頻繁に足がつるけど、原因がいまいちわからない。
もしあなたがカフェインをよく摂取するなら、その原因は”カフェイン”にあるかもしれない。
今回は、論文から『カフェインと筋けいれん』に関する話。
実は、カフェインは摂取量が増えれば増えるほど足がつることが判明しているのである。
カフェインが体に与える影響とは?
コーヒーに多く含まれているカフェイン。
このカフェインだが、正式名称は”1,3,7トリメチルキサンチン”と呼ぶ。
これはアデノシンと呼ばれる物質と構造が似ており、体中のアデノシン受容体とくっつく性質がある。(R)
実はアデノシンは脳や筋肉を制御するために使われている物質なのだが、カフェインがアデノシン受容体にくっついていると、アデノシン受容体にくっつけなくなる。
このアデノシンを阻害する作用によって、カフェインは体に様々な影響を及ぼす。(R)
<効果1:認知能力の向上>
まず一つ目の効果は、認知能力の向上である。
アデノシンというのは、脳では睡眠を制御するために使われている。
カフェインが脳のアデノシンの働きをブロックすることにより、眠気が覚め、認知機能が向上するのである。(R)
2016年の論文では、この認知機能向上効果はカフェインの用量に依存することが報告されている。(R)
中用量では気分を良くし不安を軽減させるが、高用量では緊張や不安を高めてしまうのだ。
覚醒度を高めたければ200mgが効果的で、実際にこれくらいの中用量で数時間パフォーマンスが向上したことが報告されている。(R)
そのなかでも、特に認知機能の向上効果が期待できるのは睡眠不足の人。
睡眠不足の場合でも、およそ300mgほどのカフェインを摂取すれば覚醒度が高まり、認知機能が改善する。
<効果2:有酸素運動のパフォーマンス向上>
2つ目の効果は、運動のパフォーマンス向上。
アデノシンは脳だけでなく骨格筋でも使われており、例えばアデノシンをブロックすると筋繊維のリクルート率が向上することが知られている。(R)
また、脳と筋肉を繋いでいる中枢神経も運動パフォーマンスに影響を与えるが、実は中枢神経でもアデノシンは使われている。
カフェインはこのアデノシンを邪魔する働きがあるので、運動のパフォーマンスにも影響を与えるのだ。
運動のパフォーマンス向上効果を”エルゴジェニック効果”というが、このエルゴジェニック効果は特に有酸素運動がよく研究されている。
このカフェインのエルゴジェニック効果だが、高用量よりも中用量(250~500mg)で大きくなることが知られている。(R)
つまるところ、カフェインの効果は逆U字型のようになっている。
量が少なすぎても多すぎても、最適な効果は得られない。
これは先ほどの認知機能向上も同じである。
さらには、カフェインを高用量で使うと胃腸障害などの副作用も起こる可能性が高い。
むやみやたらにカフェインを摂取するより、250~500mgほどの中用量がオススメ。
<効果3:筋トレのパフォーマンス向上>
3つ目の効果は、筋トレのパフォーマンス向上である。
先ほども説明した通り、カフェインがアデノシンの作用を邪魔すると、筋繊維のリクルート率が上がる。
結果として筋力が向上するなど、筋トレのパフォーマンス向上につながる。
実際に2018年のメタ分析では、カフェインを摂取することによって筋力が向上したと結論づけられている。(R)
ちなみに、おすすめの摂取タイミングは筋トレの1時間前。
この時間にカフェインを摂取することによって、筋トレのパフォーマンスが向上するのである。
カフェインは体に様々な作用を及ぼす
このように、カフェインは体中でアデノシン受容体の働きを邪魔することで、認知機能向上や運動パフォーマンス改善など、様々な効果を及ぼす。
これらの覚醒効果や運動のパフォーマンス向上は存外よく知られているが、カフェインにはもう一つ知られていない効果がある。
それは、足のつりやすさへの影響である。
カフェインと”筋肉のつりやすさ”には関係がある
足が頻繁につるようなら、カフェインの摂取を見直したほうがいいかもしれない。
というのも、近年の研究で「カフェインは筋痙攣に関係している可能性がある」と報告されているからだ。
カフェインを摂取することで足がつる、というのはあまり聞き馴染みがないかもしれない。
しかし、例えば2007年のケーススタディでは、54歳の男性にカフェイン入りの薬を控えるように指導したところ、実際にふくらはぎがつらなくなったことが報告されている。(R)
さらにこの研究では、男性に再度カフェイン入りの薬を服用してもらったところ、またふくらはぎがつるという症状が現れるようになったことが報告されている。
この研究で足がつるようになったカフェイン量は、1日あたり900mgというかなりの高容量。
しかし、コーヒーやサプリなどをかなり頻繁に摂取していている人にとっては絶対に届かない値ではない。
もしカフェインをかなり大量に摂取している自覚があり、なおかつ足がつることに悩まされているならカフェインの摂取を控えたほうがいいだろう。
他には、2014年のノースダコタ大学による研究でも、”カフェインの摂取”と”筋肉のつりやすさ”には関連があると報告されている。(R)
この研究は17人の男女を対象にしたもので、3日間にわたり被験者にはそれぞれ0mg、250mg、500mgのカフェインを摂取してもらった。
その後、カフェインの摂取前と摂取後で筋肉のつりやすさを測定。
結果は『16Hz、17.4Hz、19.4Hz』と、カフェインの摂取量が増えるごとに筋肉がつる閾値が上がったことが報告されている。
要するに、先ほどの研究とは異なり、カフェインを摂取するほど筋肉はつりづらくなったのである。
この2つの研究からは、当然「結局カフェインで足はつるの?どっちなの?」という疑問が湧いてくる。
しかし、残念ながら現段階ではこの疑問に答えることはできない。
というのも、カフェインは足のつりやすさと関係があることはわかっているが、その効果がどっちなのかはいまだによくわからないのである。
”カフェインの摂取”と”筋肉のつりやすさ”には関係があるようだ。しかし、具体的に”カフェインの摂取”と”筋肉のつりやすさ”にどのような関係があるかについては、更なる研究が必要である。
単に『カフェインが筋肉のつりやすさに関係がありそう』ということしかわかっていないが、もしあなたがカフェインをよく摂取し、その上で足がつりやすいなら、カフェインの摂取量を減らしてみる価値はあると言えるだろう。
まとめ
足がつる原因は、”脱水”や”運動のし過ぎ”などである可能性が高い。
しかし、これらの原因に全く思い当たるふしがないにも関わらず足がつるというなら、それはカフェインが原因かもしれない。
カフェインの摂りすぎに少しでも心当たりがあるなら、一度カフェインの摂取量を減らしてみてはいかがだろうか?