筋トレのメニュー作りに重要なのが強度・ボリューム・頻度だという話をした。
そして、以前の記事で大体週何セットくらいやるべきか?もまとめた。
しかし、実はもう一つ大事な要素がある。それは具体的に各エクササイズをどのように配置するべきか?という話。
というのも、以前のピリオダイゼーション記事でまとめたように、何も毎セッション同じような筋トレメニューをする必要はない。
1週間の中で自分の好きなように組み替えていいのだ。
ということで、今回は論文から「エクササイズの選び方」に関する話。
具体的にどのエクササイズを選ぶべきか?というよりも、エクササイズ選びの考え方を見ていこう。
常に高ボリューム、よりはたまに休んだほうがいい
筋トレは毎日同じメニューで行う必要はない。
胸の日だからと言って毎回同じエクササイズとセット数をこなす必要はないのである。
というのも、高ボリュームのセッションばかりでなく間に小休止を入れた方が、疲労回復がうまくいくので、長い目で見たときにボリュームが増大するのである。
実際に、週3のトレーニングであった場合、真ん中のセッションを軽くしたほうが総ボリュームが増え、結果的により筋肥大に繋がったという研究があることをピリオダイゼーションの記事で紹介した。(R)
急がば回れ、というのは筋トレにも通じるのである。
以前の記事では、真ん中のセッションを軽くする方法として、単にスクワットやベンチプレスのセット数を減らし高強度トレーニングにすることを紹介した。
しかし、実はセット数を増減させることだけがボリュームを操作する方法ではない。
実は、エクササイズの選び方も、ボリュームと疲労のマネジメント法として使える方法なのである。
エクササイズによって回復時間が変わる
例えば、週3で鍛えているのに「脚トレのたびに毎回スクワットするぞ!」みたいなことをしているならやめたほうがいい。
というのも、スクワットのようなマルチジョイントエクササイズは回復までに甚大な時間がかかる。
週3でスクワットは回復時間がしっかり取れるかが怪しいのだ。
このことを示したのが2020年の「シングルジョイントとマルチジョイントのエクササイズで回復時間は変わるか?」を調べた研究。(R)
被験者となったのは筋トレ経験のある男性10人で、スクワットとレッグエクステンションをしてもらい、その後の回復時間を調べたもので、その結果は以下の通り。

黒丸で示されたレッグエクステンションより、白丸で示されたバックスクワットのほうが筋損傷が大きい。
そして、スクワットでは少なくとも36時間ではまったく回復していないことがわかる。
つまり、週3でのスクワットは間が48時間になることが多く、回復し切れるかが微妙なのである。
このスクワットのほうがレッグエクステンションより筋損傷が激しいという結果は、正直なんの意外性もないだろう。
そして、このエクササイズによる筋損傷と回復時間の違いは、他の研究でも確かめられている。
例として、2015年にも「マルチジョイントとシングルジョイントの回復時間」について調べた研究が行われている。(R)
被験者となったのは筋トレ男性16人で、今度はプリチャーカールとシーテッドローをしてもらい、上腕二頭筋の回復時間について調べたものだが、その結果わかったことは以下の通り。
- シーテッドローでは24hで上腕二頭筋の筋力は回復したが、プリチャーカールでは24時間では回復しきらず、48時間で完全回復した!
- シーテッドローでは上腕二頭筋の筋肉痛が回復するまで48時間かかったが、プリチャーカールでは72時間かかった!
つまるところ、プリチャーカールのほうがシーテッドローより筋損傷が激しく、回復時間も長くかかったのである。
ちなみに研究の文脈では「シングルジョイント vs マルチジョイント」といった比較にされがちだが、そんなことより要は直接的に鍛える種目というのは筋損傷が大きいということ。
なので、当然これらのエクササイズは回復時間も多く必要になるのである。
エクササイズによる疲労マネジメント実践法
以前の記事を含めたこれまでの研究からわかることは主に2つ。
- 常に高ボリュームよりも、適度にローボリュームを挟んで疲労マネジメントをしたほうが、長い目で見たらボリュームが上がり筋肥大につながる
- 筋トレの種目によって疲労と回復時間は異なる
これらの結果から具体例で実践法を考えてみよう。
例えばあなたが月・水・金が「胸&肩&三頭」、火・木・土が「脚・背中・二頭」の分割で鍛えるとしよう。(日曜日がオフ)
このとき、例えば「脚・背中・二頭」の日に着目すると、火曜日と土曜日はスクワットメインで、木曜日はレッグエクステンションで大腿四頭筋を鍛える、といった形になる。
そうすることで、スクワット後に3,4日は回復時間がとれる。要するに、間の日はレッグエクステンションで軽めに流すのである。
他には、背中と二頭に注目すると、火曜日と土曜日は背中をハイボリュームにし、水曜日を抑えめにするといった方法がある
そのぶん、水曜日は時間が余るので、二頭を直接的に鍛える種目を増やすのである。
このように、部位別で見たとき、間で軽めのエクササイズを入れ、ボリュームを少なめにして回復時間をしっかり取る。
そして、背中がローボリュームの日は腕のボリュームを上げる…と言ったように調整することで、結果的にパフォーマンスが上がり、より筋肥大することが期待できるのである。
まとめ
今回はエクササイズの種類と回復時間について書いたので、最後にまとめ。
- 脚はスクワット、二頭はプリチャーカールが回復時間が長い。どのエクササイズが回復時間が長いか?はおおむねイメージ通りでよさげ。
- 回復に時間がかかるエクササイズをした次は、軽めのエクササイズにしてボリュームを下げることができる。ただし、頻度が多くない場合は気にしなくてもいいかも。
- 1日の中で同時に複数の筋群を鍛えている場合は、片方がハイバリュームのときはもう一方をローボリュームにしてバランスをとると毎回同じようなセッション時間で済む。
以前の記事で、適度にボリュームが低いセッションを間にいれたほうがいいと言ったが、その方法は単に高強度トレーニングにするだけではない。
筋損傷が低いエクササイズにするという手もある。
軽いエクササイズの日を入れるのは遠回りに見えるが、長期的にみると実はボリュームがあがるのである。
もちろん、単にセット数を落として軽めの日にしてもいいので、そこら辺はお好みで。
もし筋トレ好きで毎日1時間は筋トレしないと気が済まないなら、エクササイズ選びで調整するのがいいかもしれない。ぜひお試しあれ!.