現状に満足しない者こそが向上心を失わずに成功する
現状に満足したら終わりだ!
なんとなく受け入れらている気がする考えですが、実際にはどうなのでしょうか?
このような考え方は突拍子でもなく、多くの人が受け入れられるものだろう。しかし、この話は本当なのだろうか?
今回は、クイーンズランド大学の研究などから「現状に満足するかどうかは成功と関係ない」という話。
- トップアスリートになれるかどうかと、現状に満足しないかどうかは関係がなかった
- 現状への不満でやる気が出て計画量が増えるかもしれないが、行動量は増えない
- 物事そのものを楽しむのが行動を起こし、結果につなげるコツ
現状への不満でやる気が出るように思えますが、残念ながら実際の行動や結果にはつながらない可能性が高いです
トップアスリートほど現状に満足していない...わけではなかった
結論を言うと”結果を出しているかどうか”と”現状へ満足しているかどうか”は関係ないです
直感的に考えると、現状に満足していないほうが努力するモチベーションが高く、実際に努力しているように思える。
しかし、実際に”成功しているかどうか”と”現状への満足度”や”自分への厳しさ”は関係なかったのである。
しかも現状に満足しないストイックさが美徳とされそうなアスリートですら、結果と現状への満足度は関係ないことがわかっています
このことを実際に示したのが「トップアスリートほど現状に満足しないのか?」を調べた2020年の研究。
アスリート253名を対象にした研究で、グループによってマインドの違いがあるかを調べた
- アスリートじゃない人(59名)
- レクリエーションアスリート(115名)
- プロアスリート(79名)
レクリエーションアスリートは趣味でスポーツをしている(or地域の大会に出ている)レベル。プロアスリートは国際大会などに出ているアスリートになります
研究者は「トップアスリートほど自己批判が強く、セルフ・コンパッションが低いに違いない」という仮説を立てたうえで、アスリートにアンケートを取った。
失敗や挫折を味わったとき、困難なときに発揮される自分への思いやり。3つの構成要素があるとされている(R)
- 自己批判をするのではなく、自分に対して親切であること
- 自分の誤りについて、人間だからそんなこともあると受け止めること
- 辛い考えや感情を避けるのではなく、マインドフルな意識で見つめること
「間違いを犯すこともあるさ、人間だもの」的な精神を指します
アスリートといえばストイックな人が多く、現状に満足したら終わりと思っているイメージがある人は多いだろう。
なので研究者はトップアスリートほどセルフコンパッションのレベルが低いと予想して、実際胃に調査してみたのだ。
研究者の仮説が正しければ「トップアスリート>レクリエーションアスリート>一般人」の順でセルフコンパッションが低いはず。
しかしい、実際に調査をしてみると仮説通りにはならなかったのだ。
- グループ間でセルフコンパッションの尺度や、現状に満足することへの恐れの尺度に差はなかった!
- セルフコンパッションの低さや、現状に満足することへの恐れは心理的ストレスと関係していた!(それぞれ0.59、0.51)
予想に反して「トップアスリートのほうが自分に厳しく現状に満足していない人ばかり」というわけではなかったのです
世間一般のイメージとは裏腹に、トップアスリートだからと言って、自己批判的で現状に満足していない人ばかりではなかった。
トップアスリートだろうと一般人だろうと、現状に現状に満足している人も現状に満足していない人も同じくらい存在したのだ。
この研究で唯一わかったことは、現状に満足することを恐れていたり自己批判的な人は、ストレス値が高かったということです
それどころか、現状に満足することを恐れている人は、ストレスに苛まれていることが判明した。
要するに、現状に満足しないように心がけても、結果がついてくるとは限らないし、むしろストレスだけ溜まる一方ということになりかねない。
実はこのことは他の研究でも示されている。
成功に必要なのは自分を罰することでも現状に満足しないようにすることでもなく、自分の足りない部分をあるがまま受け入れて改善していくことなのだ。
それでも現状に満足しないほうが、確かにやる気が湧きあがってくる気がするけど...
そう感じる人もいるかもしれませんが、そもそもモチベーションが湧いたからと言って結果に繋がるという考えが間違っています
現状に満足しないことでモチベーションが上がっても意味がないワケ
実はやる気を上げたからと言って、実際に行動して結果に繋がるとは限りません
多くの人はやる気さえあれば結果が出ると思いがちだが、実は話はそう単純でもない。
なぜなら、やる気を上げれば計画量こそ増えるが、実際の行動量は低下することがわかっているからだ。
スポーツジムの館員である男女113人を集め、3つのグループに分かれてトレッドミルでの有酸素運動を計画・行動してもらった(R)
- 有酸素運動をした結果として得られるもの(痩せた体型)に注目したグループ
- 有酸素運動という体験そのものに注目してもらったグループ
- 何も指示しない
片方のグループは有酸素運動を痩せる体型を得るための手段として考えてもらい、もう一方のグループには体験そのものに意識を向けてもらいました
この研究では各グループの被験者に、事前に「どれくらい有酸素運動をするか」の目標を立ててもらった。
その後、実際に運動した時間が計測したところ結果は以下のようになった。
まずはじめに、計画量が一番多かったのは”運動をしたときに得られる結果”について注目したグループ。
「運動をすれば痩せた体型が手に入る」などと考えてモチベーションが高くなり、他のグループに比べて計画量が増えたのだろう。
しかし、実際に運動をさせてみたところ一番多くの有酸素運動をこなしたのは”経験集中グループ”だった。
計画量こそ少なかったが、有酸素運動そのものが楽しくて、ついつい多く運動してしまったのである。
結果に注目するとやる気が上がって計画量こそ多くなりますが、実行量はむしろ下がる...いわゆる”口だけ野郎”になります
現状という結果に満足しない人は、確かに「このままじゃダメだ」と考えてやる気を出すことはできるかもしれない。
そして実際に行動しようと計画するところまでは行くかもしれないが、実際に行動する段階になると続かない可能性が高い。
それもそのはず、”結果”などと言うものはすぐに手に入らないので、物事そのものを楽しめなければ何かと言い訳をつけてラクなほうに流れてしまうのである。
まとめ
「現状に満足する人は成長できない」という言葉は、ハッキリ言って嘘である可能性が高い。
”現状への不満”で一瞬はやる気が出て計画量こそ増えるかもしれないが、実行する段階になると萎んでしまうのがオチだろう。
この問題に関しては、孔子の有名な言葉が的を得ている。
知之者不如好之者、好之者不如樂之者
(天才は努力するものに勝てず、努力するものは楽しむものに勝てない)
孔子「論語」
必要なのは現状という結果に満足せずに自罰的になることではなく、経験そのものを楽しむ工夫ではないだろうか。