筋トレはやればやるほど筋肥大する…わけではない


筋トレはやればやるほど筋肉が育つ!

今回は筋トレ界でことあるごとに話題になる「週あたりのセット数と筋肥大」に関する回です。
- 筋トレのセット数は歴史を追って増えてきた
- 2015年前後に「セット数と筋肥大が比例する」ことがメタ分析で見つかる
- 筋トレのセット数は経験にあわせてどのように考えればいいのか?
筋トレしている人にとって絶対に考えなければいけないセット数。
今回は”筋肥大したい人”がセット数をどのように考えるべきなのかを見ていきます。
1940-1980年代のボディビル界隈
実際の研究に入る前に、まずはボディビル界でセット数がどのように変遷してきたのかを見てみましょう。
ボディビル黎明期の1900年代前半、実はボディビルダーですら週3で全身をちょっと鍛えて終わりみたいな筋トレをしていた。
誰もが知る筋トレ界のスター”アーノルドシュワルツネッガー”。
その憧れの人でもある1950年頃に活躍したレジパークは、下記のように語っている。
多くのボディービルダーは体の部位ごとに数セットしかトレーニングしていない。自分の体が十分に発達し始めたのは部位ごとに10-20セットやり始めてからだ
実際にレジパークの時代に生きたボディビルダーは、それ以前の時代に生きたボディビルダーよりだいぶ体が発達している。
それはレジパークに言わせれば「今まではセット数が足りないから筋肉が大してつかなかった」ということになります
スプリットルーティンでセット数が爆増する
そして、このレジパークに憧れてボディビル界に入ってきたのがかの有名なアーノルド・シュワルツネッガー。
レジパークの考えを引き継いだアーノルドシュワルツネッガーの活躍もあり、この時期にセット数がめちゃくちゃ増えます
実は今あるスプリットルーティンが開発されたのもこの時代。
セット数が増えたことによって一日で全身を鍛えることが不可能となり、分割する”スプリットルーティン”が生まれたのだ。
ちなみにアーノルドシュワルツネッガーが実際にやっていた筋トレ量は1筋群20セット以上×週2-3回。

一つの筋群を週60-70セットぐらい鍛えるという高ボリューム時代に突入します
ちなみにこのハイボリューム時代にも、「筋トレはもっと少なくてもいい、週3全身鍛えるだけで十分だ!」みたいなことを言ってる人がいた。
その主張に対してアーノルド・シュワルツェネッガー本人は、「新しい科学的アプローチと銘打った旧式トレーニングでは不完全な体しかできない!」と主張。

このように1900年前半から1970年代ぐらいの50年間ぐらいで、ボディビル界隈ではどんどんセット数が増えていきました
1セット vs 複数セット
セット数が増えまくっていたボディビル界隈だが、この時代の一般人は1回1セットが普通。
1回で複数セットを行うのはあくまでボディビルダーだけで、研究者の中には「1回複数セットは1回1セットよりも効果が高いとは言えない」と主張する人もいた。

ボディビルダーが複数セットの筋トレをしていることは知られていましたが、実際にそれが効果あるのかは分からないというのが常識でした
そんな中、1回1セットと1回複数セットを比較したメタ分析が登場。
「1回1セット vs 1回複数セット」を比較した研究。
抜き出された研究は8件。
この研究を含むボリューム研究で注意しなければならないことがある。
それは、セット数は基本的に”間接的に”筋肉を使ったものも含まれているということ。
たとえば上腕二頭筋にはダンベルカールだけでなくベントオーバーロウやラットプルダウンが含まれているし、上腕三頭筋にはベンチプレスやショルダープレスも含まれていることになる。
つまり、研究でいうセット数というのは、現実に換算したときにはかなり少なくなることがほとんど。

上腕二頭筋を週20セットと聞くとめちゃくちゃ多い気がしますが、背中のトレーニングを含めたら週20セットくらいは行く人が多いと思います
このメタ分析の結果、筋トレのセット数を増やすほど筋肥大することがわかった。
もっと具体的に言うなら、1セット<2-3セット<4-6セットと右肩上がりに筋肥大することがわかったのだ。
とはいえ、この研究には限界もある。
それは”用量依存性の関係”がどこまで右肩上がりになるかは不明だということ。

実際にこのメタ分析に含まれているのはせいぜい12セットほどなので、13セット以上の高セットでも右肩上がりになるのかは不明でした
週のセット数と筋肥大が比例した
その次に出てきた(おそらく筋トレ界で最も有名な)セット数の研究が2017年のメタ分析。
結論を先に言うと、この研究でもセット数を増やすほど筋肥大する”用量依存性の関係”が見つかります。
筋トレのセット数と筋肥大の関係を調べた研究。
抜き出された研究は15件。
結果は五セット未満が+5.5%の筋肥大、5-9セットが7.2%の筋肥大、10セット以上が+8.6%の筋肥大となった。
つまりこの研究でもセット数が増えるほど右肩上がりに筋肥大することがわかったのだ。
そしてこの研究でわかったことはもう一つある。
それはセット数を増やすことによる筋肥大効果はだんだん先細りになるということ。
具体的に週10セット以上の筋肥大を100としたときに4セットまでの筋トレが占める割合は64%。
その次の5-9セットが20%、そこからさらに追加するセットっていうのは16%という風に次第に効果が下がっていくことがわかる。
つまるところ、筋トレの世界でよく言われる”収穫逓減の法則”が見つかったのだ。
ちなみに、このメタ分析に含まれる研究には重要な特徴が2つある。
- 特徴①週10セット未満の研究がほとんど
- 特徴②被験者は筋トレ初心者ばかり

これらの特徴から、巷でよく言われる「筋トレ初心者は週10セットから」という理論が誕生しました。
2024年のメタ分析
2010年、2017年のメタ分析で発見された用量依存性。
そしてこのメタ分析には共通する弱点がありました
それは20セットを超えるような高ボリュームの研究がほとんどないということ。
これはどちらのメタ分析でも言及されていることであったがゆえに、ここ数年で高セットの研究がたくさん出てきた。
そしてその高セット研究もあわせて「筋トレのセット数と筋肥大の関係」を調べたのが今回紹介する2024年のメタ分析です