「筋トレを休むのが怖い!」
筋トレをしている人ならば、一度は陥る現象。
どんなに忙しくて筋トレの時間が取れない時でも、ついつい休むと筋肉が分解されたのではないか...と不安になる。
1日くらいで筋肉は分解されないと頭で思っていても、心ではどうしても不安になる。
しかし、「筋トレをする時間がなかなか取れない」「なんだか最近筋トレに疲れを感じている」という人も多いだろう。
ということで、今回は論文から「筋トレの減らし方」に関する話。
トレーニング量を減らすことに不安を感じている人も多いかもしれないが、その必要はない。
というのも、トレーニング量を1/3まで減らしたり、セッション中に負荷を減らしても、筋肉は全然減らないことが研究でわかっている。
トレーニング量を1/9まで減らしても8ヶ月間筋トレ効果を維持
「筋トレをする時間がない」「筋トレに疲れていて、休んだ方が良い気がする」
そんな人に真っ先にオススメしたいのが、単純にトレーニング量を減らすことである。
トレーニング量を減らすとすぐさま筋肉が落ちるように想像しているが、それは全くの誤解。
長期間にわたってトレーニング量を減らしても、筋肉は全然落ちないのである。。
このことを具体的に示したのが、2011年の「どれくらいトレーニング量を減らしても筋肉は落ちないのか?」を調べた研究(R)
被験者となったのはトレーニング未経験者70人で、最初にまず4ヶ月間の筋トレをしてもらった。
筋トレ期間で行ったのは、スクワット・レッグプレス・レッグエクステンションの脚トレ3種目。
条件としては8~12回を3セット、週3で行うという、オーソドックスな設定になる。
負荷もどんどん増加させる形式で、現実の筋トレにかなり近い設定である。
そして、その後8ヶ月間にわたってトレーニング量を減らし、筋肉が分解するかどうかを見るという研究。
4ヶ月の筋トレ後、8ヶ月間トレーニング量を減らして過ごしてもらったのだが、そのとき被験者を3つのグループに分けた。
- トレーニングを全くしないグループ(Detraining)
- トレーニング量を1/9にするグループ
- トレーニング量を1/3にするグループ
トレーニング量を減らしたグループはどちらも頻度を週1まで減らした。
トレーニング量を1/9にしたグループは、そこからさらにセット数も1/3まで減らした。
つまり、トレーニング量を1/9まで減らしたグループは、週1回1セットしか筋トレをしていないのだ。
ここまでトレーニング量を減らしてしまったら筋肉が落ちそうなものだが、実際の結果は全く違うものだった。
まず、筋トレを一切やめた青線のグループは、8ヶ月間で筋肉量が筋トレ前に戻っている。
一方で、灰色線の1/3グループと緑線の1/9グループは、8ヶ月経っても筋トレ終了時の筋肉量を維持している。
さらに、この研究では実際に筋肉繊維を取り出し、その太さも調べられている。
一番上がトレーニングをやめたグループ、真ん中が1/9までトレーニング量を減らしたグループ、一番下が1/3までトレーニング量を減らしたグループである。
色の濃いバーが若者、色の薄いバーが老人の筋繊維で、ドットは2つを老人と若者を合わせたものになっている。
こちらの結果も同様で、一番上のトレーニングをやめたグループは筋肉の太さが元に戻っている。
一方で、トレーニング量を減らした下2つのグループは筋肉を維持していることがわかる。
特に注目すべきは、トレーニング量を1/3にした若者の筋力量である。
トレーニング量を以前より1/3まで減らしているのにも関わらず、筋肉が落ちるどころか順調に筋肥大していることがわかる。
8ヶ月もの間筋トレをしないと、当然ながら筋肉が落ちてしまう。
しかし、トレーニング量を1/3まで減らした場合は、8ヶ月経っても筋肉は落ちない。
それどころか、トレーニング量を減らすことで筋肥大することすらあるとなれば、トレーニング量を落とすことを躊躇う必要はないだろう。
トレーニング強度を下げると楽になる
「最近筋トレで疲れを感じる」
という理由で筋トレの量を下げようかと考えているならば、ボリュームではなく強度を下げてみるのもいいかもしれない。(強度とボリュームに関しては、以下の記事参照)
というのも、筋トレの強度を下げると、筋肥大効果を下げずに疲労度を下げることができる。
このことを示したのが、2018年の研究。(R)
被験者となったのは筋トレ歴のある男性21人で、彼らに3つのグループに分かれて筋トレをしてもらった。
- 10RMで3セット行うグループ
- 1セット目は10RM、2セット目は10RMの5%減、3セット目は2セット目からさらに5%減の強度で行うグループ
- 1セット目は10RM、2セット目は10RMの10%減、3セット目は2セット目からさらに10%減の強度で行うグループ
まず、コントロールとなるグループには10レップできる重さで3セットの追い込む筋トレを行ってもらった。
例えば100kgで10レップできるのが限界だとしたら、3セットとも100kgの重さで筋トレをしたことになる。
次に5%減のグループだが、このグループは1セット目は先ほどのグループと同じ10RMの強度で筋トレをしてもらった。
そして、2セット目は1セット目から強度を5%落とし、3セット目は2セット目からさらに強度を5%落としてもらった。
先ほどと同じ具体例で言えば、1セット目は100kg、2セット目は95kg、3セット目は90kgで筋トレをしたことになる。
そして最後は10%減のグループだが、これは先ほどの5%減グループに対して、強度を10%ずつ落としたグループになる。
例で言えば、1セット目は100kg、2セット目は90kg、3セット目は80kgで筋トレをしたことになる。
被験者が行ったエクササイズはバーベルカールとスコットカールの上腕二頭筋2種目。
17週間にわたって筋トレをしてもらったところ、結果は以下のようになった。
- バーベルカールとスコットカールの合計ボリュームは3グループとも同じだった!
(コントロール:38,495kg、5%減:37,388kg、10%減:42,634kg) - どのグループも筋肥大したが、グループ間で差はなかった!
- どのグループも筋力が向上したが、グループ間で差はなかった!
- RPE(主観的疲労度)は、10%減グループで優位に低かった!
まず、コントロールグループも強度を減らしたグループも、筋トレの合計ボリュームは変わらず。
そして、どのグループも筋肥大したのだが、その程度はグループ間で同じだった。
黒いバーが実験前、明るい色のバーが実験後の上腕二頭筋の厚さなのだが、実際にどのグループも筋肥大しているが、その程度は同じであることがわかる。
どのグループもボリュームが同じだったことと、筋肥大にとって一番重要なのはボリュームという今までの研究から、この結果は意外性なものではない。(筋肥大とボリュームに関しては下記記事参照)
しかし、ここで注目すべきは疲労度を示すRPEである。
強度を10%落としたグループは、バーベルカールでもスコットカールでも、他のグループよりRPEが低かったのである。
つまるところ、強度を10%ずつ落とすと、ボリュームを変えずに主観的な疲労感だけ下げることができる。
この研究では筋肥大や筋力も同様に向上したことが報告されている。
結果はそのままに筋トレの疲労度を下げたい人は、セットが進むにつれて強度を下げてみてはいかがだろうか。
まとめ
直感的に「筋トレを休むのが怖い」と思ってしまう気持ちはわかるが、想像しているように筋トレを休んですぐに筋肉が落ちるな、なんてことはない。
時間がないなら、まずはトレーニング量を1/3にしてみてはいかがだろうか。
週1くらいなら、どうにか筋トレの時間を取ることもできるだろう。
あるいは、最近筋トレがきついから休みを入れようという人は強度を落としてみるのもいいだろう。
筋肥大や筋力などの結果はそのままに、疲労度だけを下げることができる。是非お試しあれ!