「ケトジェニックダイエットを試してみたい」
ダイエットをするとき一度は選択肢として考えるであろうケトジェニックダイエット。
しかし、実際にダイエットに効果があるのだろうか?効果があるとしたらどんなときなのだろうか?
今回は、論文から「ケトジェニックダイエット」に関する話。
実は、残念ながらケトジェニックダイエットにしたからと言って、ダイエットの早く痩せるわけではない。
それではケトジェニックダイエットは全く使えないかというと、そういうわけでもないのである。
摂取カロリーが同じならケトジェニックでもローファットでも同じくらい痩せる
ダイエットをしているとき、何よりも重要なのはもちろん”痩せるかどうか”である。
結論を言ってしまうと、ケトジェニックだろうとローファットだろうとカロリー不足さえ作ればきちんと痩せるし、そのスピードはどちらも同じなのである。
例えケトーシスになるまで糖質制限してもダイエット効果は増えない
まず紹介するのはケトジェニックダイエットの効果を調べた2006年の研究。(R)
被験者となったのは肥満男性15人で、彼らを3つのグループに分けた。
- ケトジェイニック :タンパク質35%、脂質61%、糖質4%
- 普通食 :タンパク質20%、脂質30%、糖質50%
- ローファット:タンパク質20%、脂質10%、糖質70%
ケトジェイニックダイエットは糖質を4%、ローファットは脂質を10%に抑えている。
そしてタンパク質だが、普通食とローファットが20%なのに対して、ケトジェニックダイエットは35%とかなり多め。
ケトジェニックダイエットにすると、どうしても肉や魚などの高タンパク質な食品が増えてしまうのはわかるが、正直なところタンパク質を揃えて欲しかった。
これでは仮にケトジェニックに有利な結果が出たとして、それが高タンパク質のせいなのかケトジェニックのせいなのかがわからない。
そのような不満はあるが、何はともあれこの条件で被験者に8週間のダイエットをしてもらったところ、結果は「ケトジェニック-4.5kg・普通食-4.4kg・ローファット・-4.0kg」 だった。
糖質を4%まで削ろうがバランスの良く食事を食べようが、ダイエットの結果は変わらなかったのである。
ローカーボとローファット、どちらも同じくらい痩せた
糖質と脂質のどちらを削ってもダイエット効果は変わらない、このことを示した研究をもうひとつ紹介しよう。
ということで、次に紹介するのは2018年に行われた研究。(R)
この研究は被験者を609人を集めて1年間にわたり”ローファット”か”ローカーボ”のダイエットをしてもらった、という大人数・長期間の大規模研究。実際に被験者が摂取していた食事の3大栄養素のバランスは以下の通り。
- 低脂質グループ:タンパク質21%、糖質48%、脂質29%
- 低糖質グループ:タンパク質23%、糖質30%、脂質45%
低糖質のグループも低脂質のグループもタンパク質量は20%くらいと揃えられており、糖質と脂質のバランスのみが違う。
そして1年間にわたるダイエット後に体重を測定したところ、結果は低脂質グループが-5.3kg、低糖質グループが-6.0kgとなった。
正直なところ、低糖質も低脂質もそこまで制限が厳しいわけではない。
なので、ダイエッターがよく行うようなダイエットとは違うと思うかもしれない。
しかし、先ほど紹介した極端な制限例でもダイエット効果は変わらなかった。
そして今回のような大規模実験でも糖質と脂質の配分が痩せるスピードに影響をあ耐えることはなかった。
これらを総合すると、やはり糖質を削ろうが脂質を削ろうがどちらも同じくらい痩せるのである。
ケトジェニックのほうが痩せた!そんな研究は99%タンパク質のおかげ
このようにカロリーとタンパク質が同じなら、ケトジェニックをしたときのダイエット効果は、ローファットをしたときやバランスの良い食事を食べたときと同じである。
ここで「でもケトジェニックダイエットのほうが痩せたという研究もあるでしょ?実際に見たことがあるぞ?」という人もいるかもしれない。
確かに『糖質制限のほうが痩せた!』という研究もあるが、それらの研究を見るとそもそも摂取カロリーが糖質制限グループのほうが少ないか、糖質制限グループのほうがタンパク質が多いという設定になっている。(R, R, R)
極め付けとしては「糖質制限に有利な結果を示した研究はタンパク質のせいでは?」を実際に調べた研究が2012年に行われている。(R)
被験者は132人で、研究者は彼らをタンパク質量で大まかに2つのグループに分けた。
- 高タンパク質グループ:体重×1.1g
- 普通タンパク質グループ:体重×0.7g
一般的なトレーニーの基準では高タンパク質グループでも全然”高タンパク質”とは思えないが、何はともあれタンパク質によって2つのグループに分けたのである。
そして、さらにこの2つのグループをケトジェニック(糖質量5%)と普通食(糖質量35%)に分け、”高タンパク質/普通タンパク質×ケト/普通”で計4つのグループを作った。
- 高タンパク質グループ:体重×1.1g
- ケトジェニック:タンパク質60%、脂質35%、糖質5%
- 普通(ローファット):タンパク質60%、脂質5%、糖質35%
- 普通タンパク質グループ:体重×0.7g
- ケトジェニック:タンパク質30%、脂質65%、糖質5%
- 普通グループ :タンパク質30%、脂質35%、糖質35%
”高タンパク質×普通”はローファットにしようという意図はないのだが、タンパク質に60%と糖質に35%も取られているので、脂質はたった5%と実質的にローファットになっている。
このような条件で3ヶ月にわたりダイエットをしてもらったところ、結果は以下のようになった。
- 減少した脂肪の量はそれぞれ「高タンパク質×ローファット:11.9kg」「高タンパク質×ケト:11.9kg」「普通タンパク質×ケト:10.0kg」「普通タンパク質×普通:-8.6kg」だった!
- ”高タンパク質 vs 普通タンパク質"で比較したところ、高タンパク質のほうが脂肪が減っていた!( 高タンパク質:-11.9kg vs 普通タンパク質:-9.3kg )
- ”低糖質”と”普通糖質”には違いが見られなかった(ケト:-11.0kg vs 普通食:-10.3kg)
高タンパク質の2グループは低タンパク質の2グループより脂肪が多く減った。
しかし、ケトジェニックの2グループと普通食の2グループでは体重減少率は変わらなかったのである。
つまるところ、高タンパク質はダイエットに有利だが、ケトジェニックはダイエットのスピードには影響を与えなかったのである。
それどころか、ケトジェニックは筋トレなどの高強度運動に使う糖質の量が少なくなるので、トレーニングパフォーマンスの低下が起こる可能性が高い。(R,R)
ケトジェニックダイエットはダイエット効果が優れている訳ではない上に運動のパフォーマンスを低下させる恐れがあるので、トレーニーに対して手放しでおすすめできる代物ではないのである。
ケトジェニックが向いているのは、面倒な計算をしたくない人
それではケトジェニックダイエットは役に立たないのか?というと一概にそうも言えない。
カロリーとタンパク質量さえ同じならばケトジェニックダイエットは他のダイエットと効果は同じ。
しかし、誰も彼もが「カロリーとタンパク質量」を気にしながら食事をできるわけではない。
カロリー計算なんて面倒で絶対にやりたくない人も中にはいるだろう。
そんなとき、ケトジェニックダイエットにするだけで痩せる可能性は十分にある。”1日の糖質を50g以下にする”だけで、面倒なカロリー計算なしに体重が落とせるかもしれないのだ。
このことを示したのが、2013年の研究。(R)
被験者となったのは女性31人で、研究者は彼女らに『糖質の摂取量を1日あたり50g以下にする』ように指導。
この条件で7日間過ごしてもらったところ、摂取カロリーが381kcalも減少したのである。
しかも、先ほどダイエットに有利だと紹介したタンパク質の摂取量も39%も増えた。
ケトジェニックのような糖質制限系のダイエットは、必然的に肉や魚、卵などタンパク質を多く含む食品を食べることになる。
脂質を摂ろうと思っても、純粋に”脂質だけ”を摂ることは難しい。誰もサラダ油の直飲みなんてしたくないので、必然的にタンパク質が多く含まれている食品を食べる羽目になるのである。
そしてタンパク質は食欲を抑える効果があり、実際に2015年のメタ分析でもケトジェニックダイエットは食欲を抑える効果があることが報告されている。(R)
『糖質を50g以下』という超単純なルールだけで自然とカロリーを減らしタンパク質を増やすことができる。
ケトジェニックダイエットはカロリー計算をしたくない人には実践する価値が十分にあると言えるだろう。
まとめ
今回は、ケトジェニックダイエットについて紹介した。最後にもう一度だけ、内容をおさらいしておこう。
- カロリーとタンパク質をあらかじめ決めるなら、ケトジェニックでもローファットでもダイエット効果は同じ
- ケトジェニックダイエットには、自然と摂取カロリーを減らし、タンパク質を増やす効果が期待できる
- ケトジェニックダイエットのやり方は、糖質を1日あたり50g以下にするだけ
カロリー計算をするダイエットをするなら、ケトジェニックダイエットに過度な期待をするのは禁物。
ただし、カロリー計算をしない場合は「糖質50g以下」という単純なルールだけで自然にカロリーが減り、タンパク質が増え、ダイエットにつながる可能性は十分にある。ぜひお試しあれ!