筋トレの休憩時間は何分がベストなのかを論文で徹底解説

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「筋トレのセット間は1分休もう!」

というのが一昔前の常識だった。

ところがどっこい、現在では「3分の長時間休憩を取ろう!」みたいな話が主流になりつつある。

以前書いた食事回数に関しても、昔は1日6食とか言われていたのに今ではすっかり断食ブームとなっていたり、意外と科学界でも流行り廃りが激しいのである。

要するに、この休憩時間に関しても多分にもれずいわゆる”トレンド”が存在しており、それは先ほども話したように長時間の休憩である。

ということで、少々時間を遡りつつ筋トレセット間の休憩時間、すなわち”レストインターバル”について紹介しよう。

なぜ3分休憩が1分休憩に取って代わったのか?そもそもレストインターバルを”決める”必要があるのか?というのが今回の主題である。

目次

筋肥大のメカニズム:ホルモン仮説

まず初めに、なぜ一昔前の科学界で”1分程度の短い休憩”が推奨されていたのか?

そのことを説明するためには、新しい理論体系をまた一つ導入しなければならない。

それが”ホルモン仮説(Hormone Hypothesis)”というものである。(R

このホルモン仮説というのは、平たく言えば「筋トレ直後のアナボリック(筋肉同化)ホルモンの急上昇が筋肥大をもたらす!」というもの。

ここでいうアナボリックホルモンとは、具体的には成長ホルモン(GH:Growth Hormone)やテストステロン(Testosterone)のことである。

実は、筋トレ直後にこのアナボリックホルモンが急上昇するのである。

具体的に古典的な研究として1993年の「高ボリューム vs 高強度」を比較した論文がある。(R

被験者となったのはストレングスアスリート(ボディビルダーやパワーリフター)10人で、別日に2つの筋トレセッションをしてもらった。

  • セッションA:1回 × 20セットの超高強度トレーニング(100%1RM)
  • セッションB:10回 × 10セットの超高ボリュームトレーニング(70%1RM)

セッションAの日は、ひたすら100%のスクワット1回を20セット繰り返すというパワーリフターも真っ青な超高強度セッション。

そして、高ボリュームのセッションBではボディビル式のスクワットを10セット行うというこちらもなかなかの鬼畜セッション。

生まれ変わってもこの研究の被験者にだけはなりたくない。

この研究では筋トレ前後の成長ホルモンとテストステロンを計測することが目的なのだが、その結果は以下の通り。

筋トレによるホルモン分泌(左:テストステロン 右:成長ホルモン)
筋トレによるホルモン分泌(左:テストステロン 右:成長ホルモン)

まず、左側のテストステロンから見てみよう。

高強度のセッションAは筋トレ中も変化は見られないが、高ボリュームのセッションBではテストステロン値の急上昇が起きていることがわかる。

そして、特に「高強度 vs 高ボリューム」での差が激しいのが、右側に示した成長ホルモンである。

高強度のセッションAでは4.6倍しか成長ホルモンが増えていないのに対して、高ボリュームのセッションBではおよそ200倍も成長ホルモンの量が増えていることがわかる。

要するに、高強度ではなく高ボリュームに対してアナボリックホルモンが爆増することが判明したのである。

そして、もう一つ大事なこととして「ボリュームが高いボディビル式のほうが高強度のパワーリフター式より筋肥大する」ということが当時から知られていた。

これらの知見を合わせたとき、以下のようなロジックが生まれるのは必然である。

高ボリュームの筋トレ→直後にアナボリックホルモンが爆増→筋肥大!

このロジックこそが、いわゆる”ホルモン仮説”である。

筋トレ直後のアナボリックホルモンの分泌こそ、筋肥大に重要だと思ったのである。

そして、このホルモン仮説という立場で考えたとき、当然ながら「筋トレ直後のホルモン上昇が大きいほど筋肥大も大きい」という推測が成り立つ。

では、そもそもなぜ高ボリュームだと筋トレ直後のアナボリックホルモンが爆増するのか?という話になる。

そこで当時の研究者が目をつけたのが”疲労(Fatigue)”である。

というのも、高強度セッションに比べて高ボリュームセッションのほうが疲労が大きいというのは直感的にも理解できる。

その上、高ボリュームトレーニングでは被験者が筋トレの強度を保てなかった、という客観的事実もあったからである。

トレーニングの核セットによる使用重量(左:高強度トレーニング 右:高ボリュームトレーニング)
トレーニングの核セットによる使用重量(左:高強度トレーニング 右:高ボリュームトレーニング)

左側の高強度トレーニングではセット数を重ねても使用重量がそこまで落ちていない。

一方で、右側の高ボリュームトレーニングではセット数を重ねるごとに使用重量が落ちていることがわかる。

この結果があったので、著者は「高ボリュームトレーニングは疲労が激しく筋トレの強度が保てなかった」と結論したのである。

そして、やんわりとこれがホルモンの爆増にも関係しているのでは?と言ったわけである。

つまり、ホルモン仮説は以下のようなロジックになるのである。

高ボリューム→疲労が大きい→アナボリックホルモンの上昇も大きい→筋肥大も大きい!

さらに、このロジックを確固たるものにしたのが1999年の「成長ホルモンと筋肥大の関係性」を調べた研究。(R

この研究は11人の男性被験者を対象に、12週間の筋トレを行ってもらい、筋トレによる成長ホルモンの上昇とタイプ1繊維、またはタイプ2繊維の筋肥大率の相関関係をそれぞれ図示したもの。

成長ホルモンと筋繊維肥大率の関係(左:タイプ1 右:タイプ2)
成長ホルモンと筋繊維肥大率の関係(左:タイプ1 右:タイプ2)

どちらのタイプの筋繊維においても「筋トレによる成長ホルモンの上昇値が大きい人ほど筋肥大も大きい」という関係性が見つかったのである。

しかも、相関係数はタイプ1で0.74、タイプ2で0.71と、どちらも”強い相関”に入る値である。

こういった”相関”に関する話でよく言われることだが「相関≠因果」である。

つまるところ、成長ホルモンの上昇と筋肥大に相関関係はあっても、成長ホルモンの上昇が筋肥大の原因であるとは言えないのである。

そして、結論から言うと今ではホルモン仮説は時の試練に耐えられず、相関こそあれど筋肥大の原因ではないとされている。(RR

しかし、それはひとまず置いておこう。

というのも、このホルモン仮説が(それなりに)正しいと思われていたからこそ1分程度の休憩が筋肥大に有効とされ、それが世間一般にまで広く受け入れられるようになったからである。

ひとまずは、当時の人々のようにこのホルモン仮説が正しいとして話を進めてみよう。

短いレストインターバルで成長ホルモンがめっちゃ出る

もしホルモン仮説が正しいとしたら、セット間の休憩時間はどれくらい取ればいいのか?

それは当然、短い休憩の一択であろう。

先ほどのロジックで考えるなら「短い休憩時間は疲労も大きいのでアナボリックホルモンの上昇も大きい」と考えられるから。

そして、それは”より筋肥大すること”を意味するのである。

そして、実際に1990年と1993年に”ウィリアム・クレーマー”という人が行った研究によって「短い休憩時間が成長ホルモンの急上昇を引き起こす」ことが実証されることになる。(RR

1990年の研究は男性を被験者に、1993年の研究は女性を被験者にしているが、研究デザインと結果はどちらも同じ。

この研究では、トレーニングによって”ボリューム/休憩時間”の比を変え、筋トレ直後のホルモン変化を調べたもの。その結果得られた成長ホルモンの変化率は以下の通りである。

各筋トレ条件における成長ホルモンの分泌量
各筋トレ条件における成長ホルモンの分泌量

まず、一眼見て明らかに成長ホルモンが爆増しているトレーニング条件があることに気づく。

下を見ると”10/1”と書いてあるが、これは”10レップス/休憩時間1分”という筋トレ条件を意味している。

要するに、最もボリュームに対する休憩時間が短いという条件において、成長ホルモンの分泌量が最も大きかったのである。

これは今でも覆っておらず、例えば2009年のトレーニー女性12人を対象にした研究では、30秒の休憩は60秒や120秒の休憩と比べて成長ホルモンの分泌が大きかったことが報告されている。(R

2005年の論文に「筋トレとホルモンの分泌量」についてまとめた論文があるが、筋トレによるアナボリックホルモンの分泌が高くなるのは「高ボリュームや短い休憩時間」のような条件。(R

言わずもがな高ボリュームと言うのは、現在においても筋肥大に有利であろうとされている条件であり、こちらも未だに否定されていない。

となると、もし短時間の休憩時間でも筋肥大効果が高いことが実証されれば、ホルモン仮説はその理論的正しさをさらに強固なものにするだろう。

ところがどっこい、この”短時間の休憩時間が筋肥大効果が高い”というのが実証されなかったのである。

1分休憩だとね、短すぎるんですよ

まず、この分野で”長期的”かつ”筋肥大の直接測定をした”という研究はほとんど存在しない。

多くの研究がレストインターバルを変更し、”挙上速度”、”レップ数”、”ボリューム”などを測定した間接的研究ばかりである。

(1回筋トレをさせて終わり!みたいな急性期研究が多い。研究者もできるだけ楽したいのである。)

とはいえ、直接的な証拠が全くないわけではない。

代表的なものとして、筋トレ研究界の巨人である”ブラッド・ショーンフォールド”が行った2016年の研究がある。(R)(エビデンスベーストレーニーで彼を知らないやつは間違いなくモグリ。)

被験者となったのはトレーニー男性23人で、「3分の休憩 vs 1分の休憩」で2つのグループに分けた。

筋トレとしては7種目の全身トレーニングを週3で行うというもの。

それぞれの種目は8-12レップスのボディビル式で行わせ、8週間後に筋肉量と筋力を測定した。

以下に結果をまとめた。

  • 長い休憩時間のほうがより多くのロードボリュームをこなした(3分:51,385kg vs 1分:44,755kg)
  • 3分休憩のグループだけが上腕二頭筋の筋肥大を達成した!(3分:+5.4% vs 1分:+2.8%)
  • 3分休憩のグループだけが上腕三頭筋の筋肥大を達成した!(3分:+7.0% vs 1分:+0.5%)
  • どちらも大腿四頭筋が筋肥大したが、筋肥大率は3分休憩グループのほうが高かった!(3分:+13.3% vs 1分:+6.9%)
  • どちらのグループも外側広筋が筋肥大した!(3分:+11.5% vs 1分:+10.0%)

結果を要約すると、長く休憩時間を取ると多くのボリュームをこなせるので、3分休憩グループのほうが総じて筋肥大に有利、ということになる。

ちなみにこの研究では筋力に関しても調べられており、ベンチプレスとスクワットのどちらにおいても3分休憩グループのほうが好成績を納めている。
(スクワット:3分休憩+15.2% vs 1分休憩+7.6%)(ベンチプレス:3分休憩+7.0% vs 1分休憩+0.5%)

他には、2009年に「1分休憩 vs 2.5分休憩」を比較した研究が行われている。(R

被験者となったのはトレーニング経験のある男性12人で、10週間にわたって週2の筋トレをしたというもの。結果は以下の通り。

  • 2.5分休憩グループのほうが腕が筋肥大した!(2.5分:+12.3% vs 1分:+5.1%)
  • 脚の筋肥大も2.5分休憩グループのほうが有利だった!(2.5分:+6.6% vs 1分:+3.1%)

この研究でも、2.5分と長い休憩時間を取るほうが有利だったのである。

そして、この研究では筋トレ後のホルモン分泌量も調べられているのが、その結果がなかなか面白い。

1週目、5週目、10週目におけるホルモン分泌(左:テストステロン 右:成長ホルモン)
1週目、5週目、10週目におけるホルモン分泌(左:テストステロン 右:成長ホルモン)

テストステロンも成長ホルモンも実験開始当初こそ1分休憩グループのほうが分泌量が多いが、実験開始から5週間もすれば2.5分休憩グループと変わらない値に落ち着いている。

つまるところ、人間は良くも悪くも”慣れる”のであろう。

この研究は”長期的に見たらホルモン分泌量は変わらないかもしれない”という可能性を示し、これがホルモン仮説がうまくいかない理由かもしれない。

何はともあれ、休憩時間を短くしてホルモン分泌量を上げるより、休憩を長く取りセッションをしっかりこなすほうが、ボリュームの増加に繋がり筋肥大には有利なのである。

それでは1分という短い休憩と3分ではなく、もっと長い休憩時間はどうなのだろうか?

5分休憩は長すぎる?と思いきや、そういうわけでもない

ということで、次に紹介するのは2005年のトレーニング経験者13人を対象にして「2分休憩 vs 5分休憩」を比較した研究。(R

この研究では被験者に6ヶ月間の筋トレをさせたところ、2分休憩も5分休憩も筋肥大にも筋力向上にも差がなかったことが報告されている。

それでは5分休憩が長すぎるのか?というと、そういうわけではない。

この研究ではロードボリュームが揃えられているのである。

つまるところ、短い休憩時間では1セットでこなせるレップ数が少ないので、その分セット数を増やしたのである。

よくよく考えてみれば、短い休憩時間であれば余った時間で簡単にセット数を追加することができる。

であれば、長い休憩時間で少ないセット数をこなすより、短い休憩でより多くのセット数をこなすほうがいいのでは?という話になる。

この問題に切り込んだのが2020年の「ロードボリュームを揃えたら休憩時間に関わらず筋トレ効果は同じなのでは?」を調べた研究。(R

被験者となったのはトレーニング未経験者28人で、被験者を4つの条件に振り分けてレッグプレスをさせた。

まず基本となるのは2つのグループ。

  • ①長い休憩グループ:3分のレストインターバルで16.1レップを3セット
  • ②短い休憩グループ:1分のレストインターバルで9.8レップを3セット

次に、この2つのグループとロードボリュームが同じになるまでセットを加えたグループをもう2つ作る。

  • ③短い休憩グループ(=長休憩と同ボリューム):1分のレストインターバルで11.6レップを4.5セット
  • ④長い休憩グループ(=短休憩と同ボリューム):3分のレストインターバルで13.4レップを2.3セット

ロードボリュームで見ると、①と③はおよそ133,600kgのロードボリュームをこなし、②と④はおよそ96,300kgのロードボリュームをこなしている。

ロードボリュームにすると①&③は、②&④に比べて39%多いボリュームをこなしている。

10週間に及ぶ実験終了後、筋肥大率を測定したところ以下のようになった。

  • ロードボリュームが同じ①と③は同じくらい筋肥大した(①:+13.1% vs ③:+12.9%)
  • ロードボリュームが同じ②と④も同じくらい筋肥大した(②:+6.8% vs ④:+6.6%)

結果を要約すると、ロードボリュームが同じなら筋肥大率はレストインターバルに関わらず同じであり、レストインターバルに関わらずロードボリュームが大きいほど筋肥大したのである。

この結果から考えても、短い休憩時間で多くのセット数をこなすべきか、長い休憩時間でセットをしっかりこなすべきか、という問題に関して、現時点で明確な答えは無さげ。

とはいえ、現実的にセット数でボリュームを操作することが多い。

なので、ここからはセット数が同じだと仮定したときの筋トレのボリュームを下げないレストインターバルについて考えることにする。

休憩とボリュームの関係を示した論文6本、そして8分休憩という選択肢

休憩時間によってボリュームがどう変わるか?を調べた研究がいくつかあるので、特にトレーニング経験者を対象にした研究をいくつか抜き出してみよう。(ちなみに全て男性)

  • ベンチプレスとマシンフライで休憩時間「1分 vs 3分」を比較したところ、どちらの種目でも3分休憩グループのほうが多くのボリュームをこなした!(R
  • スミスマシンベンチで休憩時間「1.5分 vs 3分」を比較したところ、3分休憩グループのほうがより多くのボリュームをこなした!(R
  • スクワットとベンチプレスで休憩時間「1分 vs 2分 vs 5分」を比較したところ、5分>2分>1分の順で多くのボリュームをこなした!(RR
  • ベンチプレスで休憩時間「1分 vs 2分 vs 3分 vs 5分」を比較したところ、5分だけが多くのボリュームをこなした!(R

何やら色々書いたが、どの研究も結論は全部一緒。

それは長く休めば休むほどボリュームは上がるという単純明快な結論である。

他には2020年の研究ではベンチプレスで休憩時間「2分 vs 5分 vs 8分」を比較した、バカみたいに長い休憩時間の研究も行われている。(R

そして、この研究を見ると現実的な時間の問題を度外視した場合、8分休憩は従来の最高値である5分休憩よりさらに有利だろうと思われる。

この研究結果を理解するために、前提条件をいくつか共有しておきたい。

まず、この手の研究では被験者は各セットで限界まで追い込んでいる。

なので、1セット目より2セット目のほうが当然レップ数が下がるし、2セット目より3セット目のほうがさらにレップ数が下がる。

だからこそ、休憩時間を長くとるほどレップ数を維持できるので、ボリュームを稼げて筋肥大にも有利になるのである。

この研究でも同様で、各セットをこなすごとにレップ数が下がっていくのだが、休憩時間別の最終セットでのレップ数は以下の通り。

  • 2分休憩:1セット目6.4レップス→4セット目1.93レップス
  • 5分休憩:1セット目6.4レップス→4セット目3.40レップス
  • 8分休憩:1セット目6.4レップス→4セット目5.40レップス

つまるところ、8分も休憩すれば1セット目からほとんどレップ数を落とすことなく4セットのベンチプレスを完遂することができたのである。

なので、この8分という数字は実質的に休むことで利益を得られる上限値に近いと思われる。(例えば、20分休んだからといって1セット目よりレップ数が”増える”のはありえないんでね)

とはいえ、8分も休むというのは現実的ではないし、おそらくそもそも8分も休む必要はないと言えるだろう。

というのも、先ほどの前提条件で言ったが、これらの研究は基本的に限界まで追い込んでいるからである。

裏を返せば、筋トレで限界まで追い込んでいなければここまで休む必要がないと思われるからである。(ちなみに、筋トレは追い込む必要はない。)

じゃあ何分休めば良いのか?と言う話になるが、現実的な問題も考えるとおおよそ3〜5分が妥当なのではないかと思われる。

ちなみに今まで紹介した研究は全てベンチプレスやスクワットのコンパウンド種目なので、例えばシングルジョイントのマシン種目であれば1.5~2分くらいまで短縮できるかもしれない。

とはいえ、そもそも”筋トレの休憩時間”を決める必要はあるのだろうか?

すなわち「十分に回復したと思ったら次のセットに移る」という極めてテキトーな方法でよくないか?という話である。

そもそも「レストインターバルを決める必要があるのか?」問題

今までの主流は「レストインターバル=〇〇分!」と決めて時間を測って固定することだが、そもそもレストインターバルを決めずに「休みたいだけ休むわ」という選択肢もあるのである。

別にこれは私が考えることを放棄したわけではなく、”休みたいだけ休む”は意外と使える選択肢だという研究があるのである。

ということで、まず紹介するのは2019年に行われた「レストインターバルを直感的に決めたらどうなの?」という研究。(R

被験者となったのはトレーニング経験のあるラグビー選手16人で、1セッションで”5レップス × 5セット”のスクワットを行わせた。

そのとき、被験者は「あなたが次のセットで最大限力を発揮できるよう好きなだけ休んでください」と指示されている。

そして、実際にセッションを2回行わせたところ(セッション間は48時間以上空けた)、以下のような結果に。

  • 被験者は1回目のセッションでは平均4分43秒、2回目のセッションでは平均4分09秒の休憩を取った
  • 被験者はセッションの後半になるにつれて、より多くの休憩をとる傾向にあった
  • 被験者16人のうち15人が事前に決められたボリュームを完璧にこなした(全ボリュームの99.3%)
  • 後半のセットではスクワットのパワーが落ちた、すなわち挙上速度が保てなかった。

要点だけ抜き出すと、被験者に好きなだけ休ませたところ彼らは大体4.5分の休憩をとり、事前に決められたボリュームもきっちりこなしたということである。

休憩時間とパワーについてまとめたのが下図。

左:休憩時間 右:パワー
左:休憩時間 右:パワー

まず休憩時間なのだが、レストインターバルを自己選択させると被験者は後半のセットほどより多くの休憩をとる傾向にある。

よくよく考えてみれば、疲労がたまる後半セットに、より多くの休憩時間を取るというのは超合理的な選択である。

休憩時間を固定せずに自己選択すると、意外なことに休憩時間を決め打ちするより合理的な戦略となったのである。

そして、休憩時間を自己選択しても4.5分という今までの研究から見ても妥当であろう休憩時間に収まっている。

そして、事前に決められたトレーニングボリュームをきっちりこなしており結果も申し分ない。

ちなみに、右側を見るとセット後半につれてパワーが多少落ちていることが分かる。

しかしパワーリフターになりたいならいざ知らず、筋肥大目的なら問題にするほどでもないだろう。

つまるところ、休憩時間をわざわざ〇〇分と決めなくても直感的に休んでも筋トレの効果は損なわない。

それどころか、セット後半につれて長い休憩を取れるなど、むしろ自動的に合理的な戦略を取るよううまく調整が働く可能性すらあるわけである。

とはいえ、この研究はコントロールグループとして”休憩時間を固定したグループ”がいるわけではない。

実際に”休憩時間を決めうちするより良いのか?”は分からないのである。

ということで、2022年に実際に「固定休憩時間 vs 自己選択の休憩時間」を比較した研究が行われている。(R

被験者となったのはトレーニング経験のある男性33人で、2つのグループに分けて8週間の筋トレをしてもらった。

  • 全てのエクササイズを休憩時間75秒で行ったグループ
  • 全てのエクササイズを自己選択した休憩時間で行ったグループ

筋トレは上半身のトレーニングを週3で行うもので、具体的には”チェストプレス・ラットプルダウン・ショルダープレス・シーテッドロー”の4種目を各3セット行っている。

この研究では筋肥大が直接調べられていないのが残念だが、休憩時間やボリュームに関する結果は以下の通り。

  • 休憩時間を自己選択したグループのほうが多く休み、被験者はセッションの前半は90~120秒ほど、セッションの後半は120秒を少し超えるくらいの休憩を取った
  • 休憩時間を自己選択したグループのほうが、全ての種目でより多くのボリュームをこなした!
    (チェストプレス:21.5 vs 26.1、ラットプルダウン:24.9 vs 30.1、ショルダープレス:17.4 vs 24.0、シーテッドロー:22.0 vs 26.3 ※単位はレップス)

この研究においても、休憩時間を自己選択させると、先ほどの研究と同様にセッションの後半で多くの休憩時間を取る傾向にあった。

また、75秒というかなり短めの休憩時間との比較ではあるが、休憩時間を自己選択したグループはおよそ120秒前後の休憩をとったことで、75秒グループより多くのボリュームをこなすこともできたのである。

どちらの研究でも筋肥大に関して測定が行われていないので不明だが、自己選択した休憩時間はレストインターバルの戦略としてかなり優秀と言えそう。

”休みたいだけ休む”ことによって、休憩時間はヘビーなベンチプレスでは4.5分、マシン種目では120秒前後と自動的にエクササイズによって妥当な時間に収まる。

その上、疲労がたまるセッション後半の休憩時間を自動的に伸ばしてボリューム維持をサポートする極めて優秀なツールなのである。

まとめ:大前提が私たちに合わないけれど

今まで休憩時間に関する文献をいくつか見てきたので、最後に結論をまとめよう。

  • 短い休憩時間のほうが有利ということを実証した研究は(おそらく)存在しない。セット数が同じという前提で考えるなら、休憩時間が長ければ長いほどボリュームは上がる。なので筋肥大にも有利。
  • 休憩時間は「準備ができたと感じるまで休む」という直感的な方法でも、十分いい感じの休憩時間に落ち着く
  • あえて数値化するなら、(限界まで追い込まないという前提に立つと)マシン系やシングルジョイントで90~180秒、スクワットやベンチプレスなどのコンパウンド種目で3分~5分が妥当と思われる

言い訳に聞こえるかもしれないが、再度言うとこの手の研究は限界まで追い込んでいるので、追い込まない場合にどれくらいの休憩時間が必要なのかはぶっちゃけ未知数。

なので、個人的なオススメとしては、まず”自己選択の休憩時間”を試してみてはどうかと思う。

そこからイマイチパフォーマンスが上がらないと思えば休憩時間を伸ばしてみたり、試行錯誤を繰り返して微調整してみてはどうだろうか。

ちなみに、この分野に深く関係してくるのが”スーパーセットレストポーズ法やドロップセット”などのテクニック。

今回はここらへんを全カットしたので、数ヶ月以内に別の記事としてお届けする。それではまた後日!

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