カフェインは運動のパフォーマンスを上げるの?
カフェインは睡眠を乱す??
今日はカフェインは運動パフォーマンスを上げるのかということについてご紹介していきたいと思います
- カフェインがまずそもそもどのように運動パフォーマンスを上げるのか
- 運動の種類によって効果が変わるのか
- カフェインの運動パフォーマンスも遺伝の影響を受けるのか
- 性別による違いあるのか
- カフェインの睡眠を阻害しない摂取時間は?
カフェインとパフォーマンス研究の歴史
まずはカフェイン研究の歴史から紹介します。
1907年代の研究
まず一番最初にカフェインが運動パフォーマンスを上げることを示した研究は1907年のもの。
カフェインによるエルゴジェニック効果を初めて示した研究
カフェインを摂取したグループのほうが仕事量が多いことがわかる。
手書きという時代を感じさせる研究ですね
それからだいぶ間が空き、1979年に再度カフェインのパフォーマンスアップ効果を示した研究が出てくる。
カフェインによるエルゴジェニック効果を示した研究。
こちらでも実際にカフェインをとった▲のグループは仕事量が多いことがわかります。
2020年:「カフェインのパフォーマンスアップを調べたメタ分析」のメタ分析
そこから研究が進み、カフェインのパフォーマンスアップ効果をメタ分析したものを、さらにメタ分析したアンブレラレビューが出てくる。
- 「カフェインのメタ分析21件をまとめた」
- 抜き出されたのはレビュー論文11件(合計21件のメタ分析)
実際の結果は下記のとおり。
- 有酸素運動:効果量0.22-0.61
- 筋持久力:効果量0.28-0.38
- パワー:効果量0.18-0.27
- 筋力:効果量0.16-0.20
どの運動のタイプにおいても、確かに効果があることが確認されました
ほとんどの研究で「6mg/体重の投与&テスト1時間前」だったので、1時間前に6mgのカフェイン摂取でパフォーマンスが向上するというのが確立された話になってくる。
カフェインのメカニズムは?
今となっては運動パフォーマンスアップ効果が示されたカフェイン。
研究が進み、どんなメカニズムなのかも解明されてきています
カフェインのメカニズム①中枢神経作用
カフェインの構造はアデノシンと似ている
カフェインの正式名称は1,3,7-トリメチルキサンチン。
メチル基が3つずつ付いたキサンチンってことです
キサンチンは黄色を表すギリシャ語が名前の由来で、実際にキサンチンと画像検索すると黄色い液体が出てくる。
このキサンチンに3つのメチル基がついたのがカフェインだが、カフェインの構造は体内に存在するアデノシンと似ている。
構造が似ているので、アデノシン受容体に結合することができます
しかしアデノシン受容体を活性化するほどには構造が似てない。
なのでアデノシン受容体を阻害するアデノシン受容体アンタゴニストという働きを持っている。
アデノシンは疲労を引き起こす物質
アデノシンとはそもそも何なのか?
アデノシンは簡単に言えば疲労に関係している物質で、アデノシン濃度は1日を通して上昇していく。
エネルギー通貨のATPの分解物がこのアデノシンです
このATPは正式名称で言うとAdenosine Tri Phosphate。
アデノシンに3つのリン酸基がついた化合物だが、このリン酸基にエネルギーが蓄えられている。
このATPっていうのはエネルギー通貨として働き、リン酸基をどんどん切り離していくことによってエネルギーを作り出す。
その3つついてるリン酸菌を全て使い切った状態の分解物がアデノシンになります
エネルギーが使われるとアデノシンが蓄積し、この蓄積したアデノシンが脳内の受容体に結合すると疲労を感じる。
カフェインといえば目が覚めるっていうイメージがあるが、これはカフェインがアデノシン受容体と結合することでアデノシンが結合できなくなることが原因。
結果的に体は疲労感感じにくくなるのだが、これがカフェインの中枢神経作用になる。
カフェインのメカニズム②末梢組織への作用
カフェインは筋肉の収縮を助ける
カフェインは中枢神経じゃなくて、末梢神経系でも直接筋肉を補助するような働きを持っている。
実際にどういう働きがあるかというと、筋収縮に必要なカルシウム放出を促進する働き。(R)
もう少し詳しく説明すると、まず脳からの中枢神経系の指令によってアセチルコリンが放出される。
そのアセチルコリンが筋肉細胞に到達すると、筋肉からカルシウムイオンが放出される。
そして、このカルシウムイオンの放出を合図にして筋肉の収縮が開始されるのだ。
カフェインは、カルシウムの放出を促進するかつカルシウムの再取り込みを阻害する。
簡単に言ってしまえば、カフェインはカルシウムを出っ放しになるように働くことで筋収縮を助けます
中枢神経とのリンクが切れている被験者でパフォーマンスが向上した
カフェインは中枢神経を刺激してしまうので、末梢組織だけを調べるのは難しい。
これを可能にしたのが半身不随の人を対象にした研究です
脊椎損傷による下半身麻痺患者9名に6mg/体重のカフェインを摂取してもらい、サイクリングで筋持久力を測定した
結果は下記のとおり。
被験者が9人いて、一番右が平均値。
筋持久力が平均して6%向上していることがわかります
半身不随の人というのは、脊椎を損傷していて脳と実際の下半身の神経伝達が分断されてる。
そんな人たちに電極をつけて足を人為的に動かしたところ、カフェインを摂取した状態はそうでない場合より平均して6%のパフォーマンス向上を示した。
中枢神経系とのリンクが切れているのにパフォーマンスが向上したので、これは筋肉に直接作用してるはずだという話になる。
一番最初に紹介したアデノシンの中枢神経作用とは別に運動パフォーマンス向上のメカニズムとして結び付けられたのがカルシウム放出なのだ。