「自分で意思決定をする人のほうが幸せ」
というセリフを聞いたことがある人もいるかもしれない。
一方で、自分で決定するのはどうしても怖く、誰かに決めてもらいたいと思う人もいるだろう。
それでは、どちらが実際に幸せに近づくことができるのだろうか?
ということで、今回は「幸福な意思決定はどうすればできるのか?」という話。
実は、意思決定は幸福感と密接に関わっていることがわかっているのだ。
幸福を決める6つの要素
そもそも、幸福感というのはどのようにして決まるのだろうか?
1995年の研究によると、幸福感は以下の6つの要素で構成される。(R)
1、自己受容:Self-acceptance
自己概念に対する満足度。自分の強みと弱みをしっかりと認識していること。
2、良好な人間関係:Positive relations with others
長期的で安定した、満足のいく社会的関係を築ける能力。
3,環境の制御:Environmental mastery
自分の趣味や嗜好に合った環境を生み出したり、選択する能力。
4,自律性:Autonomy
様々な社会的状況において、自分の個性を発揮することができる能力
5,人生の目的:Purpose in life
長期的な個人の目標を設定し、それを達成するための方法を確立することができる能力。
6,自己成長:Personal growth
自分の可能性を最大限に伸ばすための戦略を実行する能力。
この6つが人間の幸福に重要とされている要素である。
自分の強みも弱みも正しく評価して認識していることが幸福につながるのはやや意外かもしれないが、其れ以外の要素は幸福につながることがイメージしやすいだろう。
実際に、良好な人間関係に恵まれ、自分に合った環境で生活し、自分の個性を十分に発揮して、人生に目的を持ち自己成長を繰り返すヒトは幸福だろう。
それでは、この幸福に関する6つの要素を向上させるにはどうすればいいだろうか?
実は、この6つの要素の向上に”意思決定”が大きく関わっているのである。
意思決定の4つのスタイル
人生において、私たちは重要なことから些細なことまで、何度も意思決定を繰り返して生きている。
その数は下記の書籍によると3万5千回にも及ぶという研究すらあり、意思決定が私たちの幸福度に影響を及ぼすことは想像に難くないだろう。https://rcm-fe.amazon-adsystem.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=000000&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=hrk0057-22&language=ja_JP&o=9&p=8&l=as4&m=amazon&f=ifr&ref=as_ss_li_til&asins=0199668477&linkId=a06d7c7532367d8a5bbd692cd5bbb993
そんな人生を左右する意思決定だが、1977年の研究によると意思決定には4つのスタイルがあるとされている。(R)
1,用心:Vigilance
体型的な調査と注意深い判断によって意思決定する。焦ったり衝動的になることはなく、個人の目的を満足するような決定をする。
2,用心しすぎ:Hypervigilance
衝動的な意思決定スタイルで、不安感やパニックにつながる。このスタイルは思考プロセスが無秩序で、選択肢とその結果を正しく評価できない。
3,回避:Avoidance
意思決定を第三者に委ねることで、目の前の問題から逃げる。
4,ひとりよがり:Complacency
自分の嗜好を考えない、やり方を変えない。他人の言うことに従うなど。
この中で、より良い意思決定につながるのは”用心”のみで、適応的意思決定と呼ばれたりする。
一方で、行き当たりばったりで決断したり、自分で決められず他人に決めてもらう、などの意思決定戦略は不適応な意思決定と言われるのだ。
適応な意思決定をするほど幸福度があがる。
意思決定が幸福度に与える影響を調べた研究に、2020年のものがある。(R)
スペイン人1262人を対象にし、意思決定と幸福の6要素に関する質問をしたところ、結果は以下のようになった。
- 適応的意思決定スタイルは、全体的な心理的幸福感と正の相関があった!(r=0.544)
- 不適応な意思決定スタイルは、全体的な幸福感に負の相関があった!(r=-0.458)
自分で選択肢を吟味して決定を下す人は主観的な幸福度が高かった。
一方で、衝動的に決めたり他人に決めてもらったりしていた人は主観的な幸福度が低かったのである。
なぜこのような理由になるのだろうか?
それは適応的な意思決定をする人ほど、幸福の6要素の全てのスコアが高い傾向にあったから。
- 自己受容:r=0.485
- 良好な人間関係:r=0.242
- 環境の制御:r=0.472
- 自律性:r=0.242
- 人生の目的:r=0.473
- 自己成長:r=0.346
そして、不適応な意思決定をする人ほど、幸福の6要素の全てのスコアが低い傾向にあったことも報告されている。
- 自己受容:r=-0.323
- 良好な人間関係:r=-0.276
- 環境の制御:r=-0.357
- 自律性:r=-0.399
- 人生の目的:r=-0.278
- 自己成長:r=-0.348
この中でも、特に自分で吟味して決める人のスコアが高いのは、自己受容・人生の目的・自己成長など。
自分でしっかりと意思決定する人が、人生に目的を持って自己成長をするのは想像に難くない。
さらには、自分を受け入れることができているので、その結果として幸福度も高くなっている。
一方で、衝動的に決めたり他人に意思決定を委ねる人は、自分の個性を発揮できておらず、人生に目的もなければ、自己成長もない。
さらには自分のことを受け入れることができないとなれば、幸福度が下がるのも当たり前だろう。
意思決定は自分でするべき
このような結果は他の研究でも示されており、第三者に決断を委ねる”依存的な意志決定”をする人は、自尊心が低く、安定した人間関係を気づくことが困難で、人生の目的も欠如していることが報告されている。(R)
これらの条件は、ひいては幸福度の低さとも関連しているのである。
一方で、自分の将来の目標を達成するために慎重に選択した人は、高い幸福と関連していることが報告されているが、これは人生の目的や自己成長が幸福度に関連しているからだろう。
他人に決断を委ねると自分が決めなくてラクに感じるかもしれないが、最終的に行き着く先は地獄なのである。
それでは、具体的にはどのように決断を下せばいいのだろうか?
2002年の研究が意思決定の方法を紹介してくれている。(R)
その方法は単純で、以下の4ステップからなる。
- 目的を設定する
- 選択肢を書き出す
- 基準を決めて優先順位をつける
- 選択肢の中から1つを選ぶ
つまるところ、まずは決断の目的をはっきりとさせ、選択肢を思いつく限り書き出すのが大事なのである。
その後は基準を決めて少しずつ選択肢を狭めていき、最後は自分を信じて一つに決める。
こうすることで、幸福の6要素が高まり、ひいては自分の人生への満足度が高まることだろう。
怖くても自分で決めるしかない
自分で決められない、だから他人に決めてもらう。
この意志決定スタイルが行き着く先は、人生の目的も自己成長もなく、自分を否定してばかりの人生である可能性が高い。
決断をすることは不安かもしれないが、不安であることを受け止めた上で自分で決断するしかないのである。
ちなみにこの不快な感情を受け止める能力は”心理的柔軟性”とも呼ばれ、先延ばしにも効果的な人生の必須スキル。
決めるそのときには不安でも、人生最後の日には自分の人生に満足して死ぬことができるだろう。
もちろん、生きている間も幸福感が高まる。
決断から逃げて第三者に委ねていた人は、騙されたと思って自分で決断してみて、自分がどう感じるかを観察してみてはいかがだろうか。ぜひお試しあれ!