「とにかく少しでも早く痩せたい!」
そんな願いを叶えるべく、一昔前に流行ったのが”ECAスタック”。
スタック(=stack)とは日本語で”組み合わせ”を意味するのだが、ECAスタックとは「エフェドリン・カフェイン・アスピリン」というサプリの組み合わせのこと。
エフェドリン(Ephedrine)、カフェイン(Caffeine)、アスピリン(Aspirin)を組みわせたので、頭文字を取ってECAスタックと呼ばれる。
残念ねことに、実は今となってはECAスタックはもう試せない。肝心のエフェドリンが医師の処方なしでは手に入らない薬物に指定されてしまったからである。
とはいえ、ECAスタックに近い効果を再現することは可能。
今回は、論文から「ECAスタックの理論と実践方法」を紹介しよう。
ECAスタックとは、体の代謝をあげるサプリの組み合わせ
ECAスタックは、一昔前に「脂肪燃焼サプリ」として流行った。これは「エフェドリンによる代謝上昇効果をカフェインとアスピリンで最大限に高めた」というものなのだが、具体的な方法は以下のようになる。
まずはエフェドリンで代謝をあげる
ECAスタックの主な作用はエフェドリンによるもの。
エフェドリンは、摂取すると体でノルエピネフリンという物質が放出される。
このノルエピネフリンが交感神経を活性化し、体では熱が発生。代謝が上昇するという仕組みである。(R)
このノルエピネフリンというのは、運動時にも放出されるごくありふれた物質。
簡単に言えば、エフェドリンを摂取すると何もしていなくても運動しているかのごとく代謝が上昇するのである。
カフェインとアスピリンが効果を持続させる
エフェドリンによる代謝上昇だが、もちろんずっと続くわけではない。
ヒトには、体の状態を一定に保つ”ホメオスタシス”が存在するので、上昇した代謝も次第におさまっていくのである。
それではどのように体の代謝は元に戻るのだろうか?
実はノルエピネフリンが放出されると、同時にプロスタグランジンとアデノシンという物質も生産される。
このプロスタグランジンとアデノシンがノルエピネフリンを抑制することにより、ノルエピネフリンの代謝上昇作用は次第に弱められていくことになる。
なら逆に、ノルエピネフリンの代謝上昇効果を持続させたいならどうすればいいのか?
答えは簡単で、アデノシンとプロスタグランジンの働きを邪魔すればいいのである。そうすればノルエピネフリンが抑制されることもなく、代謝上昇効果は長続きする。
ここで登場するのが、コーヒーなどに含まれるカフェインと鎮痛剤などとして使われるアスピリンである。
”アデノシンを邪魔するカフェイン”と”プロスタグランジンを邪魔するアスピリン”を一緒に飲むことで、エフェドリンが体で放出させた”ノルエピネフリン”を分解しないようにするのである。
この組み合わせこそが、一昔前に代謝を最大限に高めるとして流行った”ECAスタック”になる。
ECAスタックは、効果が高いが副作用が危険すぎる
一世を風靡したECAスタックだが、冒頭でも述べたように現在は実践することができない。
エフェドリンが死者を出したために副作用が危険視され、現在では手に入らないからだ。
アメリカでは、2004年に米国医薬品食品医薬品局によってエフェドリンを含むサプリが全面的に禁止された。(R)
日本でもエフェドリンは医薬品に指定されており、手に入れるためには医師の処方箋が必要。
ダイエットに使いたいからなどと言っても処方してもらえることはないだろう。
ちなみに、エフェドリンには以下のような副作用があるとされている。
- 精神依存
- 心臓への負担
- 胃腸障害
- 血管障害
代謝を上げるということは心拍数と血流が増加することを意味するので、当然心臓や血管には負担がかかる。
さらには、エフェドリンには精神にも作用すると言われている。これは以前からよく知られており、禁止薬物に指定される前はエフェドリンは『精神作用により食欲が減退して痩せる』という謳い文句で売られていたほどである。
そして、エフェドリンのこれらの副作用により死者も報告されるようになり、全面的に禁止されることとなった。
こんな歴史のため、ECAスタックは完全に過去の遺物となってしまい、現在では実践することができない。
ちなみに漢方の”麻黄”などにはエフェドリンが含まれているが、代謝を上げるのに十分な量が含まれているかは不明。
どちらにしろ、飲むだけで代謝を上昇させるECAスタックはもう試せないのである。
HIIT&カフェイン&アスピリンで、ECAスタックの理論を実践する
エフェドリンが使えないとなると、当然ECAスタックは試せない。
しかし、実はその理論自体は実践することができる。
カフェインとアスピリンは手に入るので、あとはノルエピネフリンを放出する何かさえあれば「新生ECAスタック」が完成するのである。
それではエフェドリンに代わりノルエピネフリンを放出させるものとは何なのか?答えは簡単、それは運動すればいいのである。
先ほども話したように、運動はノルエピネフリンを放出する。
高強度の運動をすればかなりの量がノルエピネフリンが放出され、体のエネルギー消費量は高まる。
そしてカフェインとアスピリンでノルエピネフリンの分解を邪魔すれば、理論上はECAスタック服用時とほとんど同じ状態となるのである。
具体的なプロトコルは以下のような手順になる。
- カフェイン200mg&アスピリン324mg&チロシン1gを摂取する
- 30分後に、4分間の激しい運動(タバタ式HIIT)を行う
- その後、1時間ほどウォーキング
まず、カフェインとアスピリンが体に吸収されるのを30分間待つ。同時に、ノルエピネフリンの材料となるチロシンも念の為投下。
その後はHIITでノルエピネフリンを放出したら、理論的にはECAスタックと同じ状態の完成。
そのあとは軽い有酸素運動でさらに追い討ちをかけるのである。
この方法は私が2週間実践したところ、2週間で1.4kg減るというなかなかの健闘ぶりだった。(69.2kg → 67.8kg)
とはいえ、このプロトコルはECAスタックのように飲むだけで代謝が上昇すると言ったようなラクな代物ではない。
HIITからの1時間の有酸素運動を強いられるので、普通にそこそこきつい。
ただ、理論上はECAスタックと同じ効果があり、体感的にも痩せていくのを感じることができた。
興味のある人は一度試してみる価値はあるかも知れない。
まとめ
ECAスタックは、残念ながらもう実践できない。
エフェドリンの部分を運動で代用して理論を実践することはできるが、普通にきつい。
”飲むだけダイエット”には程遠い代物である。
とはいえ「少しでも早く痩せたい」「ECAスタックを実践してみた」という人には、この方法が最良だろう。
そんなときはぜひ上記の方法を試してみてはいかがだろうか。参考までにどうぞ。