夜になかなか寝付けない。そんな風にストレスを抱えていないだろうか。
さらに一旦寝付けないことがストレスになると、そのストレスでさらに寝付けなくなるという悪循環にハマったりする。
今回は論文や書籍から「睡眠不足の解消法」をご紹介。
睡眠不足の原因から米軍が開発した120秒で寝付けたという方法、生活習慣の改善法などを紹介しよう。
そもそも睡眠不足の原因とは何なのか?
まず、そもそも睡眠不足の原因とは何なのだろうか?
多くの原因が考えられるが、例えば2019年の論文では以下のような原因が挙げられている。(R)
- 気分障害やストレス
- 生活費の不安
- 野菜摂取量の低下
- 喫煙
- 家族の中に子供がいる
- 炭酸飲料による糖質や塩分の過剰摂取
- 人種や遺伝的要因
睡眠不足の原因としてまず挙げられるのが心理的なストレス。
仕事などでの対人ストレスや、住居費や食費などの生活費に対する不安などを抱えていると睡眠が乱されてしまう。
他の原因としては野菜の摂取不足や喫煙などのあからさまな健康習慣もあるが、意外と知られていない原因が”人種や遺伝”。
実は黒人は白人に比べて睡眠時間が短かったり、遺伝的に睡眠時間が短い人がいることが知られている。
この研究では紹介されていないが、他にはスマホのブルーライトなんかも睡眠不足を引き起こすことも知られている。夜にパソコンやスマホを見る人はブルーライトをカットするメガネを使うほうがいいというのは以前紹介した通り。
このように睡眠不足には多くの要因があるが、症状を改善するためにすぐに対策が可能な原因は少ない。
対人ストレスや生活への不安などは一朝一夕では解決できないだろう。
とはいえ、寝付けないのはかなりのストレス。そんなときに対処療法として使える方法を紹介しよう。
3ステップで、体と心をリラックスさせる
ということで、以下の書籍から「アメリカ空軍式120秒で寝付ける方法」を紹介しよう。
この方法はアメリカ空軍で実施したところ何と96%もの人々が120秒以内に寝付くことができたというもの。
正直ちょっと誇張表現な気も否めないが、今回はその方法を紹介しよう。
基本的には「寝つきに重要な体と心のリラックス」を実践するための方法になる。
というのも、心と体をリラックスさせると言葉にするのは簡単だが、実践するとなると途端に難易度が上がる。
そこで、睡眠への悩みを持ったパイロットたちを救うべく、米軍がリラックス法を手順化した。その具体的な方法は以下の3ステップで行われる。
1.顔をリラックスさせる
まず初めに顔をリラックスさせよう。布団の中で目を閉じ、顔のパーツを一つずつ弛緩させていくのである。
おでこ、ほっぺた、舌、あご...と、顔の筋肉を順番にリラックスさせていく、
正規の方法では43の筋肉をやることになっているが、正直なところそこまで細かくこだわる必要はないだろう。
実際に試してみると、意外なほどに顔の筋肉が緊張していることに気づくはず。この緊張した筋肉を一つずつほぐしていくようにしよう。
すると、呼吸も自然と深く、ゆっくりとしたものになっていくのがわかるはず。
2.体の筋肉も順番にリラックスさせていく
顔の筋肉をリラックスさせたら、次は体の筋肉を上からリラックスさせていく。
首、肩、腕、太もも、ふくらはぎ...というふうに、こちらも順番に筋肉を弛緩させていくのである。
ちなみに、腕や足は片方ずつ行うのがポイント。
まずは各パーツの重さをしっかりと感じ、その後ゆっくりとリラックスさせていく。
リラックスさせるときのコツは、各パーツが自然と足元に向かって落ちていくようなイメージで行うこと。
それでもうまくできない場合は、一度力を入れてから一気に脱力する、を繰り返すようにしよう。
一度力を入れることで、脱力する感じを体感できるようになるだろう。
3.精神を落ち着かせる
顔と体の筋肉をリラックスさせたら、次は精神を落ち着かせよう。リラックスできる情景を、10秒だけ想像するのである。具体的には以下のような情景になる。
- 湖に浮かぶボートの上で、春の陽気を感じながらウトウトしている
- 真冬の雪の日、暖かい暖炉の前でハンモックに揺られている
このとき、雑念でこのような想像ができないときがあるかもしれない。そんなときは「考えるな、考えるな、考えるな...」と頭の中でつぶやくようにしよう。
少なくとも雑念が浮かんでこないようにすることで、頭が空っぽになり精神がリラックスできるようになる。
この1~3までの一連の流れこそが、アメリカ空軍の96%が120秒以内に寝付けたリラックス法になる。
生活習慣を変える
夜寝れない、寝つきをよくしたいと思っている人は、とりあえずアメリカ空軍式リラックス法を試すのがいいだろう。
しかし、この方法はあくまで対処療法的な方法で根本的な解決にはなっていない。
長期的に睡眠不足から脱したいならもちろん生活習慣を変える必要がある。
それではどのように生活習慣を変えれば良いのか?
気をつけるべきポイントを2020年の論文から紹介しよう。(R)
- 週末も含めて同じ時間に起きる
- 寝る前は運動や食事をしない
- 朝目覚めたら日光を浴びる
- ベッドの中でスマホなどの電子機器を使わない
- 夜中に目覚めたときはリラックスできる方法を実践する
基本的には寝る前に食事や運動などはしない、睡眠リズムは同じにするなどオーソドックスな内容となっている。
(詳しく知りたい方はこの研究を紹介したこちらの記事をどうぞ。)
ちなみに寝る前の運動は良くないが、運動そのものは睡眠に良い影響を与えることが知られている。
実際に2017年の運動と睡眠を調べた系統的レビューでは、34件の研究のうち運動が睡眠に良い影響を与えたのが29件、効果なしだったのが4件、ネガティブな影響を与えたのはたった1件だったことが報告されている。(R)
先ほどの野菜摂取量の低下が睡眠不足の原因となることを合わせると、やはり食事と運動に気を使いつつ、睡眠リズムを一定にするのが第一になるだろう。
そして私が個人的におすすめしたいのが夜中に目覚めたときにできるリラックス法を決めておくことである。
というのも、先ほど紹介したように心理的ストレスは睡眠不足の原因になるのだが、一番の心理的ストレスとなるのは「今日も寝れなかった」と気にしてしまうことだろう。
そんなときに「自分にとって価値ある行動/好きな行動」をするようにすると、睡眠不足そのものが心理的ストレスになる感覚が和らぐ。
例えば私の場合では夜中に目覚めてしまったときは「論文を読む」と決めたことで、むしろ夜中に目覚めた方が生産的な時間を過ごせるので夜中に目覚めることが気にならなくなった。
「夜中に目が覚めてしまった」と思うよりは「好きなことができる時間がやってきた」と考えるほうがストレスを軽減することができるだろう。
まとめ
今回は睡眠不足に関する研究をまとめた。
まずはアメリカ空軍式のリラックス法で対処療法を行いつつ、徐々に生活習慣を改善していくのがいいだろう。
あとは「ヒトは夜中に目覚めるのが普通」という研究もあるくらいなので、夜に目覚めること過度に気にしないほうがいい。
過度に気にするとストレスが溜まり睡眠が乱される悪循環になるだけなので、好きなことをする時間くらいに思っておくのがいいだろう。参考までにどうぞ!