「筋肉は遅筋と速筋で鍛え分けよう!」
筋トレ中級者なら一度は聞いたことがあると思う話だが、これは本当なのだろうか。
この記事では、「筋トレは筋繊維別で鍛えるのは効果があるのか?」を解説。
かの有名なアーノルドシュワルツェネッガーも「遅筋優位のふくらはぎは高レップで鍛えろ!」と言っているわけだが、実は筋トレは高重量低で遅筋も速筋も両方鍛えることができる。
筋肉には速筋と遅筋がある
そもそもなぜ筋トレで繊維別に鍛えろ!と言われるのだろうか。
実は「筋トレは繊維別に鍛えると効果的」とする理論自体はそれなりに説得力がある。
筋肉は筋繊維の集合だが、その筋繊維はおおまかに2タイプに分類される。
- Ⅰ型繊維:長時間にわたって弱い力を発揮するのが得意。有酸素運動などに使われる。別名「遅筋」。
- Ⅱ型繊維:大きなパワーを一瞬だけ出すのが得意。筋トレなどに使われる。別名「速筋」。
歩行などの持久的な動作に使われるのが遅筋で、筋トレなどの瞬発的な動作に使われているのが速筋。
筋トレで言えば、(実際にどうかは別として)20-30レップの高レップ帯は遅筋が優位で、4-6レップの低レップ帯は速筋が優位となる可能性がある。
なので、高レップで筋トレをすれば遅筋繊維がよく使われるので遅筋が筋肥大し、低レップで筋トレをすれば速筋繊維がよく使われるので速筋がよく筋肥大するというのだ。
つまるところ、レップ数を操作することによって遅筋と速筋を鍛え分けることができる、というのが繊維別トレーニングの理論になる。
実際に遅筋優位のふくらはぎを高レップvs低レップで比較した
理論的には可能性がありそうな繊維別トレーニングだが、実際にレップ数を変えることで筋繊維を鍛え分けることができると実証されているのだろうか?
ということで、まず紹介するのは2020年の研究。(R)
被験者となったのはトレーニング未経験者26人で、カーフレイズで片足ずつを異なるレップ数で鍛えた。
- 6-10レップの低回数グループ
- 20-30レップの高回数グループ
頻度は週2回で、片足を低レップ、もう片方の足を高レップで鍛えた。
そしてこの筋トレを8週間してもらった後、この実験ではヒラメ筋と腓腹筋の筋肥大を調べた。
- ヒラメ筋:8割が遅筋
- 腓腹筋:遅筋と速筋が半々
実はヒラメ筋は8割が遅筋という校正なのに対して、腓腹筋は遅筋と速筋が5:5。(R)
もしレップ数によって筋肥大する繊維が異なるなら、ヒラメ筋は高回数でより筋肥大するという結果になるはず。
この仮説を確かめるために8週間の筋トレ後に両者の筋肥大を測定したところ、以下のような結果に。
結果で注目するべきは、下の段にある「低負荷ー高負荷」の値を示したグラフ。
このグラフを見ると、腓腹筋でもヒラメ筋でも0をまたいでプラスにもマイナスにも分布していることがわかる。
これは結果に差がなかったことを表している。
つまり結果を一言で表すなら、腓腹筋もヒラメ筋も低負荷だろうが高負荷だろうが同じように筋肥大したのだ。
繊維別の筋肥大を調べた研究まとめ
先ほどの研究ではレップ数に関わらず速筋も遅筋も同様に筋肥大するという結果になっていた。
それでは他の研究はどうなのだろうか?
ここで2018年に行われた「レップ数の違いで筋繊維別の肥大は起きるのか?」を調べたレビュー論文を紹介しよう。(R)
このレビューは繊維別筋肥大について調べた研究8件を抜き出したもの。
ただし、この中には「1RMの15%で全然追い込んでいない」などの現実のトレーニングとはかけ離れたあまり参考にならない研究も含まれてしまっている。
なので、できるだけ現実に近い設定だろうと思われる研究を抜き出すと、その数はたった5件。
それぞれの研究結果を抜き出すと以下のようになる。(R、R、R、R、R)
一番下にそれぞれの研究結果から弾き出した平均値を示したが、この数値を見るとざっくりと「高負荷のほうが速筋も遅筋も筋肥大する」という結果に見える。
- Ⅰ型繊維は高負荷でも低負荷でも同じくらい筋肥大した!
- Ⅱ型繊維は高負荷のほうが筋肥大した!
これだけ見ると高負荷トレーニングさえしたらOKとなりそうなところだが、ここで一つだけ注意点がある。
それは、いくつかの研究で高負荷のほうが筋肥大に有利な条件となっていること。
例えば2002年のcamposの研究では、高負荷のほうがセット数は多く休憩時間も短くなっている。(R)
- 高負荷:4セット×セット間休憩3分
- 低負荷:2セット×セット間休憩1分
現段階では、セット数が多いことは筋肥大にかなり有利とされている。
加えて、休憩時間も長くなるほどボリュームが増える傾向があるので、これまた筋肥大に有利。
つまり、全般的に高負荷の方が筋肥大に有利な結果が出やすいのだ。
他にもVinogradovaの研究では、高負荷はストレートセットと一般的な筋トレなのに対して、低負荷はスロースピードのクラスターセットという珍しい方法で行われていたりする。(R)
これらのように一部の研究はその方法があまり比較にふさわしくないのだ。
とはいえ、これら2つの研究を抜かして考えても、結果を見ると高負荷に軍配があがるだろう。
高負荷で行う従来の筋トレのほうが速筋も遅筋も鍛えられるので、「低負荷トレーニングをする時間があるなら、従来の筋トレのセット数を増やしてボリュームを稼ぐ方が有意義」というのが結論になるだろう。
まとめ
今回は「筋トレの筋繊維別トレーニング」についてまとめた。
低負荷でトレーニングしても、高負荷よりもⅠ型繊維が筋肥大するどころか、Ⅰ型繊維もⅡ型繊維も育たない可能性すらある始末。
わざわざ低負荷トレーニングを取り入れるべきかというと、かなり疑問なところだろう。
基本的には「週にやるセット数」が増えるほど筋肥大する傾向があるので、低負荷トレーニングをする時間があるなら普通の筋トレを増やすほうがいい。
以下の記事では「週のセット数と筋肥大」について詳しく解説しているので、読んでない人はこちらの記事もあわせて読むと理解が深まるのでオススメ。