ジムに通っていると、ベンチプレス時に足をベンチの上に載せている人を見たことがあるかもしれない。
そこまでレアではない光景だが、ベンチプレスの方法としては見るからに不安定そう。
実際、やってみれば分かるが足で踏ん張るより明らかに重量は落ちる。
しかし、筋肥大という意味では意外と理にかなった方法。
というのも、足上げベンチプレスは大胸筋の刺激が増えることが分かっているのだ。
足上げベンチプレスで全ての筋活動量が増えた
今回紹介するのは2019年にアリメリア大学が行った研究。(R)
「足を上げたベンチプレスってどうなの?」を調べた研究で、対象となったのはベンチ歴4年以上のトレーニー20人。
被験者に60%の1RMでベンチプレスをしてもらい、そのとき大胸筋・三角筋前部・上腕三頭筋・腹筋・太ももの5ヶ所の筋活動を計測。
ベンチプレスは2パターン行われ、足を地面につけた状態と足上げ状態。実際の写真は以下の通り。

足を地面につけるパターンのときは、背中はベンチにつけた状態でベンチプレスが行われている。
ほとんどの人が(おそらく)しているように背中でアーチを作ったり足を踏ん張ったりはしていない。
一方で、足を上げた状態では股関節と膝を90度曲げるように指示。
「この状態でベンチプレスなんか出来るの?」と思うくらいかなり不安定な状態。
どちらもグリップ幅は肩幅の150%で(小指がグリップリングにかかるくらい)にしてもらい、8レップを1セット行ったときの筋活動を測定したところ以下のような結果に。

全ての筋肉において足上げベンチプレスのほうが筋活動は高いという驚き(?)の結果に。
まず腹筋(RA)・腹斜筋(EO)・大腿直筋(RF)の筋活動が高いが、これは不安定な足を維持するために使われているだろうと思われ、直感的にもわかる話。
ここからが本題。
ベンチプレスのメインターゲットである大胸筋も、全て足上げのほうが筋活動が高いのである。
効果量としては大胸筋中部(PMMF)がわずかな効果で、大胸筋上部(PMUF)・大胸筋下部(PMLF)・三角筋前部(AD)・三頭筋(TB)は小さい効果となっている。
一般的に体の安定性が変わると筋活動も変わる。
姿勢制御のためにさまざまな筋肉が動員されるのである。
体が不安定なことで多少重量は落ちるが、筋肉の刺激という意味では全ての筋肉で効果が高い。試してみる価値は十分にあるだろう。
スミスマシンベンチプレスでは足上げでも筋活動は変わらなかった
この分野はほとんど研究されていないが、似たような研究としてアパラチアン州立大学の論文がある。(R)
21人の男性トレーニーを対象にした研究で、こちらは3パターンのベンチプレスにおける筋活動を測定したもの。
- 足を地面につける
- 足をベンチの上に乗せる
- 足を別に用意したベンチの上に乗せる
被験者にスミスマシンでベンチプレスをしてもらい、大胸筋(PM)・三角筋前部(AD)・上腕三頭筋(TB)・内側広筋(VM)・上腕二頭筋(BF)・腓腹筋(G)の活動量を調べたところ以下のような結果に。

先ほどの研究と違い、どの筋肉も同じような活動量だった。
この理由として考えられるのは2つ。
まずは、足をベンチに置いて安定性を高めてしまうと、結局地面に足を置いた場合と変わらないという可能性がある。
もう一つの理由としては、スミスマシンはバーの軌道が固定されており、安定性が高くなっていることが挙げられる。
研究者は「どの筋肉も活動量は変わらなかった」と結論しながらも、「スミスマシンは安定性が高いので、フリーウェイトで同じ結果になるかは分からない」と付け加えている。
まとめ
足を地面につけるか足上げベンチプレスかで体の安定性が大きく変わる。
そのため筋肉の活動量が変わるのは間違いないし、全ての筋肉の刺激を増やす可能性は十分にある。
なので、ベンチプレスのパターンとして手札に加えておくのがおすすめ。ぜひお試しあれ!
