筋トレの効果を高める?ベータアラニンの科学【論文13本】

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ボディメイク界で有名なサプリメントを紹介するシリーズ第三回目。

今回の主役は「ベータアラニン」である。

ベータアラニンの基本的なメカニズムから運動のパフォーマンスを上げる方法まで、その全貌を紹介しよう。

目次

ベータアラニンとは?

そもそもベータアラニンとは何なのだろうか?

ベータアラニンとはアミノ酸の一種で、ヒスチジンという別のアミノ酸と結合することでカルノシンと呼ばれる物質になる。[1]

ベータアラニン+ヒスチジン→カルノシン
ベータアラニン+ヒスチジン→カルノシン

このカルノシンだが、運動時のパフォーマンスにおいて重要な役割を果たしている。

それが”緩衝剤”としての作用である。

ある種の運動をすると、筋肉内に代謝物が溜まり、細胞内が酸性の状態になるアシドーシスという現象が起こる。

このアシドーシスという状態になると、筋肉は疲労を感じてしまうのだ。

緩衝剤には、このpHを変化しづらくする作用がある。

つまり、緩衝剤であるカルノシンが大量にあると、筋肉がアシドーシスになりづらくなる。

そして筋肉がアシドーシスになりづらいということは疲労を感じづらくなり、運動のパフォーマンスが向上することを意味する。

実際に、4gから6g程度のベータアラニンを取ると、筋肉のカルノシン合成が促進され、カルノシン濃度は4週間後には64%、10週間後には80%まで上昇することが分かっている。[2,3]

そうなると、筋肉内はアシドーシスになりづらく、疲労も溜まりづらくなるのだ。

ちなみに、ここで「カルノシン濃度を上げたいのなら、カルノシンを摂取すればいいのでは?」と思う人もいるかもしれない。

しかし、カルノシンというのは経口摂取しても体で使われづらい、すなわちバイオアベイラビリティが悪い。

血中にはカルノシンを分解するカルノシナーゼが多いうえ、カルノシンは筋肉内に入りづらい。[1,4]

よって、カルノシンを摂取しても筋肉内のカルノシンは増えないのである。

なので、カルノシンを合成する原料であるベータアラニンを摂取することで、カルノシンを上昇させる必要がある。

カルノシンは運動のパフォーマンスを上げる?

ベータアラニンはカルノシン濃度を上昇させ、代謝物によるアシドーシスを遅らせることができる。

理論的には運動のパフォーマンスを上げそうなものだが、ベータアラニンは本当にパフォーマンス向上に効果があるのだろうか?

まず筋トレではなく運動全体に関する研究をまとめたものとして、2017年のメタ分析を紹介しよう。[5]

この研究は様々なエクササイズをごったまぜにして、40件の論文から1461人の被験者を抜き出したもの。

ベータアラニンはスポーツのパフォーマンスを向上させるのか?を調べたところ、結果は以下のようになった。

  • 30秒未満の運動ではベータアラニンは効果がなかった!(効果量0.040)
  • 30秒~10分の運動では、ベータアラニンは運動パフォーマンスにプラスの効果があった!(効果量0.224)
  • 10分未満の運動は、運動パフォーマンスにプラスの傾向が見られたが、有意差には届かなかった!(効果量0.174)

ベータアラニンの効果が見られたのは0.5分~10分の運動で、それより短時間の運動や長時間の運動では効果が無かった。

そもそも短時間では代謝物がたまる前に運動が終わってしまうので、ベータアラニンを摂取して緩衝剤であるカルノシンを増やしても恩恵は受けられない。

また、長時間の運動でも、運動のエネルギーは解糖系に依らない。

つまり、代謝物が溜まるアシドーシスは疲労の原因にはならない。

なので、短時間の運動でも長時間の運動でも、ベータアラニンの摂取とそれに伴うカルノシン増加では、運動のパフォーマンスが上がらないのである。

結果として、解糖系の代謝物によるアシドーシスが疲労の原因となる、30秒~10分という時間幅の運動が、ベータアラニンの摂取とカルノシンの緩衝作用によって、疲労を遅らせることができる運動となるのだ。

ベータアラニンは筋トレに有効?

このマガジンはボディメイクがテーマ。

肝心の筋トレはどうなのだろうか?

時間幅で言えば、筋トレは30秒にギリギリ入るか入らないかであり、ベータアラニンが効果を発揮するかどうかの境目。

果たして実際はどうなのだろうか?

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