運動のしすぎな気がするけど、どうしても休むのが不安...
自分も元はそのタイプですが、その気持ちの根幹にあるのは”硬直思考”かもしれません
今回は「自己価値と外見を結びつけると運動依存になりメンタルが悪化するかも」という研究を紹介。
ダイエットでも有害だと紹介した硬直思考だが、実はメンタルヘルスを悪化させるばかりか運動依存にすら関わっている可能性があるのだ。
- 不合理な信念は”極端で硬直的な思考”のことで、自滅的な行動に繋がりやすい
- 硬直した身体イメージとは”外見と自己価値”が強く結びついている状態でメンタルを病みやすい
- ”不合理な信念”と”硬直した身体イメージ”を両方持つヒトは、運動衝動をコントロールできないと感じることが多かった
不合理な信念と身体イメージの柔軟性の欠如
今回紹介するのは2023年の論文。(R)
”不合理な信念”と”ボディイメージの柔軟性の欠如”がダイエットにもたらす悪影響を調べた論文です
不合理な信念とREBT(Rational Emotive Behavior Therapy)
心理学の世界では”irrational belief(不合理な信念)”というマインドがあります
不合理な信念とは「極端で硬直的な思考」のことで、その構成要素は4つ。
- べき思考(Demandingness)
- 物事は絶対こうならなければならない
- 過度の悲観(Awfulizing)
- 少しでも間違いを犯したら大変なことになる
- イライラに耐えられない(Frustration intolerance)
- 物事が少しでも思い通りにいかないことが耐えられない
- 自己卑下(Self-depreciation)
- ミスを犯した私には価値がない
実際には少しミスしたくらいで大事にはならないし、物事が全部うまくいくわけもない。これらの考えは合理的ではありません
ダイエットでなんであれ目標達成には困難がつきもの。
そんなときに”不合理な信念”を持っていると破滅的な行動につながるので、不合理な信念を解消しようとするのがREBT(Rational Emotive Behavior Therapy)になる。
不合理な信念を正す「GABCDEフレームワーク」
REBTで用いられるのがGABCDEフレームワークと呼ばれるもので、要は”不合理な信念”を特定して書き換えようというものです。
- ヒトは目標(Goal)を立てるが
- 逆境(Adversity)に阻まれる。
- もし不合理な信念(irrational Belief)があると、
- そのヒトは感情的/行動的に不健康な結果(Consequences)に陥る
- そこで不合理な信念に異議を唱え(Dispute)
- 新しく合理的な信念(Effective rational belief)を作る
例えばダイエットであるあるの「目標より少し食べ過ぎてしまった」という場合を考えてみよう。
- G:毎日200kcalのカロリー制限を目標にしていたが
- A:ついオーバーして-50kcalしか達成できなかった
- B→C:①ダイエットはどうせ失敗してしまったと自暴自棄になり、ついドカ食いした
- D→E:②ちゃんとマイナスカロリーだし失敗じゃない。1日くらいオーバーしても長い目で見たら大したことないと考え、そのままベッドに入り寝た
”不合理な信念=硬直思考”に陥ると悪い結果である①になりますが、”合理的な信念”で書き換えれば②の結果になる。
不合理な信念を持っているヒトは逆境に立たされると自滅的な行動を取ることが多く、先行研究でもメンタルヘルスが悪化することが示されています
身体イメージの柔軟性
もう一つ、ダイエットをする人が無視できない概念に「Body Image Psychological Inflexibility(BIPI)」というものがある。
日本語で言うと「硬直した身体イメージ」で、簡単に言えば「外見と自己価値が強く結びついている人」です
ダイエットしている人というのは、少なからず体型に不満を持っている人だろう。
しかしその”体型への不満”が行きすぎてしまうと、身体醜形症のような症状に襲われてしまう可能性があるのだ。
身体イメージに柔軟性がないヒトは、自分の外見と自己価値が強く結びついている。
結果として「自分の体型によって気分が左右される」「少し体重が多いときは誰とも会いたくない」などという結果になりやすい。
一方で柔軟な身体イメージのヒトは、体型に不満があっても根底には「体型で人の価値は決まらない」という考えがある。
身体イメージの柔軟性が高い人は自分の欠点を一旦受け入れ、改善のために建設的な努力をできます
”不合理な信念”と”硬直した身体イメージ”の組み合わせが運動依存を引き起こしているのでは?
”不合理な信念”と”硬直した身体イメージ”の組み合わせが運動依存とメンタルヘルスに与える影響を調べたのが今回の研究です
被験者となったのは運動習慣のある男女302人で、「不合理な信念」「身体イメージの柔軟性」「運動依存」「抑うつ・ストレス」などの尺度を測定して2つのグループに分けた
- 不合理な信念が高く、身体イメージの柔軟性が低い
- 不合理な信念は低いが、身体イメージの柔軟性が低い
①は不合理な信念と硬直した身体イメージを両方持っているパターン、②は硬直した身体イメージだけのパターンです
これら2つのクラスに分けた上で、運動依存やストレス尺度を比較したところ結果は以下のようになった。
- エクササイズに費やしている時間はどちらも変わらなかった!
- ①のほうが抑うつ傾向、不安、ストレスの値が高かった!
- ①のほうが閉塞感や運動衝動をコントロールできないと感じることが多かった!
実際の運動時間こそ変わらなかったが、不合理な信念と硬直した身体イメージの両方を持っているヒトのほうが運動衝動をコントロールできないと感じる傾向にあった。
そして何より、不合理な信念と硬直した身体イメージを持っているヒトは不安やストレスを感じやすく鬱っぽいことが分かったのだ。
不合理な信念こと硬直思考が強いと、メンタルを病むだけでなく運動をしすぎる可能性もあることが発見されました
不合理な信念や硬直思考はダイエットの敵
以前にダイエットを失敗に導くとして紹介した硬直思考だが、メンタルヘルスを悪化させるばかりか運動依存にも関わっている可能性がある。
自分は極端な性格で不合理な信念を持っているかも...
運動を休むことがどうしても怖く感じる...
このようなヒトは非合理な信念が浮かんできたなと思ったら、一度立ち止まって”合理的な考え”に書き換えられないか考えてみるのがおすすめ。
極端な考えをしてしまうのはダイエットあるある。そんなときは一度バランスのとれた考え方ができないか立ち止まって考えてみましょう