肥満の88%は遺伝である。
この事実を知ったとき、ブチギレそうになった。
どうやら、食欲が高かったり、たくさん食べないと満足できない体で生まれてくる人がいるらしい。
みんな満腹まで食べていても、その量は人によって違う。
おにぎり2つで満腹になる人もいれば、二郎大でも満腹になれない人もいる。デブも才能、と言ったところか。
自分は、回転寿司では50皿食べるし、二郎は1度に3.5杯も食べたことがある。我ながら立派な才能を持って生まれたと思う。
初めはこの才能を恨んだ。好き放題食べれば太るし、いつも食欲をセーブしなければいけない。食費だってバカにならない。
でも、冷静になって考えてみると、最近はむしろデブの天才でよかったのかもしれないと思うようになった。
だって、もし太っていなかったらダイエットにここまでハマることはなかっただろうから。
ダイエット抜きでは、もはや自分の人生は語れない。
大学院を休学したことも、就職活動で内定をもらえたことも、全部ダイエットのせいなのだ。
食べることに関しては才能しかなかった
自分は幼い頃から太っていた。食べることが何よりも好き。
他人よりも食欲が旺盛で、なんで他の人があんなに少量で満足できるのか、理解できなかった。
肥満が原因で、小学生の頃は一部の人間にいじめられていた。
下級生に暴力を振るわれ、女子には雑菌のように扱われる日々。
この仕打ちに耐えられず、女子に思いっきり暴力をしたことは今でもハッキリと覚えている。
誰かに暴力を振るったのなんて、長い人生でもこのときだけである。
そんな中、転機が訪れた。中学生のとき、”ダイエット”に成功したのだ。そこから自分の人生観はガラリと変わった。
痩せているだけで、こんなに他人からの対応が変わるなんて。世の中、見た目が全てなのだ、と。
痩せたことで、他者が自分を認めてくれるようになった。少なくとも、当時の自分はそう感じたのである。
このときから、自分の見た目(体型)に対して、異常なほど執着するようになった。
リバウンドとの10年戦争の始まり
ダイエットを成功させるのは難しかった。でも、それ以上に困難だったのは、体型をキープすることだった。
一時的に痩せても、好き放題食べればあっという間に元の体型に戻ってしまう。
ある研究によると、ダイエットは95%もの確率でリバウンドするらしい。案の定、自分もその95%であった。
ここから、自分とリバウンドの10年以上に及ぶ戦いが始まった。リバウンドしてはダイエット。
そしてリバウンド...この無限ループ。1年間で体重が10kg増減するのはざらだった。
ダイエットをやめようかと思ったが、体型が自己評価と強烈に結びついている自分には、とうていムリだった。
ダイエットはどんどんと本格化していった
そんな中、ふと転機が訪れた。
まず1つ目は、ジムに通うようになったことである。
このことをきっかけに、いつしかバキバキの体を作りたいと思い、ガチガチのカロリー計算をするようになった。
そして2つ目が、『加速する肥満』という本との出会いだった。
この本では”ジャンクフードがいかに体に悪いのか”が熱弁されていた。
論文を元に展開される内容は、とても説得力のあるものだった。
影響されやすいタイプである自分は、すぐさまにジャンクフードをやめた。
それからというもの加工食品は一切食べず、味付けをしたとしても塩のみ。
塩を振った鶏胸肉をおかずに、キャベツやニンジンをボリボリと生かじりする生活を送っていた。
さらには、家にはランニングマシンを設置し、毎日20km歩いたりもした。オーバーワークで足の痙攣が止まらなくなったほどだ。
健康を追い求めるあまり、不健康になっていた。
結果的に、カロリー計算をしていたこともあってどんどんと痩せていった。
ジャンクフードをやめたことで、身体の調子もいい気がする。
まさに最高の気分だった。
気づけば過食になりかけていた
極端に健康な食事を続けていた自分だが、普通の生活をしていればもちろん”普通の”食事を摂らなければいけないときはある。
久しぶりの友人と会うときや実家に帰ったときなんかがそうだ。
なんだかんだ言っても、本能的にはジャンクフードを欲している。
口実さえあれば「たまには息抜きも必要」などと自分を納得させ、少し嫌だなと思いつつも結果的には食べてしまう。
そして、ダイエット中の人にお決まりの”どうにでもなれ効果”が発動する。
「ジャンクフードを食べてしまった!もうどうでもいいや、今日は食いまくるぞ」と。
もう自分でも引くくらい大食いした。
スーパーやファストフードしか食べていないのに、どうして1日で2万円もなくなるわけ?わけがわからない。
迎えた次の日、健康生活に元どおり...とはならなかった。
どうしても抑えがたい食欲が頭をもたげてくるのである。
しかし、ジャンクフード=絶対悪となっていた自分にとって、そんなことは許されない。
必死に食欲を抑えていたが、1週間が限界だった。
美味しそうなものが目に入り、少しだけなら...と誘惑に負ける。
そして、案の定”どうにでもなれ効果”でドカ食いをする。
そして、ドカ食い後に待っているのは、強烈な”自己嫌悪”である。
「今日もドカ食いした。絶対に太ってしまった・・・」
「金もたくさん使ってしまった・・・」
「自分はなんでこんなことをしてしまうんだろう。ダメ人間だ」
ドカ食いの後は、まさに最低の気分になる。
人生で色んな困難はあったけれど、このときほど不快な気持ちになったことはない。
ならドカ食いしなければいいと思うが、そういう問題ではない。
もはや自分では”食べたい”という欲求を制御できないのである。
最低な気分になると分かっていても、ついついドカ食いしてしまう。
正直言うと、あまりの自己嫌悪に吐くことも考えた。
しかし、自分にはできなかった。
元々飲み会でも我慢するくらい”吐く”行為が嫌いだった上に、吐くことを覚えたら、もう戻れないと分かっていたからである。
こうなる背景には諸説あるけれど、自分の場合は「白黒思考」が問題だったのだろう。
実際に、食べ物を「良い/悪い」で考える人は過食のリスクが高いことが分かっている。
今でもドカ食いをしてしまうことはあるが、認知行動療法などいろいろ試したおかげで、だいぶマシになった。
ダイエット情報を広めたい!その一心で大学院を休学した
そんなこんなでダイエットをしていた私だが、2019年5月に大学院休学を決意する。
Youtubeで正しい情報を発信するのが自分の使命、そう信じて疑わなかったからである。
『加速する肥満』を読んでからというもの、自分はダイエットに関する論文を漁るようになっていた。
自分の永遠のテーマであるダイエット。
それに関する論文を読むことは、この上ない娯楽となった。
ダイエット論文を読めば読むほど、自分の中で疑念が強くなっていた。「日本にはびこるダイエット情報、大丈夫か?」と。
自分がダイエットに散々悩まされてきたこともあって、適当な情報が許せなかったんだと思う。
効果が無いだけならまだしも、こんなダイエット法したら過食になるのでは?と思われるものさえあった。
自分が正しいダイエット情報を発信しよう!
謎の使命感に駆られて、大学院を休学した。
もしかしたら、思い込みが激しいタイプなのかもしれない。
それからは1日中論文を読む生活になった。
我ながら狂ったように勉強していたと思う。そしてその知識をYoutubeで発信...できなかった。
端的に言うと、自分をさらす恐怖に耐えられなかったのである。他人から批判されるのが怖かった。
『お前なんかが偉そうに話すな』
そう言われると信じて疑わなかった。
Youtubeに動画を上げては引っ込めることを繰り返しながら、気づけば1年が経っていた。
この恐怖に勝てる気がしないと思った私は、大学院に復学することを決意した。
そして、ダイエットや筋トレ情報をまとめた”ボディハックアカデミー”を作った。
自分で発信をする恐怖は消えなかったが、動画よりも文字のほうがいくぶん気持ちが楽だったのである。
他にもフィジークに出場したり、このブログが就職活動で色々と役立ったりするのだが、それはまた別の機会にでも話すことにする。
全部、ダイエットのせいだ
14歳のときに始めたダイエット。
現在は27歳なので、もうかれこれ13年になるのか。
もしダイエットがなかったら、今とは180度違う人生を歩んでいただろう。
いま、自分はまた性懲りもなくダイエット情報を発信しようとしている。
以前のように使命感に駆られているわけではない。
実際に、ここ数年間でエビデンスベースのダイエット情報は急激に増えたし、良質なダイエット情報は手に入りやすくなっている。自分の出る幕はないのかもしれない。
ただ、なんやかんやでダイエットが好きなのだろう。
気づけばダイエットを始めているし、そうなると論文を読まずにはいられない。
結果的に、どこかに知識を吐き出したくなるので、発信するハメになるのである。
あとは、就活で言われた一言も理由のひとつかもしれない。
「もし君のしたことで1人でも人生が良くなるなら、それは大成功じゃないの?」
知らず知らずのうちに自分にとっての成功が、有名Youtuberのように”数万人もの人々に価値を与えること”になっていた。
しかし、よくよく考えてみたら、自分のやっていることで30人もの人に価値を届けられるならば、それは凄いことなのかもしれない。
学校の1クラス分なんて、大したものじゃないか。
ダイエットに散々悩んだ自分だからこそ、伝えられる何かがあるのかもしれない。
どこかの誰かに届けばいいな、そんな気持ちで少しずつ文章を書いていこうと思う次第である。