痩せた自分を想像してダイエットのやる気を出さなきゃ!
「お前はデブだ!」というコンテンツを見て自分を奮い立たせなきゃ!
実はこの戦略、どちらもダイエットには逆効果です
ダイエットのやる気がないとき、どうにか対処しようとする人は多いだろう。
このときよく見られるのが次の2パターン。
- 痩せた”未来”の自分を想像してテンションを上げる
- ”現状”の体型を否定して自分を戒める
未来にフォーカスするパターンと現状にフォーカスするパターンがありますが、どちらもダイエットの成功率は上がりません
今回は論文から「ダイエット中のやる気」に関する話を紹介。
- 未来の自分を想像してやる気を出しても、計画量が増えるだけで行動に胃はつながらない
- 現状の体型を否定しても、ストレスが溜まるだけで結果にはつながらない
- やる気がない感情を受け入れつつも、行動はダイエットをするのが成功の鍵
長期のダイエットでやる気がないときもあるのは当たり前。その気持ちを受け入れながら淡々とダイエットするしかありません
痩せた自分を想像してやる気を出す
ダイエットが辛いとき、痩せたときのことを想像するとやる気が出るんだよね!
確かにやる気が出てたくさんやれる気がしますが、実際の行動には結びつかない可能性が高いです
例えば理想の体型の人を見てやる気を出している人がいるかもしれない。
実際に写真を見た直後はやる気が出るかもしれないが、行動には繋がらないというジレンマがある。
「やる気を出すことが結果への行動につながるのか?」を調べた研究。
これからジムでトレッドミルを始めようとしている男女113人を3つのグループに分けた。
- 運動で得られる結果に注目したグループ
「トレッドミルを頑張れば痩せた自分になって素敵な人生が待ってる!」 - 運動という経験そのものに集中したグループ
「トレッドミルをした後は意外と気分がすっきりするな」 - 何も指示しないグループ
この研究の面白いところは計画量と実行量が調べられているところです
まず計画量に関して一番多かったのは結果注目グループです
結果注目グループの計画量がおよそ47分だったのに対して、経験集中グループはおよそ37分。
指示なしグループがおよそ36分なので、結果注目グループの計画量が抜きん出ていることがわかる。
しかし実際の実行量を測ってみると真逆の結果が出ました
一番実行量が少なかったのは結果注目グループで、その時間はおよそ34分。
一方で経験集中グループは計画量を上回る43分の実行量だった。
各グループの計画量と実行量の差についてまとめたのが下の表です
計画量 | 実行量 | |
---|---|---|
結果注目グループ | 47分 | 34分 |
経験集中グループ | 37分 | 43分 |
指示なしグループ | 36分 | 38分 |
この表からわかるのは「結果に注目してやる気を出しても、計画量が増えるだけで行動量は増えない」ということ。
一方で経験そのものに集中したグループは「楽しくてつい多めにやっちゃった⭐︎」という状態になっている。
結果に注目すると、計画量と実行量に差が生まれることから別の問題が生まれる可能性もあります
それが”罪悪感”である。
実は罪悪感というのは本人にとって大きなストレスを生む。
実際に「ジャンクフードの禁止が罪悪感を生み、そのストレス解消でドカ食いに走る」パターンがあるというのは以前にも紹介した話。
やる気を出していたずらに計画量だけ増やしても、計画を遂行できずに罪悪感から自己嫌悪に陥るだけです
ダイエットに効果的なのは「痩せた自分未来の自分を想像する」ではなく”経験そのものを楽しむ”ことなのだ。
現状の自分を否定してやる気を出す
私は「自分はデブだ!」と言ってくれるコンテンツでやる気を出しています!
この考えもダイエットを失敗に導く可能性が高いです
理由の一つ目は、さっきの研究で見たように結果に着目すると実際にやる気が出て計画量が増えたとしても、実際に実行する量が増えるかは分からないという問題がある。
そしてもう一つ、ボディイメージというものを損なう可能性があるのだ。
自分の体をどう認知しているかを表す。簡単に言うと「自分の身体に満足しているかどうか?」を指す
ダイエットをしているからには自分の体に100%満足はしてないかもしれませんが、自分の体への不満が高すぎるのも問題です
自分の体への満足度を表すボディイメージだが、実はボディイメージが悪化している人はストレスやドカ食いに苛まれることがわかっている。(R)
自分の体系を過度に否定することは、ストレスやドカ食いを引き寄せる可能性がある行為です
現状に満足しないほうが結果を残せる...わけではない
ダイエット以外でも見られる「現状に満足しないほうが結果を出せる」という通説の信憑性はかなり怪しいです
現状に満足していない人の方が努力をして結果を出せそうなイメージがあるかもしれないが、実際はそういうわけでもない。
アスリート253名を対象にした研究で、「アスリートとしてどれだけ成功しているか?」によってグループ分けをしてマインドに違いがあるかどうかを調べた
- アスリートじゃない人59名
- 趣味レベルのアスリート115名(地域の大会にでるレベル)
- プロアスリート79名(全米・世界レベル)
研究者は「アスリートとして成功している人ほどストイックな人が多く現状に満足したら終わりと思ってるはず」と仮説を立てました
研究者の仮説が正しければ「プロアスリート>趣味レベルのアスリート>一般人」の順で自己批判が強くセルフコンパッション(自分への思いやり)が低いはず。
しかし実際に調査してみたところ、仮説通りにはならなかった。
- セルフコンパッションや現状への満足度は、グループ間で差がなかった!
- 現状へ満足してしまうことを恐れている人はストレスを抱えていた!
「プロアスリートは現状に満足していない人ばかり」というメディアのイメージとは違う結果になりました
そのわりに、セルフコンパッションの低さとか現状に満足することへの恐れは心理的ストレスとは関係していた。
つまるところ、自分に厳しくしてる人ほど結果が出てるわけではないけど、ただただ心理的ストレスだけは抱えていたのだ。
これはダイエットでも同じで、「自分はなんてデブなんだ!」と罵ったくらいで痩せられるなら苦労はしません
むしろ現状の体型を否定すると、ボディイメージを悪化させてストレスを生んだり過食とかに繋がったりする可能性すらある。
そのわりに結果に繋がらないのであれば、過度に自己否定するのは悪影響でしかない。
そんなこと言っても自分の体に満足してないからダイエットしてるんじゃない!
自分の体型に完全に不満を持つなとは言いませんが、自己価値と結びつけてしまうと危険です
例えば自分の体に不満があるときに、「太ってる自分には価値がない」と思いすぎるとストレスに苛まれるうえにドカ食いしてしまう可能性がある。
ここで重要なのは過度に自分の価値と結びつけず、「太ってる自分も素晴らしいけど痩せたらもっと素晴らしいだろうなぐらい」と自分の価値と体型を一旦切り話すというのが大事なのだ。
デブな自分はダメなんだから頑張んなきゃとか思いすぎると自己価値と自分の体型が結びつきやすいのでオススメしません
やる気がない気持ちを受け入れつつも、行動の手綱を握れ
じゃあやる気がないときはどうしたらいいわけ?
「やる気がないときもある」ことを受け入れて、淡々とダイエットするのが成功のコツです
「受け入れることこそがダイエット成功の秘訣なのでは?」を調べた研究。190人の肥満男女を2つのグループに分けた
- 受容マインドの育成を含んだダイエット治療を行ったグループ
- 標準的なダイエット治療を行ったグループです
これはいわゆる認知行動療法をダイエットに取り入れた研究です
どちらのグループも摂取カロリーと運動の設定は同じ。
摂取カロリーは1200-1800kcalに設定されており、週あたり大体250分の運動するように言われている。
このようにして両グループにカロリー制限を1年間実施してもらったところ、結果は以下のようになった。
6ヶ月時点で標準的治療を行ったグループがおよそ-10%の体重を落としたのに対して、受容マインドを育てたグループは-13パーセントの体重を落としている。
それに加えて12ヶ月後も計測したところ、標準的治療グループは若干体重が戻る傾向があったのに対して受容マインドを育てたグループはさらに体重が下がっている。
受容マインドを育てたグループの方が体重が落ちたしリバウンドしませんでした
結局、やる気もそうだが「感情を操作しようとするのではなく受容することがダイエットに効果的」ということがこの研究でわかった。
受容マインドっていうけど、具体的にどんなマインドを育てたの?
①1個目は価値観の明確化②不快感と快楽減少の受容③マインドフルな意思決定が柱になっています
マインド①価値観を明確にする
まず最初に、被験者は人生の価値観を明確化するように求められている。
自己啓発の世界でよくある「人生の価値観を明確化しろ!」という話をダイエットでもやってもらいました
研究者は被験者に対して、自分にとって大事な人生における価値観を決めてもらい、その価値観をもとに目標を設定してもらった。
- 健康で長生きしたいから!
- 今この瞬間を目一杯素敵な自分で生きたいから!
- 活動的でみんなに愛されるおばあちゃんでいたいから!
何で痩せるかを人生スケールレベルの価値観で意味づけしてもらいました
ちなみにこの価値観による意味づけに正解はない。
自分の人生にとってダイエットがどんな価値観に基づいていて、なんで人生でそれが大事なのか意味づけするってことが大事なのだ。
マインド②不快感・快楽現象の受容
ダイエットをするうえでもちろん不快感も伴うし、快楽を我慢しなきゃいけないときもあると受け入れてもらいました
飽食と言われてる現代の環境で体重をコントロールすることは簡単ではない。
辛いこともあるし我慢しなければいけないときもあるものだと被験者に受け入れてもらった。
実際にダイエットするうえで、ドカ食い欲求・空腹感・疲労感が出るのは避けられません
さらにこの研究で言われてるのが快楽の減少。
- 甘いものが食べたいときに、アイスクリームの代わりにリンゴを選ばなきゃいけないときもある
- テレビを見たいのを我慢して、ちょっと散歩で運動しなきゃいけないときもある
ダイエットを成功させるのは茨の道、その事実を被験者には受けれてもらいました
マインド③マインドフルな意思決定
簡単に言うと自分がしてる意思決定に意識を向けてみるという話です
例えば駅前で大好物のケーキを見たときに、自分にどんな感情が浮かんでくるかを確認してもらった。
ケーキを見るとすごいドカ食いしたいっていう気持ちが浮かんできちゃうなー
その結果ケーキは食べなかったとしてもなんか夜ご飯とか食べ過ぎちゃう時が多いな..
このように自分の感情とその行動についてマインドフルになってもらいました
受容マインドで感情を受け入れろと言われても、そもそも自分の感情や行動を一歩引いて認知することができないとそんなことはできない。
ダイエットする人が普段無意識に行っている食べ過ぎや運動のサボりなどの行動が、どういう認知によって引き起こされてるかに自覚的になってもらったのだ。
受容マインドとは要するに、自分ではどうしようもないことを受け入れて可能な努力をすることを指します
まずダイエットでコントロールできないものとして、思考がある。
- お腹がすいた
- 疲れた
- やる気が出ない
- ドカ食いしたい
- ラーメンを腹いっぱい食べまくりたい
これらの感情は自然と湧き上がってきてしまうので、自分自身ではどうすることもできない。
しかし、行動や環境の部分は自分でコントロールすることができる。
- 腹がすいたと思ったときに実際に食べるかどうか
- 疲れたと感じたときに実際にジムに行くかどうか
- 家にカップラーメンを置いとくかどうか
このように自分の行動や環境は感情に関わらずコントロールできます
多くの人がやりがちなのが思考そのものを拒絶するという方法だが、この方法は効果がない。
ダイエット成功に大事なのは、やる気も含め感情は一旦受け入れつつも、行動は自分でしっかり手綱を握っておくこと。
やる気はないけど、とりあえずジムに行ってみよう
やる気はないけど、とりあえず今日は目標カロリー分だけにしておこう
このように感情は受け入れつつも自分の行動を選びとるのが大事です
論文には体重計測を避けていた被験者の例が書かれている。
その被験者は体重計に乗るたびに体重が落ちておらず、「もう自分なんかが体重を落とすなんて無理だ」とネガティブになりがちだった。
このときの恥の感情です、研究者は「積極的に受け入れろ!感じまくれ!」と言っている。
ただそれでも体重計には乗れ、と言ったのだ。
ダイエットをしてればネガティブな感情が浮かんでくるのは当たり前。そのこと受け入れつつも次の行動につなげましょう
まとめ
今回はダイエットのやる気についてまとめた。
- ダイエットのやる気がないとき、その気持ちをどうにかしようとするのが間違い
- 未来の自分を想像するしてやる気が上がっても、計画量が増えるだけで行動量は増えない
- 経験そのものを楽しむと計画量こそ少ないかもしれないが行動につながる
- 現状の体型を否定しても結果に繋がらずにストレスがたまるだけ
- ダイエットで重要なのは「やる気がないことを受け入れつつ、淡々とダイエットにつながる行動を選び続けること」
ダイエットは数ヶ月にもおよぶので、毎日やる気がある人などいません。やる気がないのは当たり前と受け入れた上で、どんな行動をとるかが大事です