「ダイエット中は好きなものを一切食べれない。」
「ダイエットが終わると反動で好きなものを食べてしまってリバウンド。」
ダイエットといえば厳しい食事制限が必須。
スイーツやラーメンは一切食べず、ダイエット中は野菜や鶏肉ばかり、という人ほど冒頭のような悩みは絶えない。
しかし、実は厳しい食品制限は無駄な努力かもしれない。
実は、最近欧米では「スイーツだろうがピザだろうが、好きなものを食べてダイエットしよう!」というダイエットが流行っている。
俗に『フレキシブルダイエット』や『IIFYM(if it fits your macro)」と呼ばれている。
ざっくりいうとタンパク質・炭水化物・脂質のバランスさえ意識すれば、何を食べてもOKというもの。(厳密にはフレキシブルダイエットとIIFYMは別。詳しくはこちら。)
今までフィットネス界隈で散々行われてきた”食品”制限をやめようという流れである。
そして最近になって、好きなものを食べる”IIFYM"でも痩せられるし、むしろリバウンドしない!という研究が出てきたので紹介しよう。
食品を制限しなくても同じくらい痩せた&リバウンドもしなかった
今回紹介するのは2021年に南フロリダ大学が行った研究。(R)
この研究は従来の食品制限とIIFYMを比較することを目的としたもので、被験者となったのは普通体型の男女39人。
これまでに体型向上のために筋トレを週2時間以上はしているいわゆる”トレーニー”なのだが、この人達を2つのグループに分け、10週間のダイエットをしてもらった。
- 厳格な食事制限グループ(リジッドグループ)
- IIFYMグループ(フレキシブルグループ)
リジッドグループは、管理栄養士によって決められた食事を食べるというもの。
食べるものを決める、という巷でよくある手法のダイエットで、被験者の食事の一例は以下のようになる。
カロリー設定は1日あたり-25%で、プロテインは”2.0kg/体重”となるように設定されている。
残りは脂質が58g、糖質が123gと偏りすぎないように配分した。
一方で、IIFYMグループは”1日あたり-25%のカロリー制限”と”タンパク質・糖質・脂質”の目安量だけ与えられた。
タンパク質は"2.0kg/体重”、残りは脂質67gと糖質153gで、3大栄養素は厳格なダイエットグループと同じに設定されている。
次は運動だが、これに関しては特に指示されていない。
元々トレーニーで筋トレをしている人達なので、各自普段通りの筋トレを続けていたものと思われるが、詳細は不明。
この条件で、どちらのグループも同じ-25%のカロリー制限と三大栄養素のバランスで10週間ダイエットしてもらう。
そして、ダイエット終了後さらに10週間の追跡調査をしたところ、結果は以下のようになった。
- ダイエット期間
- どちらのグループも筋肉を維持した!(IIFYM:-0.3kg vs 厳格:+0.2kg)
- どちらのグループも同じくらい脂肪が減った!(IIFYM:-2.3kg vs 厳格:-3.2kg)
- ダイエット後
- リジッドグループはリバウンドして脂肪が増えたが、IIFYMグループはリバウンドしなかった!(IIFYM:±0kg vs 厳格:+1.1kg)
- IIFYMはダイエット後に(なぜか)筋肉が増えた!(IIFYM:+1.7kg vs 厳格:-0.7kg)
ダイエット中に関しては、どちらも筋肉は維持し脂肪が減っている。
結局のところ、カロリー不足さえ作れば、何を食べても痩せるということがわかる。
ちなみに、厳格グループのほうが脂肪が減っているように見えるが、これはおそらく厳格グループに一人だけ10kg近くも脂肪を減らした人がいるから。(後に出てくる個人差のデータ参照)
とはいえ、そもそもこの数字は統計的に”差がある”とされるレベルには届いていないので、やはり厳格のほうが痩せたとは言えない。
そして、注目すべきはダイエット終了後である。
まず厳格グループだが、ダイエット終了後に脂肪が増え、めでたくリバウンドするという結果に。
厳格な食事制限が終わった瞬間、好きなものを食べれる元の食生活に戻ればリバウンドすることは容易に想像がつく。
一方でフレキシブルグループは、リバウンドすることはなかった。
これは、ダイエット期間で好きなものを適度に食べる方法を学んだからだろう。
ひらたく言えば”食べ方”を身につけることができたので、実験が終了して好きなものに囲まれる環境でもうまく対処できたと思われる。
ちなみに、フレキシブルグループは筋肉量が増えたことに関しては、本当に謎の現象。
実際に研究者も原因不明と認めている。
最後に、この研究では各自の脂肪量&筋肉量の変化も見ることができる。
まず左側の脂肪量だが、ダイエット期間中(Diet Phase)はどちらのグループも同じくらい脂肪が落ちていることがわかる。
違いといえば、前述したように厳格グループには体脂肪を劇的に落とした人が1人いるくらい。
そして、ダイエット終了後(Post-Diet Phase)には、厳格グループは12人中8人がリバウンドしているのに対して、IIFYMは11人中3人しかリバウンドしていない。
要するに、好きなものを食べるダイエット法であるIIFYMは、従来の厳格な食事制限より痩せないどころか、リバウンドしない優秀なダイエット法なのである。
厳格な食事制限は健康にも悪い
カロリーさえ気にすれば好きな物を食べられるIIFYM。
それでは、従来の野菜や鶏肉ばかり食べる食事法と比較したとき、健康にいいのはどちらだろうか?
もちろん野菜や鶏肉などの健康そうな食事ばかり食べる従来のダイエット法のほうが健康的かと思いきや、実はそういうわけでもない。
実は「いろんな食品を食べるIIFYMを実践するほうが健康的」ということがわかっている。
このことを示したのが2018年の研究。(R)
被験者となったのは男性30人、女性11人のボディビルダーで、2つのグループにおける日量栄養素を調べた物。
- 三大栄養素だけ気にして食品は好きな物を食べる
- 従来の厳格な食事制限を行う
片方のグループはIIFYMを実践しており、三大栄養素のバランスだけ気にして、食品は好きな物を食べている。
もう一方のグループには、野菜や鶏肉など、毎日のように同じメニューばかり食べてもらった。
多くの人が想像するいわゆる”ボディビルダーのような食事”である。
この2つの条件で微量栄養素を比較したところ、結果は以下のようになった。
- 全体として、被験者のビタミンA,D,Eやカリウム、食物繊維の摂取量は推奨量を下回っていた!
- 男性ボディビルダーにおいて、厳格な食事制限もIIFYMも微量栄養素の値は変わらなかった!
- 女性ボディビルダーにおいて、厳格な食事制限はIIFYMに比べて、ビタミンE、ビタミンK、ナトリウムの不足が著しかった
まず、コンテスト期のボディビルダーは男女問わずに微量栄養素が不足しがちな傾向にあった。
実はボディビルダーの栄養不足は20-30年も前から言われている問題で、とかく極端な食事のために栄養が不足しがちなのである。(R)
そして、中でも特に栄養摂取量の欠乏が著しかったのが厳格な食事制限をしていたボディビルダーである。
男女で差が出た理由はわからないが、IIFYMは従来の厳格なダイエットと比較して、いろいろな食品を口にするぶん、栄養素をたくさん摂れることはあれど、そのせいで栄養素が不足することはないと言える。
ストイックな人ほどダイエットに失敗する
実は、従来の厳格なダイエット法は、マインド的にもダイエットを失敗に導くことが分かっている。
従来の厳格なダイエットの根底には、硬直思考(Rigid thinking)や白黒思考(dichiotomous belief)がある。
野菜はダイエット中でも食べても大丈夫な”良い食事”であり、ラーメンやスイーツは食べたら太る”悪い食事”のように分類しているのである。
このように”良い/悪い”で食べ物を分類しているので、ダイエット中はラーメンやスイーツなどの”悪い食事”は一切食べないようにする。
そして、この硬直思考の反対にある考え方が”柔軟思考(Flexible thinking)になる。
特定の食べ物が悪いのではなく、”食べすぎること”が太る原因と考えている人のこと。
特定の食品を問題視していないので、ダイエット中でもラーメンやスイーツを食べすぎないようには気をつけるが、完全に排除したりしようとはしない。
世間一般ではダイエットといえば硬直思考のストイックな人のほうが成功するというイメージがあるが、実際は逆である。
柔軟な思考の人ほど、体重も落ちるし、リバウンドもしないし、ボディイメージも良く、ダイエット中のドカ食いエピソードも少ないことが報告されている。 (R, R, R, R)
スイーツを食べちゃダメな食品として禁止すればするほど、どうしても食べたいという欲求が頭をもたげてくるのが人間という生き物。
結果ドカ食いをすることにつながり、体重も減らなければ罪悪感に苛まれる。
そしてもっとキツイ食事制限をしようとして失敗する、という負のループに陥ってしまうのである。
まとめ
欧米では一大派閥を気づいているIIFYMだが、日本では実践している人がほとんどいない。
しかし、IIFYMで”食べ物との上手な付き合い方”を学ぶほうが、同じくらい痩せるしリバウンドもしない。
何より、無駄な我慢などせず好きなものを食べることで、ドカ食い(とその罪悪感)になやむことがなくなる。
好きなものを食べるIIFYMの具体的な実践方法を知りたい、ドカ食いをやめたい人には以下の記事がおすすめ。参考までにどうぞ!