは全く別の概念。
%1RMは強度(重さ)の指標だが、RPEやRIRは「どれだけ筋トレを追い込んでいるのか?」の指標である。
もしRPEについてもっと詳しく知りたいという人がいれば、以下の記事に書いてあるのでこちらをチェックしてほしい。