「糖質と脂質どちらを食べたほうが太らないんだろう?」
これはダイエットをしたことがある人なら一度は考えたことがあるだろう。
今回は「糖質を食べ過ぎる vs 脂質を食べ過ぎる」の太りやすさを比較した研究をご紹介。
つまらない結論だが、どちらも食べ過ぎれば同じくらい太ることが判明している。
脂質で太る?
脂質といえば体に悪い、太る元凶というイメージの人もいるだろう。
というのも、1970年代には「食事-心臓病仮説」という、脂質によるコレステロールの上昇が心臓病の原因だとする理論が流行った。(R)
そのため「脂質やコレステロールは悪いもの」というイメージが世間一般に広がった。
そして、脂質は体脂肪である”中性脂肪”の原料となる物質でもある。
「原料である脂質を摂取したら体の中性脂肪が増える」というのは、直感的にはかなりわかりやすい話。
なので、脂肪は悪いものというイメージもあり、脂質は太るという説が広がった。
また、脂質のカロリー密度が他の栄養素の倍以上することも要因の一つだろう。
タンパク質や糖質は1gあたり4kcalしかないが、脂質は1gあたり9kcalもある。
「脂質は高カロリーだし体に悪いものだから太る」というイメージに繋がっているのである。
糖質で太る?
1970年頃には脂質が悪者とされていたが、今や時代はすっかり「糖質が悪い」という風潮になっている。
その元凶とされているのがインスリンで、実際に肥満の仮説として「糖質ーインスリンモデル」というものが提唱されているほど。(R)
体に糖質が補給されると、膵臓からインスリンという物質が放出される。
このインスリンは血液中にある糖を細胞の中に引き込む役割を果たすので、インスリンがたくさん出るほど糖が脂肪細胞に引き込まれ、脂肪になりやすいというのがこの説である。
このとき、インスリンを出す指標として使われるのが”グリセミック指数(GI値)”。
これは特定の食品が、食後2時間の間にどれだけ血糖値(=インスリン値)を上昇させるかを数値化したもの。
具体例で言えば、低GIの食品は野菜・豆類・果物などで、高GIの食品は精製穀物・ポテト製品・砂糖など。
実際に動物モデルなんかでは、低GIの食品で体重が減少したことなどが報告されているが、ヒトを対象にした研究では決定的な証拠がない。(R)
ヒトの研究の一例として、2014年の研究を紹介しよう。(R)
被験者となったのは肥満の成人121人で、以下の3グループに分かれて6ヶ月過ごしてもらった。
- 低GI値:タンパク質18%、糖質42%、脂質40%、GI値34
- 高GI値:タンパク質18%、糖質42%、脂質40%、GI値62
- 高糖質:タンパク質18%、糖質52%、脂質30%、GI値65
3大栄養素のバランスを変えずにGI値だけ変えたグループ2つと、そこに糖質の量を増やしたグループをもう1つ加えた。
カロリーは”維持カロリーから-500kcal”に設定し6ヶ月間過ごしてもらい、ウエスト周囲径を測定したところ以下のような結果に。
実線で表わされた低GIグループも、点線で表された高糖質グループも、ドット線で表された高GIグループも同じように体重が減ったのである。
つまり、高GI値の食品を摂取するとインスリンが大量に分泌されるのは事実だが、カロリーを揃えると減量効果はどれも一緒だった。
このように「糖質ーインスリンモデル」はヒトではいまいち実証されていないのが現状なのだ。
糖質か脂質を3週間食べすぎてもらった
理論的にはどっちつかずの状況だが、実際にはどっちのほうが太りやすいのだろうか?
ということで、次に紹介するのは2000年に行われた研究。(R)
この研究では20人の被験者を2つのグループに分けた。
- 高糖質:タンパク質11%、脂質11%、糖質78%
- 高脂質:タンパク質11%、脂質58%、糖質31%
どちらのグループも1日あたり1200kcalのカロリーオーバー。
普段のカロリーを37%もオーバーした状態で、3週間過ごしてもらったのだ。
そして3週間後に体組成を計測したところ、以下のような結果に。
どちらのグループも体重で1.5kg、筋肉で0.6kg、脂肪で0.9kgの増加だった!
どちらのグループも体重・筋肉・脂肪の全てが増え、その値は全く同じだったのである。
研究者は以下のように言っている。
脂質が多い食事を食べ過ぎても、糖質が多い食事を食べ過ぎても、同じように脂肪は蓄積する。糖質も脂質に変換されてしまうようだ。
糖質も脂質も同じように太るという、なんとも面白くない結論になったのである。
まとめ
脂質を食べても糖質を食べても、食べ過ぎれば同じくらい太る。
ダイエットでは”糖質”や”脂質”にこだわりすぎなくていい。
一番大事なのはカロリーで、自分が減らしやすい方を減らせばいい。
ぜひお試しあれ!