筋トレでジムに通っている人ならば、一度くらいはストレッチエリアでローラーをコロコロしている人を見たことがあるだろう。
最近のジムのストレッチエリアには必ずと言っていいほど置いてあるこのコロコロだが、名前は”フォームローラー(Foam Roller)”という。
2015年の論文から実際の写真を引用しよう。(R)
アマゾンなんかでフォームローラーと検索すると、この2つのタイプの棒が出てくる。
両方ともフォームローラーと呼ばれていたりするが、実は科学界ではこの2つはちゃんと区別されている。
左が正式なフォームローラーで、右は”ローラーマッサージ(Roller Massage)”と呼ばれている。
ただし、その理論はほとんど同じであり、スポーツ科学ではローラーマッサージが使われることが多い。
なので、今回の記事は左のローラーマッサージに焦点をあてている。
ちなみに、理学療法の痛み治療としても使われるローラーマッサージだが、今回はあくまで「ローラーマッサージは筋トレの効果を上げるか?」という話。
(治療という意味でのフォームローラーに関しては理学療法士に相談を。)
それでは早速、フォームローラーはトレーニーにとって効果があるのかどうか、まずはその理論的背景から紹介していこう。
ローラーマッサージの基本的な理論は”筋膜リリース”にあり
とはいえ、早速話の腰を折るようで申し訳ないが、フォームローラーの理論というのはハッキリと分かっていない。
というのも、フォームローラーのメカニズムを調べた研究というのはほとんどないから。(R)
とはいえ、提唱されている理論が一切ないわけではないので、それを紹介していこう。
まず、ローラーマッサージで期待できる効果のほとんどは、いわゆる「筋膜リリース」に由来している。
骨格筋というのは多数の筋繊維が集まって出来ているが、その筋繊維をまとめているのが筋膜(Fascicle)である。
そんな筋膜だが、実は姿勢が悪かったり運動不足になったりすると、隣り合う組織と結合してしまうことがある。
そんなとき、痛みの感知センサーとしても働く”自由神経終末”が密集している筋膜には、痛みを感じやすい場所(=トリガーポイント)が出来るのだ。(R)
そこで、フォームローラーで筋膜に力を加えてほぐしてやろうというのが”筋膜リリース(myofascial release)”の基礎コンセプト。
実際に、フォームローラーを使うことにより、筋膜がほぐれたり、血流や副交感神経が増加するなどして、トリガーポイントが分解され、被験者の痛みが減少することが知られている。(R、R)
これらの理論的根拠から、筋トレにはどう役立つだろうか?考えられる影響は、主に2つ。
- 筋膜の構造的変化による”筋トレのパフォーマンス”への影響
- 痛みの低減効果による”回復効果”
筋膜がほぐれるということは、少なからず骨格筋の構造が変わるということである。
ということは、ストレッチと同様、筋トレ前に行うことによって、パフォーマンスにも何らかの影響を与えることが想像できる。
もう一つは、筋トレ後にフォームローラーをすることによって、痛みの軽減などの回復効果が生じることも期待できる。
とはいえ、理論的には効果があっても実際に効果があるとは限らない。
ということで、ここからはヒトを対象に「フォームローラーの筋トレへの効果」を調べた研究を紹介しよう。
ちなみに、理論的背景もあって、今回はフォームローラーの効果を「筋トレ前にやった場合」と「筋トレ後にやった場合」で分ける。
さらには”セット間”のフォームローラーを調べた研究もあるので、筋トレ前・セット間・筋トレ後の3つを紹介しよう。
筋トレ前のフォームローラーでパフォーマンスアップ?
まず、筋トレ直前のローラーマッサージの効果について。