「好きなものを食べて痩せたい!」
実はこの考え方、科学的に言えば”痩せるマインド”なのだ。
もちろん、好きなものを好きなだけ食べることは叶わない。
しかし、好きなものを食べることを諦める必要もないのだ。
ダイエット後、痩せた体型を維持できるのはどんな人なのか?
ダイエットで一時的に食事を改善しようと、食生活が元通りになれば必然的に体型も元に戻る。
つまり、ダイエットはある意味”永遠に”行わなければならない。
ダイエットで身につけた食生活を永遠に続けなければ、いつでもリバウンドするのだ。
逆に、永遠に続くダイエット法を習慣化すればダイエット成功する。
2003年に行われた「どんな人が3年後も体型を維持しているのか?」を調べた研究で、習慣化の凄さが判明している。(R)
この研究では、ダイエットプログラムに参加した1247人を対象に、どんな行動改善がリバウンド防止に役立っているのか?を調査した。
8つの行動スコア(運動しているか?間食をしないか?など)に回答してもらったところ、2つの傾向がわかった。
・ダイエット終了後、1年間痩せた体型を維持した人は3年後も体型を維持していた。
・痩せる習慣を複数持っている人ほど、3年後も体型を維持している可能性が高かった。
10年間に及ぶリバウンド研究でも同じ結果が出ており、1年間体重を維持できた人の実に87%が体型を維持していた。(R)
つまり、ダイエット成功後1年間が勝負。そこで痩せる習慣を身につけ体型を維持できれば、その後もずっと体型を維持できる可能性が高い。
一方で、リバウンドするのはダイエット終了後1年間で昔の食生活に戻ってしまう人である。
一生続けられる最強のダイエット法「フレキシブルダイエット」
ちなみに、先ほどの研究における8つの行動が持つリバウンド防止効果は以下のようになっている。

オッズ比は、数字が高いほど1.2が弱めの相関、2.0だと結構強い相関になる。つまり、下に行くほどリバウンド防止効果がある行動だったということ。
ここで注目してほしいのが、マインドである。
表を見ると、”硬直なマインド”より”柔軟なマインド”のほうがリバウンド防止効果が高いことがわかる。
では一体、これらのマインドはどんな考え方なのか?
ここでいう硬直なマインドとは、いわゆる”0-100思考”とか”白黒思考”と言われるものである。
このようなマインドの特徴として、厳しいダイエットをする期間と体重を一切コントロールしない期間が交互に訪れたり、食事を食べたらダメなものと食べても良いものに分類していたりする。
例えば、ダイエット期間は甘いものを一切取らず外食にも行かない。
しかし、ダイエット期間が終わると今までが嘘のように好き放題食べる。
一方で、柔軟なマインドとは体重維持をずっと続く永遠の課題と捉え、ダイエットを日常とうまく調和させるマインドのことである。
例えば、日曜日に外食する予定があるならその分平日は少し食事を減らす。
甘いものも一切取らないのではなく、食べすぎないように工夫する。
この柔軟(=flexible)なマインドを実践するのが「フレキシブルダイエット」である。
むしろ「ダイエット=厳しい食事制限」と思っているとダイエットに失敗する確率が高い。
- ・1999年の研究では、フレキシブルな人はドカ食いが少なく、BMIが低く、不安も少なかった。(R)
- ・2002年の研究では、硬直マインドの人は、過食しやすく、気分が落ち込みやすく、体型を過剰に心配していた。一方で、フレキシブルなマインドはこれらを引き起こさなかった。(R)
また、2000年の研究では摂食障害の女性は”強迫的(べき思考)で完璧主義”の傾向があるということも報告されている。(R)
ダイエット成功に必要なことは、より厳しいダイエットを実行する意志力ではない。
フレキシブルなマインドを育てることこそが、ダイエット成功の鍵になる。
フレキシブルダイエット①”食品”にはこだわらない
フレキシブルダイエット最大の特徴は、”食品”を禁止しないこと。
大事なのは摂取カロリーが消費カロリーを上回ることで、何を食べるかではない。
というのも、食品を”良い/悪い”の2極化思考で考える人はダイエットに失敗しやすい。
2015年の研究では、食行動を”良い/悪い"の0-100思考で考える人は硬直マインドのダイエットを行いやすく、体重も増える傾向にあることが報告されている。(R)
食品を”良い/悪い"で分類し禁止しても、予想とは裏腹にダイエットには効果がない。
何かを禁止しても、さらに欲求が強くなるだけ。これは”シロクマ効果”と呼ばれる現象で、ダイエットでも同じように起こる。
なぜフレキシブルダイエットでは食品にこだわらないのか?
それは、極端な話ジャンクフードだけを食べていても摂取カロリーが消費カロリーを上回れば痩せるからである。
ちなみに、どちらの例も健康マーカーまで改善している始末。
チョコやケーキなどの特定の食品が悪いのではない。どんな食品であれ食べすぎることが問題なのである。
もちろん、ジャンクフードを食べ過ぎないように調整するのは難しい。
脳への刺激が強く、食べすぎるように砂糖や脂肪の量が絶妙に調整されているからだ。(R)
しかし、全てを禁止しようとする硬直マインドなダイエットをすると、それはそれで失敗につながり、摂食障害さえ引き起こしかねないのもまた事実。
ということで、カロリーの80%を野菜・フルーツ・肉・魚などから摂取し、20%は自由に摂ればいい。
一番大事なのはカロリー。
そしてタンパク質・脂質・糖質のバランスさえ気にかけていればそれでいいのだ。
フレキシブルダイエット②週1回のチートデイ...では無くフリーミール
フレキシブルダイエットのもう一つの特徴が”フリーミール”である。
これは「1食は好きに食べる」と言うものである。
週に1〜2回の頻度で行い、いわゆる”チートデイ”に近い考え方。
このときは、20%など気にせずに1食は好きに食べていい。
オススメは友達と外食を存分に楽しむことである。
チートデイに似ているが、違うところはドカ食いをしないことである。
外食する場合も、ブュッフェ・バイキング・食べ放題などは避けたほうがいい。
いわゆる”一般的な”1食分を食べるのだ。
そんなことして良いのか?と思うかもしれないが、実はダイエットは週2回休んでも減量ペースは変わらない。
このことを示したのが南フロリダ大学の「週2でダイエットを休んだらどうなる?」を調べた研究。(R)
27人の男女を2つのグループに分けた。
- ずっとカロリー制限をするグループ
- 週に2日、維持カロリーを摂取したグループ
どちらのグループにも25%のカロリー制限を7週間してもらったところ、以下のような結果に。
- 週2で休んだグループのほうが脂肪が減った。(-2.8kg vs -2.3kg)
- 週2で休んだグループのほうが筋肉の減少が抑えられた。(-0.4kg vs -1.3kg)
さらには、週2でダイエットを休むことには心理的にもメリットがある。
このように計画的に実行された”失敗”はダイエットのモチベーションを高める効果があるのだ。(R)
減量ペースも変わらず、モチベーションも高まる。
さらには、週2回も外食できるので、ダイエットで人間関係を犠牲にするといった事態に陥ることもなくなるのである。
フレキシブルダイエット③2週間のダイエットブレイク
ダイエットはどうしても数ヶ月という長期戦になる。
もしかしたら、1年間かかるときもあるかもしれない。
フレキシブルダイエットでは、1,2ヶ月したら2週間くらいはカロリー制限を休んでもいい。
やり方は簡単で、摂取カロリーを維持カロリーに戻すだけ。
実は、1日ドカ食いするよりも、7~14日ほど維持カロリーに戻す期間が長いほど代謝は戻りやすいことが分かっている。(R)
中でも有名なのが2017年のタスマニア大学による研究。(R)
この研究は「ダイエットは休憩を挟んだほうが効率的なのでは?」を調べたもので、51人の男性を2つのグループに分けた。
- ”2週間のカロリー制限⇄2週間の維持カロリー”を8セット繰り返す
- 16週間ぶっ続けでカロリー制限をする
どちらのグループも16週間のカロリー制限をしてもらったところ、ぶっ続けでダイエットをしたグループが9.1kg減量したのに対し、休みを挟んだグループは14.1kgも減量したという結果に。
さらには、休みを挟んだグループのほうが6ヶ月後の体重がぶっ続けグループより8.1kgも少なかった。
つまり、リバウンドしづらかったのである。
ダイエットブレイクの注意点としては、このときも好き放題食べていいわけではない。
基本的には80/20ルールを守るようにする。
そうでないと、またダイエットに戻るときにかなり辛い。
旅行なんかでダイエットブレイクをする場合もドカ食いは避けること。
維持カロリーを目安に、いわゆる”一般的な”量を食べるようにしよう。
フレキシブルダイエットは一生の財産
ダイエットは一生続けることになるが、フレキシブルダイエットは強力な武器になる。
というのも、フレキシブルダイエットとは結局「健康的な食品を中心にほどよく食べる」を実践する方法だからである。
ダイエットするときも、たまには大好きなチョコを食べたり友達と外食を楽しむことも諦める必要はない。
それを全て排除した厳しいダイエットが一生続けられるわけがない。
おそらくフレキシブルダイエットも初めはうまく行かないだろう。
気づけば硬直なマインドに囚われ、ついドカ食いをしてしまうときもあるかもしれない。
しかし、何事も練習である。
少しずつフレキシブルに考えられるように実践していこう。
もしフレキシブルダイエットが身につけば、それは間違いなく一生の財産になる。
一歩ずつ歩んでいけば良いのである。
