「筋トレ後はアフターバーン効果で消費カロリーがアップする!」
というのはよく聞く話だが、これは本当だろうか?
今回は、論文から『筋トレによる代謝UP効果はどれくらいなのか?』という話。
実は、筋トレをしたあとに上がるエネルギー量は、思っている以上に少ない。
アフターバーン効果はなんなのか?どのようなエクササイズで上昇するのか?を紹介しよう。
アフターバーン効果は、運動後の代謝上昇
そもそもアフターバーン効果とは何なのだろうか?
これは運動後に代謝があがり消費カロリーが増えることをいい、専門用語では”運動後酸素消費(EPOC)”という。
運動後は体のエネルギーを作り出すために酸素の消費量が増え、代謝があがるのだ。
実際に、ここ数十年の研究で、筋トレであれ有酸素運動であれ、どんな運動でも運動後24時間くらいは代謝が増加することがわかっている。(R)
具体的には、例えば2022年の研究では、筋トレとHIITのEPOCによる効果を調べた研究が行われている。(R)
被験者となったのは女性七人で、彼女らに全身の筋トレ(80%1RM、休憩時間1分)ととトレッドミルによる高強度インターバルトレーニング(HIIT:90%VO2max、30秒間のランニングと1分間の休憩)を実施してもらった。
運動14時間後、および運動24時間後における代謝を測定したところ、結果は以下のようになった。
- 運動前の代謝量が”30kcal/30分”だったのに対して、筋トレ14時間後には代謝が”33kal/30分”まで上昇し、その効果は24時間後には消えていた!
- 運動前の代謝量が”30kcal/30分”だったのに対して、HIITをして14時間後には代謝が”33kcal/30分”まで上昇し、その効果は24時間後には消えていた!
筋トレでもHIITでも同じくらい運動後には代謝が上昇し、その上昇率はどちらも同じ。
そして、どちらも持続時間は24時間以内だった。
運動することによって、一時間当たり6kcalというわずかな値ではあるが、確かに運動後に消費カロリーが上昇することが確かめられた。
筋トレによる代謝アップ効果は、わずか7.43kcal?
他の例として、2019年のテキサス大学による研究を紹介しよう。(R)
被験者となったのは男女52人で、被験者たちには42-56分の筋トレをしてもらい、筋トレ中と筋トレ後の消費カロリーを計測。
『筋トレでどれくらい代謝がアップするのか?』を調べるのが目的なのだが、結果として以下のようなことがわかった。
- 筋トレ直後は使用エネルギー量が2倍くらいに増えるが、20分もしないうちに元に戻った!
- 筋トレ後の代謝アップによる消費カロリーは、わずか”7.43kcal"だった!
確かに筋トレ後に代謝が上がるはするが、その代謝アップ効果はほとんど無視できるほど小さかったのである。
実際に、筋トレ終了後30分にわたるエネルギー消費のグラフが以下。
筋トレ直後の数分は消費エネルギーが爆発的に増えているが、たった10分もすれば代謝は戻っていることがわかる。
ちなみに、この研究における筋トレそのものによるエネルギー消費も含めた消費カロリーは”男性161kcal&女性87kcal”だったことが報告されている。
実際に、他の研究でも筋トレによる消費カロリーは30分で男性180kcal、女性90kcalだとされているので、この研究での数値はかなり妥当な値。
この研究で観測された筋トレによるアフターバーン効果である7kcalは、無視して良いくらい微々たるものでしかなかった。
研究者は以下のように結論している。
”筋トレ後の代謝アップが36時間続く”という者もいれば、”20分以内で戻る”とする研究もある。
今回の研究では、その効果はわずか7.4kcalであり、20分以内に元に戻ることが分かった。
これらの結果から、カロリー消費における筋トレの代謝アップは無視できるほど小さいと言える。
筋トレ自体はそれなりにカロリーを消費するし、アフターバーン効果で直後に代謝が上がるのも事実。
とはいえ、その効果はこの研究で紹介したように微々たるものでしかない可能性がある。
もしかしたら冒頭で紹介した研究のように12時間など続く可能性はあるが、その場合でも72kcalほどにしかならない。
アフターバーン効果は確かに起きる減少だが、そのカロリー量はそこまで多くないのである。
アフターバーン効果を増やす運動とは?
いかなる運動でも代謝が少なからず上昇するということが知られているが、このEPOCを高めたい場合はどうしたらいいのだろうか?
ジョギングより筋トレかHIIT
EPOCが高い運動をしたい場合、重要なのはエクササイズ選び。
というのも、無酸素運動か有酸素運動かに関わらず、高強度の運動のほうがEPOCが大きくなる。
具体的に言うならば、ジョギングなどの中強度・長時間の運動よりも、筋トレやHIITのほうがEPOCが高いということになる。
このことを実際に示したのが2015年の研究。(R)
被験者となったのは男性10人で、以下の3種類の運動をしてもらった。
- 筋トレ
- 低強度・長時間の有酸素運動
- 高強度インターバルトレーニング
筋トレはフライマシンやスミスマシンスクワット、ラットプルダウンやトライセップスプッシュダウンをエクササイズ間休憩1分で行うサーキット形式。
そして、低強度の有酸素運動としてサイクリング(39%VO2max)、高強度の有酸素運動としてサイクリングを使ったHIIT(90%VO2max)を行ってもらった。
このような条件で「運動の強度によってEPOCの効果は変わるのか?」を調べたところ、結果は以下のようになった。
- エクササイズ12時間後の代謝は、筋トレと高強度インターバルトレーニングのほうが、ベースラインと中強度のサイクリングより高かった!
(筋トレ4.7 ± 0.67 mL/kg/min HIIT4.6 ± 0.62 mL/kg/min サイクリング:4.3 ± 0.58 mL/kg/min) - エクササイズ21時間後の代謝は、筋トレと高強度インターバルトレーニングのほうが、低強度のサイクリングより高かった!
- (筋トレ3.7 ± 0.51 mL/kg/min HIIT3.5 ± 0.39 mL/kg/min サイクリング3.2 ± 0.38 mL/kg/min)
低強度のサイクリングより、筋トレやHIITのほうが運動後のEPOCは大きかった。
このように運動強度が高いほどEPOCは大きくなるとされている。(R)
もしEPOCを高めたければ、ジョギングより筋トレやHIITなどの高強度運動がいいだろう。
さらには、同じ筋トレで考えたとき、運動中の消費カロリーも低強度よりも高強度のほうが大きいことがわかっている。
運動によるカロリー消費を高めたければ、低強度運動より高強度運動と覚えておくといいだろう。
運動時間が長いほどEPOCも大きい
そして、60%以上の十分な強度がある運動をする場合、EPOCは運動時間に合わせて直線的に増えることが知られている。(R)
具体的には、例えば1988年の研究がある。
被験者となったのは男女5人で、彼らに中強度の有酸素運動(70%VO2max)をしてもらった。
その際に運動時間が30分、45分、60分でEPOCを比較した。
結果として、運動時間は45分と60分は、運動時間30分と比較して、EPOCがそれぞれ2.35倍と5.3倍に増加したことが報告されている。
また、この研究ではEPOCの持続時間も調べらており、運動時間が30分・45分・60分で、持続時間はそれぞれ128分・204分・455分だったことが報告されている。
このように、運動時間が長くなればなるほど、EPOCも上昇するのである。
まとめ
運動後の代謝上昇であるEPOC(アフターバーン効果)だが、確かに起こることが確認されている。
未だにどれくらいのカロリーが上昇するのかはハッキリしていないが、おおよそ数kcal〜数十kcalだろう。
もしEPOCを少しでも高めたいのなら、高強度の運動をするのがオススメ。ぜひお試しあれ!